新たなる神騎兵の開発に必要な物
大きなボスっぽいのが居る──みたいな話ですね。
登場するかは……未定。
「見ず」を「水」に誤変換……直したはずなのに──報告ありがとうございました。
気になっていた四騎目となる神騎兵の建造は進んでいるのかと尋ねると、ミーナヴァルズは「核となる大神結晶が見つかっていない」のだと説明する。
「管理局も多くの上位旅団に神結晶の入手を働き掛けているが、簡単に見つかる物では無いと、改めて思い知ったじゃろうな」
大きな神結晶は複数の旅団が協力して行う任務──「無限の混沌領域」と呼ばれる場所に現れる、「大型混沌魔獣」や、「混沌の魔神」などといった存在を討伐すると、希に入手する事がある。……これらは超危険な相手であり、神の加護を受けてなお──毎回、死傷者が出るほどの任務だ。
通常の転移門から向かうのでは無く、いつもは閉じられた転移門から向かう、その場所は……無限の混沌領域がフォロスハートに近づいた時にのみ開かれる、異空間へと続く門だ。
神騎兵を送り込む事は出来ないが、城壁に取り付けられている弩砲などを持ち込んで行き、それらを駆使して討伐を行ったりする。危険きわまりない相手なのである。
それ以外の入手方法となると、上級難度の転移門「神座す山脈」からだろうが。そうそう採掘できる物でも無い。
小さい神結晶ならともかく、ある程度の大きさを求めるとなると……相当の人数と、運が必要になるのではないか。
少なくとも俺は、大きな神結晶を掘り当てた事は無かった。
「仮に『混沌絶界』が訪れても──それと戦うかは、最終的には管理局と、旅団や冒険者の意志に掛かっておるしな」
ミーナヴァルズの言う「混沌絶界」とは、先ほど言った「無限の混沌領域」に繋がる転移門の名称である。
今までは無限の混沌領域が近づくと、多くの冒険者が勇んで混沌絶界の門をくぐって行ったものだが、度々──その戦闘で命を失う者が出たのだ。楽な戦場では無い。
「そうじゃオーディスワイアよ。お前がだいぶ前に我の下へ来た時の事、覚えておるか? あの時は神官達に止められたが、我の火を使って武器を鍛えたいというあれじゃ」
それは随分と昔の話だ。
冒険者をやりながら、鍛冶の修練をしていた頃の話。
ちょうど武器を作り始め、旅団の鍛冶場を借りて剣を打ち直したりしていた時に、火の神の炎を使えば、強力な精霊力を宿した武器を作れるのではないかと──神殿の方に直接出向いて、神官達に提案したのだ……
「まあ、見事に門前払いを食らいましたが」
その時は燃え盛る炎の蛇である、火の神の姿を拝んだだけで帰る事になったのだ。
「ここフォロスハートの火の力には、少なからず我の力が吹き込まれておるが、我の身体から直接、火種を取って武器を鍛えたいなどと言って来る者が居ようとは、その時まで思いもしなかった事じゃ」
「若さ故の先走りですね。──あの時は、いい案だと思ったんでしょう」
灼熱に近づいて、身を焦がしながら火種を取れればの話だが。
「今度、試してみよう」
そんな風に言う火の女神。
「顕現体から火を取れる方法があるんですか?」
すると彼女は、神殿の地下から顕現体のある穴に通じる通路があり、そこから身体の側に出られるのだと説明する。
「仮にそうだとしても、近づく途中で引き返すでしょう。普通に考えて」
「気合いじゃ」
「気合いだけじゃ、どうにもならんでしょう」
こんな会話をしているとドアが叩かれ、巫女が温かいお茶を入れた茶瓶を持って来た。
いつの間にかミーナヴァルズは紅玉の仮面を付けていて、長椅子に腰掛けたまま受信機の鏡を見つめている。
巫女が部屋を出て行くと、仮面を外しながら彼女は鏡を手渡して「これが完成すれば、混沌の中を監視するのも楽になるな」と、満足そうに告げた。
鏡には階段が映っており、近くにある猫達の住処で子猫達が遊ぶ姿が映し出される。
「それが完成した後で良い。神騎兵の武器などについても何か考えておいてくれ? お前ならではの発案があるじゃろう?」
神騎兵の兵装については資料を読んで知っているが、多くは近接攻撃であり、通常の魔法は混沌の中では威力を失うと書かれていた。
「その為、遠距離攻撃は金属製の弾に魔法を封じ込めて使っておったが、お前の発見した『対混沌攻撃力』の力を封入した弾丸を撃ち出して攻撃する方が、圧倒的に効果的だと判断された。今では小さな弾から、大きな砲弾まで──対混沌攻撃力を付与した物が使われておる」
資料の中にあった「霊子砲」とはどういった物かと尋ねると、女神は頷きながら──混沌の中でも、威力を維持した状態で放てる砲撃だと説明する。
「神結晶に補充される神々の力を使った攻撃方法で、高威力の光線状の射撃や砲撃を行う力じゃな。だがそれらは神騎兵が動く為の活動力を使った攻撃じゃから、多用は出来ないのじゃ」
高威力だが、使用には限界がある訳だ。
神々の力が源にあるとはいえ、神騎兵の活動力は──それぞれの核となった神結晶から創られた、霊的な躯の成長によって増大するらしい。
「滅多に無い事じゃが、混沌が大群で襲って来るなどという時にしか、霊子砲は使わないのぅ。その活動力はフォロスハートに帰還しないと回復できぬでな。まあ、いざという時は……」
火の女神はそこまで言って口を閉ざす。
「ともかくお前は、監視飛翔体を完成させよ。それが作られれば、通信技術も向上するのであろう? それがあれば管理局の連中をわざわざ呼ばずとも、簡単な連絡を取れるようになるのじゃから──便利よな」
俺は女神の言葉を聞きながら、酸味のある香りがする紅茶を口元に運ぶ。……それは薔薇の実を使った紅茶であった。
ただそれは、記憶にある酸っぱいだけの紅茶では無くて、華やかな後味と甘味が残る──爽やかな紅茶であった。
「飲みやすいですね、薔薇の種類が違うからかな?」
紅茶の色は、桃色に近い淡い色をしている。
こちらの世界の薔薇には、赤や紫の花を付ける物があったが、赤い方の実を使ったのだろうか。紫色の花の中には、黒に近い濃い紫色の薔薇もあり、驚かされたものだが。
「薄紅色の薔薇の実を使った物じゃが……別に色違いの物でも、香りには違いは無いらしいが。紫色の実を使うと茶の色味が損なわれるから、赤系統の実を使っているのじゃ」
黒い茶あった気がする──中国茶だったか?
香りが苦手で一度しか飲まなかった。仮に「身体に良い物だから」と言われても、あれを飲む気にはなれない。そんな匂いがしたのを覚えている。
「向こうにも薔薇茶はありましたが、これは後味がいいですね」
茶碗から薫る香りを嗅ぐと、胸の奥がすっと綺麗になった気がする。新鮮な花の香りを抽出したみたいな、爽やかで華やかな香りの紅茶。それは新しい体験だった。
「気に入ったなら良かった。今度、旅団の方に届けるよう伝えておこう」
神殿の裏手には薔薇園があり、そこで育てた薔薇を使っていると女神は教えてくれた。
薔薇園を抜けた先にあるのが、火の神の御所になるらしい。
その後もミーナヴァルズと話しをし、神騎兵に持たせる武装などについて、思いつく限りの兵器を想像しながら、巨大な甲冑の戦士が、それを持って戦う様を思い描いた。




