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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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いきなり絡んできた若者達

「黎明の白刃旅団」の若者が登場。今まで名前だけは出てた旅団ですね。

険悪な感じなのは簡単に言えば、思い上がっているからでしょうね。


次話は水曜日午後6時~投稿予定。

 霊晶石や宝石などを皮袋に詰め終えた俺と水の神アリエイラ。少女の姿をした女神は、こうした作業をするのが楽しかったらしい。終始にこにこと笑っていた。

 俺と彼女は綺麗きれいな石を拾い集めながら、彼女の顕現けんげん体である竜の姿が「モササウルス」の様だと話したり、次に奥神殿まで来るのはいつになるかなどと、取り留めの無い話をして別れる事になった。

 簡易暖房装着は奥神殿に置いていく。次に来た時に使えるようにする為だ。


「それではまた──近いうちに」

 俺がそう告げると、彼女は身を乗り出して「絶対に『近いうち』ですよ」と念を押してくる。

 曖昧あいまいな笑顔で応えると、彼女はそっと俺の腕を引いて、前のめりになった俺の頬に、そっと口づけをした。


 アリエイラの柔らかい唇の感触にひたりながら、俺は神殿の前まで来ると──馬車に乗って、中央都市ミスランまで戻る事にしたのだった。

 買い物をする余裕は無い。

 ()()()()()()()()抱えているのだ、これ以上の荷物など持ち運べる訳も無かった。


 水の神の住まう湖は、本当に宝の山だ。宝石類は言わずもがな、霊晶石があれだけあるのなら──いざという時は水の神と、その精霊にお願いをして、霊晶石を分けて貰う事も出来るだろう。

 今日もらって来た分だけでも──失敗さえしなければ──かなりの数の錬成品を作り出せる。


 街道を進む馬車に揺られ、頬に受けた唇の感触を思い出すと──顔がゆるんでしまう。彼女の愛情のせる技か。

 可憐かれんな美少女の口づけとはいいものだ……




 そんなやましい事を思いながら、ミスランの停留所まで帰って来た。

 夕方を過ぎた頃だろうか。

 宿舎まで重い革袋を背負いながら戻って行くと、何やら壁の向こうが騒がしい。


「ふん、これだけ言われても闘いをこばむとは……『黒き錬金鍛冶の旅団』は腰抜け揃いだな」

 そんな言葉が聞こえてきた。

 玄関の扉を開けて中に入ると──そこには来客の姿があった。まあ、()()()()()()だろうが。


「団長!」とカムイやメイが声を上げる。


 見知らぬ三人組の若者を前に、うちの旅団員が数名、木剣や革の盾を手に──何やら険悪な感じで三人をにらんでいる。

「いきなりやって来てあれだが、うちの旅団員は腰抜けでは無いぞ。他の旅団員と闘う場合には、団長や副団長の許可がいるものだからな。どの旅団でもそうだと思うが?」

 俺の言葉に若者三人の一人が、露骨に侮蔑ぶべつの表情を見せる。


「そんな古臭い考えに囚われているから、おたくの旅団はパッとしないんだろうな」

 なかなかに気合いの入った感じの若者が言う。まるで不良の代表格の様な顔つきをしている。髪型や服装は普通の冒険者と変わらないが、明らかに喧嘩けんかを売りに来た空気を身にまとわせている。他の二名も似た様な気配を感じさせるが、俺は取り合わない。


「ああ、それと──うちの旅団は『金獅子の錬金鍛冶旅団』と変わったので、よろしくな。……ところでお前らは、どこの旅団員だ?」

 ふん、と鼻を鳴らす先頭の若者。

「俺達は『黎明れいめいの白刃旅団』。その団長が俺、アンクバートだ!」

 お──、と俺は声を上げる。


「おう、知っている。最近ノリにノッている若者達の多い旅団だろう? よろしくな」


 俺は革袋をウリスとヴィナーに預け、宿舎の倉庫にしまうよう頼んだ。

 彼女らは重い荷物を持たされると、よろよろと運んで行く。


「この旅団は女ばっかりなのか? 男はそこの弱そうな奴一人しか見当たらねぇ」

 弱そうとののしられたカムイが少しいらついた顔を見せる。こういう時は顔には出さずに、無表情ポーカーフェイスを貫き通すのが一番だと教えたはすだ。


 ふむ、とあごに手を当てる。

 この若者アンクバートは確かに強いだろう。身体の大きさもそこそこだし、筋肉の付き方を見れば──相当の鍛練をしてきているのは良く分かる。だが……


「弱そうか。だが──きっと()()()()()()()()()()()()だろう」

 俺の言葉を受けると、アンクバートはひたいに青筋を浮き上がらせるほど、怒りを全面に押し出してくる。


「なんだと⁉ こんな細っこい野郎が、俺よりつええって言うのか!」

 俺は肩をすくめながら「まあ落ち着けよ」と口にする。

「今日、君らが来たのは──あれだ。武闘大会で闘う相手の偵察だろう? だったら残念だが、お引き取り願おう。うちからはこのカムイが出るし、実力を知りたければ大会で勝ち残って、実際に闘ってみればいい。そこではっきりするだろう」

