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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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象徴武具(鎌)の完成。監視飛翔体の作製。

《外伝》と【設定】を書いた物を投稿してあります。そちらも読んでもらえると嬉しいです。

新たに「【設定】専門用語(種族・魔法)など」を投稿しました。


高い評価やブックマークをして頂き、ありがとうございます。

 白銀色の鎌に柄を取り付ける。

 握り手の部分に稲穂を心象イメージした彫刻を彫り、下のくぼみに黒水晶をめ込んだ。


 取り付けた宝石や水晶などの象徴しょうちょう効果があらわれると、その小さな鎌に秘められた精霊力があふれ出るみたいに感じられる。

 柄を握っていると、足下から大地にる「気」が上がってきて体を包み込む、そんな感覚が感じられた。


「地の力と呼応しているからか? それにしてもこんな効果が得られるとは……」

 神貴鉄鋼シルエヴァルリスと神結晶を用いた結果だろうか。鑑定で細部まで確認してみると、どうやら神貴鉄鋼と神結晶から作り出した力が魔力回路に、こうした効果を発動させるみたいだ。

 地の精霊結晶との組み合わせで、大地の気脈から力を得られる訳だ。


 さすがに通常の武器に神結晶を使う事は……

 ────今度、管理局に許可を取ってみようか。そう考え直す。

(画期的な武器や防具の性能強化につながるかもしれないし)


 神貴鉄鋼と神結晶が俺の鍛冶屋の素材保管庫にあるのは、あくまで「象徴武具」作製の為なのだ。勝手にそれらを冒険者が使用する武器や防具に割り当てる事などしてはならない。

 禁じられているとか、そういう問題では無く、不文律ふぶんりつというものだ。


 だが小さい神結晶なら、使用許可が下りるかもしれない。

 それを使ってカムイの新しい剣を作ってやろうと考えたのだ。もしかすると、大地からの気の充填じゅうてんが得られる武器が作れるかもしれない。そうなれば外気(けい)として扱う気の量が少ないカムイでも、十二分に操気術を扱えるだろう。


「あいつが『破砕撃』や『斬破』を使いこなせるようになってくれるといいんだが」

 その前にあいつには、武闘大会で勝ち進んでもらわなくてはならないか。

 相手にもよるが、そこそこ闘えるはずだが……

 大会前までの訓練でどこまで延びるか、それも肝になりそうだ。


 レオシェルドの剣による戦い方は、剣の道を究めた者の振るう剣だ。俺の荒っぽい我流剣術とは違う。対人戦闘にいても、洗練された「戦いの技法」というものを持っている。

 あいつとの訓練はカムイに、新たな「武の極致きょくち」というものを見せてくれるはず。最近の取り組み方を見ていれば分かるが、カムイは真剣だ。

 本気で一流の冒険者になろうと、覚悟を持ってのぞんでいる。


 本気で強くなりたいと望む若者が、本当に強い男から、その強さについて学ぼうとしているのだ。強くなれないはずがない。カムイは必ず、俺達の旅団でも最上位の戦士になれるはずだ。


 その若者の為に新たな武器を作ってやりたいが──まずは、監視飛翔体の試作品を完成させなければ。

 一応、構造は出来ている。

 あとは──いくつかの型式タイプを作って、どれが長距離からも通信でき、長い時間の運用が可能で、性能が安定しているかを調べなければならない。

 その為には、管理局の協力も必要だ。


()()()()が一番だろう」

 受信と送信の魔力回路を生成する錬成容器を作り、その容器を制御コントロールして性能を書き換える事は可能──なはず。

「まずは容器に焼き付けを行うか」

 そこそこ大きな金属の錬成容器を作る。


 術式を金属の容器に組み込むのだが、これは高度な上にも高度な作製になる。容器に取り付ける結晶の種類によって、容器の中に入れた物に魔力回路を生成する力に、変化を加えられるようにする為だ。

