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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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過剰集中と錬成

かなり迷いましたが投稿再開。

ちょっと内容が固い感じになりますが、通信技術というものが決して「当たり前」ではない、すごい価値のあるものだという考えの元です。理解していただけると嬉しいです。

携帯やスマホが当たり前という感覚は、あまり慣れすぎると危険かもしれませんね。


これからはゆっくりとした投稿になると思いますが、これからもよろしくお付き合いください。

 しかし、これも大変だ。何しろ俺は魔法使いほど魔力もないから、じっくりと時間を掛けて「容器」を「錬成容器」へと作り替える術式を、魔力回路に組み込んで生成する余裕がない。

 例えるなら、三分しか戦えない某()()()()()に、五体の怪獣と戦って三分以内に全て片づけろと言っているようなものだ。


「う──ん、無理!」

 実際、金属に直接、通信魔法回路を生成する方が術式的には簡単だ。……それでもギリギリのところだったが。

 ならばどうするか、術式を生成し失っていく魔力を──補充しながらおこなえばいい。

「これが一番手っ取り早い」

 魔力を徐々(じょじょ)に回復する「魔力持続回復薬」を飲み、効果が切れる前に錬成容器へと作り替える。単純だ。

「あとは時間との勝負。集中力が肝だ」

 計算では、魔力回復薬一本では足りない。途中で飲む事も可能だが、それだと集中が一時的に途切れてしまう。


 何故こうも一遍いっぺんに通信魔法回路の生成をする必要があるか、別に作業の途中で中断し体を休めて、中断したところから再開しても問題ない。

 それでも一遍に作業を完遂かんすいするのは、誤差をできる限り排除する必要があるからだ。

 まずは魔法の集中を使って設計図を頭の中に完全に記憶し、内気(けい)を使って集中力に全てを注ぎ込んだ集中状態を維持して、頭の中に取り込んだ設計図を元に、魔力回路に通信魔法回路を生成する。


 この過剰な集中状態(気の集中を利用したやり方)を維持するのは魔術師や魔法使いでも困難なはずだ。勁を利用して錬成作業を行うのは、錬金術師や錬金鍛冶師には居ないだろう。

「こんな真似まねをするのは、自分を追い込むのが得意な、一部の変態のみだろうな」

 テ○ビ番組なら「特殊な訓練を受けた人が行っています、真似をしないでください」と、字幕テロップが出されるだろう。


 人間の集中とは、多くの人が考えるほど長くは続かず、実は持続時間が驚くほど短い。ある一点を集中して見続けるだけでも、人の視線はふわふわと漂ってしまうほどだ。

 思考も同じで、一つの事に集中する訓練をしないと、いつまでっても上達しない。


 通常の錬成を行っている時でも、意識は過度の集中状態にあるが──今回はそれに輪を掛けて、より深い集中を行い、短い時間の間に錬成作業を高速で行う。

 集中の深度を深くして、思考の速度を速める。言葉にするのは簡単だが、これこそ「特殊な訓練」を受けた者にしか行えない。


 ……俺は以前いた世界で、錬金術を学ぶと同時に、基礎となる魔術的な精神修業に取り組んだ事がある。これのお陰で、自身の精神的な活動にも取り組めるようになったのだ。

 冒険という活動をしながら、鍛冶や錬金術に取り組めたのは、こうした意識の変革作業を行えていたから、という部分が強い。通常の人間なら冒険から帰って来て、錬金術に取り組んだり、鍛冶仕事をしよう、とはならないだろう。気力が続かないはずだ。


 俺の適性は魔法とはあまり相性が良くなかったが、魔法の習熟が上手くいっていれば鍛冶仕事や錬金術よりも、魔法の方に重点を置いていただろう。

 冒険者時代から今まで、俺は錬金術と鍛冶仕事をこなしながら、漠然と冒険が出来なくなるような年齢になったら、錬金鍛冶師として生活しようと考えていたが、──それは足を失った事で予定よりも、だいぶ早くに訪れたのだった。

