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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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「無双の太刀」と呼ばれた男

次話から週1回の投稿になるかな……日曜の昼に投稿できるよう頑張ってみますが──

今後ともよろしくです。


高い評価ありがとうございます! 励みになります。

 俺とレオシェルドは互いの無事を喜ぶと同時に、血気盛んだった過去の姿と比べて、落ちぶれたとまでは言わぬものの──覇気の無い、冒険から遠ざかった冒険者の衰えを目の当たりにし、二人して曖昧あいまいに笑い合うのだった。


「だいぶ鍛冶職が板についてきたらしいな。噂は耳にしていたが、あの頃の──『三勇士』と呼ばれていた男とは思えんな」とレオシェルドが言えば。

「ふん、それはあんたもそうだろう。金色狼こんじきおおかみを抜けてから、冒険に出ていないんじゃないか?『無双の太刀』などと呼ばれていたあの頃の精彩は、まるで感じないな」


 互いにののしりあっているが、軽蔑けいべつしている訳じゃ無い。古くからの冒険者流の挨拶あいさつみたいなものだ。


「無理も無い。自分は冒険者を引退して、すっかり隠居生活を送っていたからな。日々の訓練は欠かさなかったが、それでも衰えを身に染みて感じているところよ」

 零落れいらくした侍の様な風貌ふうぼうの剣士は、そう言って肩を落とす。そんなレオを見て、リトキスは「まだまだあなたには、やれる事があるでしょう」と、もっともな言葉を口にする。


「まったくだ。俺よりも少し年上くらいのあんたがそんなに老け込んでいては、こちらの士気も下がると言うもの。──本当に頼むぜ」

 やれやれ、という感じで、周囲に集まっている若者達を見る。


「それで──リトキスが言うには、自分に若い冒険者の訓練をさせようと考えているらしいが……その前に、本当にオーディスが団長になったのか? そういう役どころを嫌っていただろう」

「人には、受けざるを得ない物事というのがあるものさ」

 俺がわざとスカして応えると、レオは苦虫を噛み潰したみたいな表情をしてこう言った。


「お前のそうした物言いも懐かしく感じるところだ。だが地の神の剛腕にかけて、お互いに無事で何よりだ」

 変わらぬ仰々(ぎょうぎょう)しい枕詞まくらことばを付けて、互いの生存を喜ぶレオ。


「相変わらず堅苦しい奴だ。俺はずいぶん前に引退してから、ずっと鍛冶職に専念しているからな。鍛冶場で爆発でも起きん限りは──」

 そこまで言って、例外がある事に思い当たった。

「……まあ、フォロスハートに混沌が侵攻して来た場合は、俺も戦闘に加わるが、それ以外は安全な場所で、冒険者達の支援に専念しているよ」

 そうした会話をしていると、リトキスが何の訓練をしていたのかと尋ねてくる。


「ああ、ちょうどいい。カムイに『破砕撃』を、エウラに『斬破』を教えていたところだ。そうした『剣気』の扱いはレオの得意分野だろう? さっそく教えてやってくれ」

 リトキスは「破砕撃は僕も教えて欲しいところですが……」などと口にする。


「自分は構わないが、その前に──外気(けい)は使えるのか?」

「ああ、カムイは操気は苦手なんだが、武器に気をまとわせるのは得意らしい」

 するとレオはうなずく。

「ああ、そういった類型タイプもある。操気が苦手でも、そうした能力センスがあれば操気自体も、どんどん伸びていくはずだ」

 レオの言葉はカムイを勇気づけたようだ。少年は進み出ると「お願いします」と頭を下げる。




 そんな矢先、違う奴らが玄関を開けて入って来た。

 子連れのアディーディンクとリゼミラだ。

「ん? ぉお? なんか見覚えのある奴が居るじゃないか」

「レオシェルドさんじゃないですか! おひさしです」

 子供を連れた二人の様子を見て、珍しくレオが苦笑いをして見せた。


「ああ、久しいな。しかし、噂には聞いていたが──本当に結婚していたとは。リゼミラとアディーディンクでは……いや、なんでもない」

 そう口にしながら二人の子供達を見る。

 不思議な雰囲気ふんいきを纏う、初めて見る男を警戒して、二人の子供は母親の陰に隠れるような行動をした。


「嫌われたな」

 俺の言葉にレオは首をすくめ、「いつもの事だ」と答えた。




 一緒に夕食をと思って来たというリゼミラ達であったが、剣豪との再会に血がうずいたのか、リゼミラはユナとカーリアに子供を預けると、レオと闘うと言い出した。


「自分は構わないが……」

 衰えを感じていると言っていた割には、簡単に負けるつもりは無さそうだ。さすがに一対一で易々(やすやす)と負けはしないという自負があるだろう。

「戦績は、リゼミラの方が勝っているのではなかったか?」

 俺がそう声を掛けると、剣豪は長めの木剣を手に取りながら軽く振り──頷いた。


「そうだな。……すまない、そこの魔法使いの少女」とユナの方を向く。

「防御魔法を使えるなら、二人に掛けて欲しい。怪我をしたく無いのでな」

 ユナは頷き、二人に防御魔法を掛ける。

 いきなり始まった二人の戦闘狂の闘いに、周囲に居た旅団員達が遠巻きに見守る。


「あのレオさんという人は、相当に強いんですか?」

 子供の肩を抱いているユナの言葉に、俺は「見ていれば分かる」とだけ応える事にした。




 二人の立ち合いが始まった。

 間合いは三メートルほど離れていたが、リゼミラが一瞬で間合いを詰め、二本の木剣を振り回して襲い掛かる。

 縦に横に振り回された剣筋を見切ってかわすレオ。


 次の瞬間、木剣同士がぶつかり合う乾いた音が響き渡った。一瞬だったが、三回の剣戟が交わされ、互いの攻撃を弾き、受け流す攻防が繰り広げられた。


なまってないね」

「お互いにな」


 そんな言葉を掛け合う二人。

 今度はレオが一歩、大きく踏み出した。

 空気を切り裂く音がした。

 見えない刃が地面のほこりを舞い上がらせる。


 リゼミラは剣先から横に退避して、不可視の攻撃を躱す。

 大きく振り下ろされた剣先から斬破が飛び、離れた位置のリゼミラを攻撃したが躱された。


「それじゃ、こっちも!」

 そんな掛け声と共に、リゼミラが大きく剣を交差させる形で、二本の剣を振り下ろした。

 リゼミラが「十字斬破」とか言っている技だ。


 双方の武器に気を流すので、相当に器用な奴でなければ使えないだろう。あるいは単純に「才能」と言った方がいいか。

「はぁっ!」

 なんと、十字に飛んだであろう斬撃をレオは、下から振り上げた斬破で切り裂いて見せた。


 空気を弾き飛ばすみたいな音が二人の間から聞こえた。

 ぶつかり合った斬破によって、風が巻き起こる。

 周囲で見ていた俺達の顔を撫でる風が通り過ぎて行く。




 二人の激戦はすぐに終結した。

 間合いを詰めた二人の間で交わされた連続攻撃の一つ、リゼミラの木剣がレオの腕を打ったのだ。

 さすがに二本の剣から繰り出される連撃を前に、レオの身のこなしだけでは回避するのは困難だったらしい。


「参った、さすがだな」

 レオの降参の言葉が決着の合図となったのである。

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