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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第一章 錬金鍛冶の旅団

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旅団の拠点(本拠地)

 リーファを呼んだのは、彼女から資料を受け取る為だったようだ。手渡された資料を見ると、数枚の紙にミスランの街の地図と、売り出されている土地と建物の一覧表である事が分かったのだが──

「おい、なんだこれは?」

「見て分かりませんの? 旅団の拠点となる物件を捜していた時の資料ですわ」

 俺は耳を疑った、貴族のお嬢様の考える事はよく分からん。


「なんでどれも馬鹿でかい敷地や建物なんだ?」

「あら、()()()()()()()()()()()()()じゃありませんの。団員が増えた時の事を思えば当然でしょう?」

 俺は呆れながら「そうだな」と返事し、理想の場所を捜していたから旅団の立ち上げが遅れていたのかと尋ねる。

「そうですが、何か?」

 俺は盛大に嘆息たんそくして、そんな事は団員が増えてから考えればいい、と言ってやる。


「旅団に必要なのは、都市に納める旅団登録料──はっきり言ってこれだけだ。こうする事で、その都市にある転移門の使用料を一年は免除できる。ただし、拠点を設定した場所以外の転移門を使用したい時は、その都度つど使用する度に払う事になる。これは旅団でなくとも個人で受けれる事だが、旅団を立ち上げる利点は、都市の庇護ひごを受けられる事だ。食料や塩、砂糖、酒、薬などの希少な品も一定数街から支給されるようになる。さらに有能な団員を引き入れたり、転移門先で動けない状況になった仲間を、他の旅団の力を借りて助けに行く事などもできる」

 レーチェは「そのくらい知っていましてよ」と小声で愚痴る。そりゃ失礼と突き放して、要は団員四名の確保をすれば、厳密な拠点は都市の中であればどこでも──極端に言えば倉庫でも可能という事だ。


「という訳で、拠点は俺の鍛冶屋、あそこにする」

「あんな狭い所をですか」

「いいんだよ、あそこに寝泊まりする訳じゃない。だが、そうだな──ユナとメイには住む所が必要になるな……しばらくは宿屋か、どこか宿舎を借りるかだが──」


「それでしたら、良い物件がありましてよ」

 彼女はそう言い、リーファに指示を出すと侍女が一枚の紙を差し出す。

「こちらの物件は、すぐに売却可の物件なのですが──いささか手狭なので、拠点に相応しくないと思って除外したのですわ」

「おま、……ここが手狭なら、俺の鍛冶屋はどんな扱いになるんだよ……」

 敷地面積だけとっても鍛冶屋と住居の三倍はある。レーチェはうーん、と考える様な仕種をしてこう答えたのである。

「犬小屋ですわね」


 がっくりと項垂うなだれた俺を気の毒だと思ったのか、彼女は続けてこう言う。

「い、言い過ぎましたわ、……そう。()()()犬小屋ですわ!」

「もういい」

 俺はそこを借りるとして、いくらくらいするのかと尋ねながら物件の内容を調べていると──

「借りるのではありませんわ、購入致しましょう」


 いやいやいや、人の話を聞いていたか? 団員が増えればそこを引き払うかもしれんだろ、と言ったが彼女はあっさりと。

「その時はもう一軒購入致しましょう」

 こいつは……住居を衣服か何かと同じに考えているんじゃないだろうか──だが、その事は口にせず、旅団登録料と俺、レーチェ、ユナ、メイの四人分で──かなりの金額だが、一月ひとつきもあれば俺が稼ぎ出してやる! と息巻いたのに──


「それはわたくしがお支払いしますわ」とレーチェが言う。

「いやいやいや、ここは苦労して資金繰りをし、やっとの思いで旅団を立ち上げて、『俺達の冒険はここからだ!』ってやるところだろう!」

 するとレーチェが呆れ顔をして。

「……それに何の意味がありますの? 冒険なら旅団が無くても個人で出来ると、さっきあなたも仰ったじゃありませんの」


 こっ、こいつはぁ~~こういう冒険物の「お約束」をぶち抜いて行く気か! ……だが冷静になると、このお嬢様の言う事ももっともな事だ。

 ここはレーチェの資金力に頼る事にして、ユナとメイを安心させてやろう。

「では旅団の名前を考えないとな」

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