「はっ、団長も腰抜けなら仕方が無え、あんたみたいな片脚を無くした年配者ロートルの言いなりになっている冒険者なんぞ、俺が一撃で倒してやんよ!」


 わあ、素敵なイキリっぷり。

 カムイとメイは気色けしきばむ。

 メイを抑えるユナが居て良かった。ユナは少女メイの腕を強く両手で握りしめ、彼女を前に踏み出させない。


「さすがは駆け出しながら、順調に実績を上げて行っている旅団の有望な新人だな、大した自信だ。しかし……」

 俺はにっこりと微笑んだ顔で、威圧的な気配を放つ──戦闘経験の違いからくる()を受け、三人の若者はひるんだ様子を見せた。二人はあからさまに後退する。


「脚を失ったのは俺の失態だが、脚どころか命を落とす冒険者も多い上級難度の戦いも経験せずに、そんな事を軽々しく口にするんじゃない」

 帰るよう扉を開けてやると──彼らは捨て台詞ぜりふを吐き、ぶつぶつと文句を口にしながら敷地を出て行った。




 相手に対する配慮はいりょ敬意けいいといったものを学んで来なかったのは明らかだ、彼らが他の旅団に入った事が無い若者達というのは間違い無さそうだ。少なくともまともな旅団なら目上の者に、ああも露骨にみつくなどさせないはずだ。


 冒険者の年長者は戦闘を重ねた分だけ、見た目では分からぬ強さというものが往々(おうおう)にしてある。

 リトキスなどは外見はさわやかな好青年だが、あれは戦いの玄人くろうと以外の何者でも無いのだから。

 達人は達人が分かるが、中途半端な玄人ベテランには達人の技量が分からない場合が多い。特に思い上がった者には、そうした「目」が備わっていない事がままある。


「やれやれ……カムイ」

 カムイは黙ってこちらを見ると、重々しくうなずく。

「まあそう気張るな。大会前にわざわざ相手にこちらの手の内を見せる必要は無い。よく抑えたな……特にメイ。喧嘩は御法度ごはっとだぞ、その気配をしまいなさい」

 そう声を掛けられると、少女の小さな身体かられ出ていた殺気に似た気配がしぼんでいく。


 たぶんあの三人組が挑発を続けていたら、メイ一人にボコボコにされていただろう。

 武器を手にした状態ならともかく、あの思い上がった態度からすると、少女相手に武器などいらんとイキって素手で闘いを挑み、完膚かんぷなきまでに叩き潰されていたに違いない。

「早めに帰って来て正解だった」


 白刃旅団の三人は強い、それは確かだ。

 だが──剣や格闘の修業を本格的におこなったカムイやメイよりも、彼らの技術が優れている事があり得るだろうか?

 何十年、何百年と受け継がれてきた戦闘技術の向上を理解せず、独学で学んできた技術の方が勝ると、誰が言うだろうか。


 洗練された訓練の先に得た理論と実践じっせんが、若者の成長にどれだけの違いを生んでいるか。

 彼ら白刃旅団の若者は、その身をって知るだろう。

 基礎を理解せずに始めた付け焼き刃では──才能がいかにあったとしても、その戦闘技術は相手に動きを読まれ、力任せに攻撃をり出すだけの単調なものにらざるを得ない。


 アンクバートの潜在能力は、かなり高いものだと俺は感じた。しかしそれでも──何代もの冒険者によって鍛えられた「()()()()()()()は、考え抜かれて発達したものなのだ。

 洗練された技術というものを軽んじる彼らには、はっきりとした引導を渡してやる他は無い。


「カムイ、連休が終わったら──みっちりと稽古を付けてやるからな」

 カムイは「はい」と、はきはきとした返事を返す。

 こちらの若者も強くなろうとする気迫の面では、奴らに引けを取らないだろう。


 大会まで──まだ多少の時間はある。

 その間のカムイの成長が楽しみになってきたな……

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