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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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連休明けの元気な仲間達

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 朝の日課ルーティンをこなしていると、リトキスとカムイが庭に出て来た。どうやら昨日から、二人で朝の稽古けいこをしようと決めていた様子だ。

「おはようございます」と声を掛けてきたが、二人は木剣を構えると、いきなり激しい打ち合いを開始する。

 籠手を付けてはいるが、革鎧などの防具は身に着けていない。


 見る限り、決められた型打ちをしているだけなので大丈夫だろうが、怪我には気をつけろよと声を掛け、宿舎の中へ戻る。


 猫達はまだ巣箱の中に入っているみたいだ。

 そっと箱を覗き込むと、ライムのお腹に寄りって子猫達が寝息を立てている。彼らを包む布もあるし、寒さはしのげているだろう。


 発泡スチロールの様な素材を開発して、巣箱を作るべきか? いや、発泡スチロールがき出しになると、爪でボロボロにしてしまいそうだ。新しい素材で作るにしても、外側をベニヤ板の様な物で挟み込む事になりそうだ。


 ま、そもそもフォロスハートはそれほど寒くはならないし、猫達も、この程度の寒さならたぶん平気だろう。




 食堂に行き、いつもの席に座った時に、ふとひらめいた。

 エウシュマージアの象徴しょうちょう武具を造ってしまおう。

 庭ですっきりとした青空を見た後、しばらくして──そんな気持ちが唐突に訪れた。こうした()()は大切だったりする。

 こうした気持ちになった時は、失敗せずに事を進められる場合が多い。


 錬金術とは精神と肉体と魂──そういった物が一致した、揺らぎの無い湖面の様な心的状態にいて、研ぎ澄まされた感覚や発想を得るものだ。

 ただ単に()()()()()()()()()()()()()()()とでも言うべき部分がある。

 霊感インスピレーションといったものが重要な作業なのだ。




 皆が食堂に集まり、朝食を食べ始めると──ある事を思い出し、俺はその報告をする。

「あ──そうだ。実は霊晶石が足りなくなってきていて、皆には危険だが、混沌の悪魔(アディス・ベリル)とかを倒して霊晶石の入手をお願いしようと思っていたんだ。……まあ霊晶石は水の神アリエイラのお陰で、充分な量が手に入ったんだけれど」

 するとレーチェが「アリエイラ様から……」と、何故か鋭い視線を向けてくる。


「そ、それでだな……どうやら管理局から上位の旅団に対して、大型の神結晶の入手を依頼しているらしい。霊晶石は当分の間は間に合わせがあるから、もし可能なら大きな神結晶の入手を狙って『神座す山脈』での採掘さいくつを行うか、──かなり危険だが『無限の混沌こんとん領域』が現れた時には、うちの旅団からも戦いに参加してもらう事になるだろう」


 それに対しリトキスと、宿舎に泊まっていたレオシェルドが、その時がくれば参加しようと思っていた、と応える。

 メイやユナは参加するかどうか相談し合っているようだった、だから俺は続けて言った。


「まあ待ってくれ。無限の混沌領域には全ての旅団から、それぞれの秀でた力や技術を持つ者が集まるが──強制では無いし、自分の力を過信せず、生き残れる自信が付いてから挑むくらいでいいからな」

 仲間達は食事を食べながらも大きな神結晶や、無限の混沌領域について話し合う。

 するとレンネルがこんな事を口にした。


「そう言えば僕の子供の頃に──都市ゲーシオンにある転移門『くらき星々の死地』に出現する、『破滅の宣告者』という希少な敵から、大きな神結晶が入手されたと聞いた事が……あれ? でも変だな。そうした正式な記録は残ってないですよね?」

 と首をかしげている。子供の頃の記憶なので、どういった事なのか詳しく覚えていないとレンは言う。


 俺はそれを聞いて、ダラダラと汗をき出しそうな気分になった。


「ああ……それはたぶん、この男の所為せいだぞ」

 とレオが告げる。

 なんだなんだ、と皆がレオと俺に注目し出す。


「もう七年以上前になるか? オーディスが遠征でゲーシオンに訪れた時の冒険で、それは起こった。滅多に出現しない危険な混沌の悪魔である『破滅の宣告者』と戦闘になり、仲間を守る為に全力で放った『破砕撃』によって、破滅の宣告者を倒したのだが。──その凄まじい『破砕撃』の威力によって、心臓部にあった大きな神結晶をも砕いてしまったらしい」

 俺はその場には居なかったからわからないが、とレオは言って俺を見る。……いや、皆が俺を見つめている。


「い、言い訳をさせて欲しい。確かに神結晶もろとも破壊してしまったが、それはあの時、一緒に行動していた仲間達がリゼミラや、アディーディンクではなかったから、焦ってしまったんだ。まだ上級に挑んで間も無い若手も居たし、彼らを守る為にも、加減をする余裕など無かったんだ」

 おぉ──、という感嘆かんたんの声を上げる団員も居れば、「神結晶がもったいない……」となげく者も居た。


「それで実際は砕けなければ、どれくらいの大きさの結晶だったんでしょうか?」

 レンネルはその部分にこだわった。彼の幼い頃の記憶をはっきりとさせたかったのだろうか。


「それは──かなりの大きさだったろうな。大きく三つに分かれた神結晶を合わせると、人の頭くらい大きな神結晶だった。ただ──管理局の方では、それを『破滅の宣告者』から大きな神結晶が、間違いなく入手された記録としては認めなかったようだ。保留扱いのまま、忘れられているんだろう」


 朝食の場だというのに、方々(ほうぼう)から溜め息混じりの落胆の声が漏れる。

 なんという事だ。過去の不手際を告白させられたばかりか、仲間達に失望されてしまうなんて……


「なんて日だ!」

 俺は食堂で絶叫した。

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