 一つの物しか作れない容器よりも、性能に変化をもたらす物がいい。

 こうした錬成容器は以前、釘を作る物について触れたが──今回の物は、それよりも大幅に難しい術式を組み込む事になる。


 容器自体を専用の「機械」に作り上げる様なものだ。

 それさえ作れれば、後は容器の中に張った水の中に、錬金術師が魔力を込めながら金属を注ぎ入れるだけで、高度な錬成具を容器が形作ってくれるのである。


「送信機と受信機の異なる二つのコアを製造する、二種類の容器を形作り。さらに後付けする結晶を読み取って、作り上げる物の数値を微調整できる形式の物を作るとなると──」

 細かな設計図を書きながら、魔力回路の生成計算を図式化し、容器の構造を構成する形を決定する(何を言っているかわからないかもしれないが──)。


「うげぇっ……物理的に不可能か? 術式を単純化して──いや、容器自体の素材を変更して、魔力と相性の良い……」

 そんな感じで出された結論は、()()()()()使()()()()()()()を作り出す事だった。


「これは管理局に許可を取らないとな……おい、ケベル」

 俺は研究室から出るとケベルを呼び、少年に試作品の通信機を持たせた。それと繋がる通信機もこちらに用意しておき、ケベルに管理局の技術班に居るメリッサにそれを渡し、操作方法を教えるように言う。

 ケベルは「離れた場所に居る人とやり取り出来る」通信機という物に驚いていたが、説明を受けると。

「分かりました」

 少年はそう言って、すみやかに管理局まで届けに行ってくれたのだった。




 しばらくすると、試作通信機に呼び出しが掛かった。

『はい、ええ。……あ、つきました、ありがとうございます』

 メリッサが通信機の(画面)に映る。どうやらケベルが説明を終えたようだ。


「一応、これが試作品の通信機だ。これから送信機と受信機のコアとなる部分を作り出す、専用の錬成容器を作ろうと思うんだが」

 すると鏡の向こうから『それはいいですね』と、メリッサが驚いた様子を見せながら返事をする。


「しかし、それを作るには──神貴鉄鋼で錬成容器を作るのが一番、安定しそうなんだ。神貴鉄鋼を使う許可を取ってきてくれないか?」

 俺がそう報告すると、彼女はあごに指を当てて考え込んだ。数秒後に『分かりました』と口にする。

「それともう一つ、武器や防具に神貴鉄鋼や神結晶を使っていいか、それの許可も取ってもらいたい。もしかすると新たな性能を武器などに付与できるかもしれないんだ」

 神結晶は小さな物でいいので、と付け加えたが──メリッサは難しそうな表情をする。


『神貴鉄鋼はともかく、神結晶をですか……話は通してみますが』

 彼女は何やら考えながら説明を続ける。

『各都市の神殿管轄班に話を通します。技術班としては了承しましたが、神殿の方にも意見を聞かなければなりません。その答えは明日までお待たせする事になりますが……』

 彼女の言葉からは、「神殿のお偉いさんが首を縦に振るとは思えない」といった意味合い(ニュアンス)が感じられた。


 俺は溜め息をきながらうなずき、こうも言った。

「そうした面倒なやり取りも、この通信機が作れるようになれば、人を神殿に送り込むなんてしないでも、今日中に答えを聞き出せるようになるんだがな」

 彼女は『確かに』とつぶやくと、続けて『では、こうしましょう』と喋り出す。


『この通信機を火の神ミーナヴァルズ様の元へ送り届け、そこでの神を通じて他の神々の意見も伺いましょう。それなら今日中に答えを貰えるのではないでしょうか』

 今度は俺が「確かに」と答えていた。

 俺は頷きながら「では、俺は良い返事が来るのを待っていよう」と言って、通信を終えようとした。


『出来ればこの機械をすぐにでも、各都市にある管理局などに配置したいですね』

「神貴鉄鋼の使用許可が先だ。許可が下りれば、それだけ早く通信機の作製を早められる」

 俺の言葉を受け、彼女は重々しく頷いて通信を切る。


 こちらはもう一度「通信魔法回路生成」錬成容器の設計図を前にして、細かな調整などを行う部分について再検討を始めるのだった。

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