「ままならない……」

 だからこそ、こうした作業には全身全霊をって取り組む。失敗も誤差も許さない完璧な取り組みを目指して、ただひたすらに努力する。

 たった一度の錬成作業。

 何度も同じ作業を行うと考えてはならない。

 この作業は、たった一度の取り組みなのだ。


「失敗したら足を失うかもしれない」

 それくらいの想いと覚悟で取り組む。

 困難な作業を前に尻込みせず、立ち向かっていくには覚悟が必要。慣れも重要だが、慣れは危険もともなう──油断は禁物だ。


「さて、やるか」

 気楽な感じでそう口にし、気負いを拭い去る。やるからには全力で取り組むだけ、成功しか信じない。疑いなど持たない、失敗など案じない。

 俺は冒険者時代には「破壊者」や「剛剣」などと呼ばれた男。

「一撃で決める……!」

 やるべき事は違うが覚悟は同じ。

 確実に一回の作業(攻撃)で仕留める。


 例によって神への祈りを捧げ、錬金作業の成功を願う。

 自分の仕事に自信を持ちながら、神の前に平伏する。虚心坦懐きょしんたんかい

「小さな私ですが、この大いなる作業にのぞむに当たって、どうかお力添えください」

 おごりを持たず虚心な心持ちで取り組もう。

 俺は大きく深呼吸し、気を内部に向かって循環させる。魔法の集中と連携しながら、思考速度を引き上げた状態で容器の錬成に取り掛かった。




 おそらく実時間は三十分くらいだったろう。

 意識的には二時間近く、魔法回路の生成に取り組んでいた気がする。


 器から手を放すと集中を解き、どっと押し寄せる疲労を感じながら、近くで作業を見守っていた二人の徒弟を見る。──ケベルとサリエは炉の前で、金属の延べ棒を作る作業を行いながら、こちらの作業にも目を向けていたのだ。


 錬成容器を鑑定に掛け、設計図通りの物ができあがった事を確認すると、ほっと胸を撫で下ろす。

 思ったほど魔力が枯渇こかつしたり、精神的な疲労が限界近くにまでなるような事もなく、頭の中がぼ──っとするみたいな疲れを感じただけで済んだ。


「ふぃ──良かった。後は器を磨いて、水晶などをめ込んで完成だ」

 俺の独り言に、二人の徒弟も手を叩いて喜びをあらわにする。

 この錬成容器で通信魔法のコアが作り出せるか、試験してみないと分からないが、おそらくは大丈夫だろう。

 魔力回復薬を飲みながらケベルに鉄、銅、銀、金、四つの金属を個別に溶かすよう頼んでおく。

 これら四つの金属を溶かした物を錬成容器に流し入れ、どれが通信魔法の核として相応ふさわしいか見極めるのだ。


 銀や金が魔法との相性は良いが、場合によっては鉄や銅を混ぜた合金の方が上手く安定する可能性もある。

 俺は錬成容器に術式を生成した水晶や紫水晶アメジストなどを填め込んでいく。──まずは音声と映像を通信する核を錬成する仕様に設定した。

 溶かした鉄を錬成容器に流し入れると、器に張った水の中で四角いかたまりとなる。それは三センチほどの大きさがある正方形の塊。

 それを慎重に取り出すと、分類を示した紙の上に乗せておく。

 その作業を他の三つの金属でも試し、続けて鉄と銅、鉄と銀……などの合金もあわせて作る。


 そうした作業に取り組み、それぞれを鑑定に掛けて性能の大まかな内容を紙に書き出し、質の良い物を選んで、試験用の鏡と音声発生装置に繋げる。


 音声を出す構造と映像を映し出す画面は、すでに一体化した物が古代遺産から得た知識を利用し、複製を用意してある。基本的な部分は似ているが、魔力回路の仕組みなどは独自性を持たせた物になっているが。


 試しに通信魔法回路を生成した核を組み込んで性能を見てみると、問題なく音も映像も受信する事ができた。これを二つの間だけでなく、互いの波長を合わせた物とも通信が可能になるよう工夫する。

 画面を四つに分けて──全部で、五人以上の同時通信が可能になるよう設計してあるのだ。


 本格的に混沌こんとんの中を飛び回る監視飛翔体(ひしょうたい)を配備する事になったら、大型の画面を複数台用意して、同時に映像を受信できるようにもなるだろう。

 まだやるべき作業はあったが、今回の錬成容器の作成は完成に至った訳だ。

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[一言] たまたま見に来たら更新されてて即読みしました! 無理なさらず、ご自分のペースで書かれてください。 応援しています!
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