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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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貝の砂抜きと、休暇の初日

次話は水曜日の午後6時~の投稿を予定。


 宿舎に戻って来ると夕食前になっていた。宿舎の広くなった庭の片隅かたすみに木のテーブルや椅子が置かれていた。……どうやら新しい建物の中の物を外に出して使うつもりらしい。

 そこにはエウラにメイ、カーリアが居る。

 三人は子猫を足下で遊ばせながら談笑していた。


「あ──オーディス団長。お帰りなさい」

 カーリアが言うと、背中を向けていたメイがビクッと身体を震わせたのが見えた。

「どうした? メイ」

 俺が声を掛けると、エウラが困った時に見せる笑みを浮かべる。

「だ、だんちょう──怒らないで。お菓子……全部食べちゃった……」

 蚊の鳴く様な声とはこの事だろう。

 メイは叱られる子供そのもので、小さくなっている。


「あ──、あの木の実入りのプラノクリージュ(チョ○レート)焼き菓子(パウンドケーキ)か。俺も味の確認をしたかったのに……美味うまかったか?」

 そう尋ねると少女は元気に「うん」と返事を返す。

「そうか、ならいい。──だが少しは遠慮しろよ? 揉め事の元だからな」

 メイの頭をポンポンと叩き、庭に彼女らを残して宿舎に戻ると、調理場の方へ貝を持って行き、ざると鉢を用意して貝の砂抜きをする。


 塩分濃度は海水をめてみて、感覚で計って塩分を足した水の中に貝を広げて浸けて置く。周囲が水浸しになってもいいように、辺りの物をどかしておいた。


 調理場に居たレンネルとリーファに、貝は明日か明後日に食べようと言い、俺も料理を手伝おうとした──すると。

「貝……ですか。実は今日、貝を買って来てしまいました。いえ、海のではなく川の貝なのですが」とリーファが言った。

「ああ、いいじゃないか。川の次は海の貝という趣向しゅこうで」


 どういった料理を作るのかと尋ねると、彼女は大きな鉄の鍋で海老えびに貝に塩漬け燻製肉(ベーコン)などなどを、米と炊き上げた料理を作ると言う。

「それは手の込んだ料理だなぁ」


 そこで俺は食料庫から鶏肉などを持って来て、レンネルは羊の肉を使った料理を作り始める。お互いに香草ハーブ胡椒こしょうなどを使って臭みを取ったりしながら、生姜しょうが玉葱たまねぎなどと共に煮込んでいく。


 俺は鶏肉カレーもどきを作った。香辛料は多くはないので「なんちゃって」カレーだろう。鶏肉に玉葱をすり下ろした物を塗り込んだり、手間は掛かっているのだ。

 カブテ草の根を燻製した物も使用して、苦みや深みといった物も加えてみた。

 ……まろやかな味のカレーと言ったところか。




 煮込むのをリーファに任せると、俺は食堂に集まった皆の元へ行き、休暇に何をしていたかを聞いた。

 それぞれゆっくりと休日を過ごしていたらしいが、カムイは剣の訓練をしてから休んだようだ。最近のカムイの変わりようは、剣士として大成すると決めて取り組む決意から来るものだろう。


 意識を自らの意志で変え──己に厳しい訓練を課す事で、より強くなろうと奮闘している。いつかカムイもリトキスに迫るくらいの技量を持つかもしれないな。


 塩漬け燻製肉と魚介の炊き上げ飯(パエリア)や羊肉の揚げ物、鶏肉──辛み煮込み(カレー)──料理などなどが運ばれて来る。

 それぞれが休暇を楽しんでいる様子なので、パールラクーンでの犬亜人討伐や霊晶石の確保については話さないでおく。

 そういった話は連休最終日にするとしよう。


「オーディス団長」

 皆の様子を見ていると、横からカーリアが声を掛けてきた。

「ん? どうした」

「私って操気(気を操る)を出来ないの? リゼミラさんの様な魔法剣士になりたいって言ったら『魔法が上手い人は、気の操り方が苦手な傾向があるみたいだ』って言われたんだけど……」

 カーリアが積極的に強くなろうとしていたとは……そう思ったが、どうやらリゼミラが使う「相乗()()」を耳にして、そうした「必殺技」的な物を持ちたいだけのようだ。


 確かに、魔法の扱いと操気の均衡バランスは、どちらかに傾く傾向があるとされている。

 魔法を使えない人は操気に優れ、魔法が得意な人は操気が出来なかったり──そういった事が言われているのだ。


「確かにな。しかしリゼミラの様な魔法剣士にねぇ……止めておけ、筋力量が違い過ぎる」

 魔力量も高くなり──安定して使える魔法剣が得意なんだから、それを伸ばす戦い方を学んでいけと少女に忠告アドバイスする。


 リゼミラの「相乗強化」とは、操気による身体能力の強化に──さらに魔法による強化を加えたもので、魔法と気の強化による()()()()を使っているのだ。

 通常の気の強化の上に魔法による強化を上乗せしたものよりも、遥かに強力な反面──欠点もある。


「リゼミラが相乗強化を使う場面なんて、上級難度の転移門に出現する強敵に挑む時くらいだろう。あの強化を使用すると、()()()()()()()()()()()()()()()()()らしいし、良い事ばかりじゃないって話だ」

 それに仲間との共闘で初めて戦う気持ちになれるカーリアには、「苛烈なる双剣」と呼ばれるリゼミラの真似まね事は危なっかしいだろう。あいつは一人で戦況を打破する力があるからこそ無茶をするんだ。


「この『相乗強化』は、魔力と気の均衡が上手くいかないと使用できないらしい」

 リゼミラの固有技術ユニークスキルという訳では無いが、そうした相乗強化が出来る冒険者は限られている。

 俺も何度か試したが、上手くいった試しが無い。気による強化の上に魔法による強化が()()()されただけだ。

 ある意味才能の部分が関わるのだろう。


「とにかく、お前は前線に出て積極的に戦えないんだから、後方からの支援をしたり、援護をする戦い方を習熟してからだ。いいな?」

 少女カーリアはだいぶふて腐れた表情で「はぁい」と応える。


 必殺技なら「魔法剣」で充分だろう。


 最近うちの旅団員は、よその旅団からも一緒に冒険に行かないかと誘われる事も増えたみたいで、カーリアも誘われた事があるらしい──魔法剣の力を見てみたい、という冒険者が居るのだ。

 カーリアは人見知りが激しいので、そうした誘いを断り続けているようだが……

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