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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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連休一日目の夜に

精神世界でのお話。


誤字報告ありがとうございます。助かります。

とくに脱字だと見直してもスルーしてしまう可能性が高そうなので……感謝!


次話は日曜日の昼頃に投稿します。

 ぐっすりと眠りにくと──しばらくして、耳鳴りの様に川のせせらぎが聞こえてきた。ああ、心地良いなぁ……そんな気持ちになって安らかな気持ちで眠りに落ちる────


 *****


 すると、本当に少し離れた場所から小川の流れる音が聞こえているのに気づき、眠気も消えていると感じると──目を開いて周りを確認する。


 そこは若草の絨毯じゅうたんが敷かれていた。

 小さな草が生えた場所、その周辺には草原が広がっていた。近くを流れる小川、大きな石にぶつかって流れる方向を変える水の音が耳に心地良い。

 懐かしい原風景が広がる草地の上に寝転んでいる。


「お久し振りです」

 丘と大きな岩のある間から水の神アリエイラが現れた。ここは精神世界かと、その時にやっと気がついた。


「女神……お久し振りですね。ここは今までの場所と少しおもむきが違う場所のようですが」

 遠くに黄土色の岩山や、緑におおわれた山などが見えている。別の方向には大きな川や湖もあり、広大な草原や岩ばかりの荒れ地を通る小川なども見えている。


 空には白い雲がふわふわと浮き、燦々(さんさん)と降り注ぐ暖かなる日の光を感じながら、それを見上げていると──彼女はこちらに近づいて来て俺の隣に腰を下ろした。


「最近、忙しそうですね」

 その声は「会えなくて寂しい」と言っているように感じられた。

「そう──ですね。管理局からも色々な協力要請を受けたり、ミスランの中だけでも結構な変化がありましたから」

 そう話しながら旅団の変化──名前や、敷地が拡大した事などを説明する。

 女神の方はというと、他の三神と共に混沌こんとんの中を移動している、まだ見ぬ大地を探していたのだという。


「鉱山の多いと思われる大地は見失ってしまいました……が、新たに危険な大地を発見したのです。私達はその大地を『黒騎士の決戦場』と仮称しました。──黒い鎧に身を包んだ兵士達が守る、大きな城塞じょうさいと山岳を含んだ大地です」

 そこは混沌によって過去の記憶を再現した様な世界だろう。黒騎士とは「混沌の騎士」だと思われるが、中には黒や赤、紫などの発光気オーラを放つ、黄金の鎧を着た騎士も居たらしい。


「それは……リゼミラ辺りが聞いたら、戦ってみたいと言い出すでしょうね」

「しかし本当に危険な力を秘めた混沌の軍勢です。あの大地がこれ以上接近してきても、転移門を開くのは賛成しかねますが──ミーナヴァルズは、その大地への転移門を開く事を望んでいるようなのです……本当に、フォロスハートの人々を危険にさらすような結果になるかもしれないというのに……」

 火の神(ミーナヴァルズ)は危険の中でこそ人々の結束や、強くなろうとする想いが生まれる、そう考えているのだろう。


 厳しい冒険に挑戦しようという冒険者が居る事も事実だが──個人的には、自然豊かな大地があれば、そこに転移門を開きたいものだ。

 それに加え霊晶石がれる場所があるなら、言う事は無いのだが。


「どうかしたのですか?」

 思い悩んでいると、アリエイラが心配そうに声を掛けてきた。

「いえ……その、霊晶石が少なくなってきたので、今度──旅団員に協力してもらって『混沌の悪魔』から霊晶石を入手してもらいたいと考えているのですが」

 それは危険な相手であり、その危険を少なくする為にも「身代わりの護符」を作って、渡しておきたいのだが──


「その護符を作るにも霊晶石が必要なばかりか、錬成難度も高いので……どうしたものかと──」

 するとアリエイラは「ぱんっ」と手を叩く。

「それでしたら……私の顕現けんげん体のある湖──あの底にあると思います」

 そう言うのだ。


 なんでも大地の中に水を流し、大地に命の循環を行っている過程で霊晶石がまれに生み出され、湖の底から沸き上がる水に混じって霊晶石が吐き出されるのだとか。


「それは凄い! でも、湖の底に採りに行くのは……」

 湖は立ち入り禁止なのだ。


 彼女は大丈夫ですよと言い、明日にでも暇があるなら採りに来ませんか? というお誘いを受けたのである。

「それは……ありがたい話なのですが……いいんですか?」

「大丈夫。神官や巫女達は『水の護符』の持ち主を邪険にしたりはしませんよ」

 そうだった、あの水晶の腕輪は最大の賓客ひんきゃくとして扱われる許可証の様な物でもあった。

 仲間達の為にも霊晶石は必須だ。

 それに──久し振りにアリエイラと会いたいという気持ちもある。


「では……明日の午前中に、そちらへ伺うようにしますね」

 そう返事をすると、彼女は何とも愛らしい笑みを浮かべて──俺をドキッとさせる。




 しばし談笑していようかと思ったが、段々と眠気が襲ってきた。どうやらこちら(精神世界)に居る限界がこようとしているらしい。


「ああ、待ってくれオーディスワイア」

 そんな声が聞こえた。

 すると近くの岩の上に一羽のふくろうが舞い降りた。

 緑色と青い色の羽を持つ美しい梟は、ばさっと羽を羽撃はばたかせ──一時的に俺がこの精神世界に留まる力を復活させる。


「一時しのぎだが……手短に話そう。──すまないなアリエイラ、君とオーディスワイアのきを邪魔したくはなかったのだが」

 彼女は頬をほんのりと赤くしながら「そんな事よりどんなお話があるのですか」と、風の神ラホルスの言葉を待つ。


「ああ、うん。私とミーナヴァルズは『神の手(シュベルエレン)』──神騎兵シュルトヴァーレンの強化の為に取り組んでいてね。あの地下格納庫にオーディスワイアを招くよう言ったのも私なんだが、……どうだろうオーディスワイア。そろそろ本格的に神騎兵の強化についても取り組んでみないか」

 もちろん監視飛翔体の作成などで大変だとは理解している、余裕がある時で構わない。と風の神が語ると──再び意識が朦朧もうろうとしてきた。


「ああ……やはり、そんなに長くは誤魔化ごまかせないか。オーディスワイアがいくら強靭な魂を持っているとはいえ、これ以上引き留めるのは難しそうだね。また、次の機会に神騎兵について君の返答を聞かせてもらうとしよう。それではゆっくりと休むがいい──」

 ラホルスの声の後に、優しく語り掛けるように水の神の「おやすみなさい」という声が聞こえた気がした……

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