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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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海の大地とウリスの故郷

次話は金曜日の午後6時~に投稿します。

 翌朝に出かける前の支度したくをした後、朝食前に焼き菓子を作り始める。

 小麦粉や卵、牛乳に牛酪バター、そしてプラノクリージュ(チョ○レート)と木の実を用意する。


 小麦粉に牛乳や卵を入れ、切る様に混ぜ合わせながら、柔らかくなった牛酪、プラノクリージュを加えていく。

 いわゆるチョ○レート○ーキの生地に仕立てるのだ。その中に軽くって砕いた木の実を混ぜ込む。


 生地を金型に流し込んだところで、朝食当番のレンネルとエアネル。そしてカーリアが調理場に入って来た。

「おはようございます」

 彼らはそう挨拶をしてから、二つの金型に入った菓子の生地を見る。

「お菓子ですか、そういえば昨日──ウリスが何か持って来ていましたね」

「朝早くから菓子作りなんて……主婦でもやらないんじゃない?」

「エアネル、お前は食べなくてもいいんだぞ」


 生地を冷蔵庫で休ませながら俺は言って、食堂へと戻る。──そこにはウリスやヴィナーが居たので彼女らに、冷蔵庫に入れた二つの金型を後で天火オーブンに入れて焼くように言っておく。

「温度と時間は紙に書いておいたから、あとは微調整しながら焼いてみろ」

「どこかへ出かけるんですか?」

 ウリスが尋ねるので、海の方に用事があるんだ。と言うと──彼女は最近、漁師や子供達の間で海の神エウシュアットアが人気になっているのだと言ってきた。


「漁師はウンディードの湖で漁をしている人などを管理局が呼んだらしいな? 新しい雇用が出来て良い事だが──漁師はともかく、子供達にエウシュアットアが人気なのは何でだ?」

「それは──」と何故か口ごもるウリス。

()()()()()()、その理由が分かりますよ」などと言葉を残して調理場の方の手伝いに行ってしまう。


 彼女の両親は()師でもあるが、()師となるべく管理局に資格を取りに行ったという。何故なら彼女らの実家のあるペルムの近くに「西海の大地」が接合されたからだ。


 もともと外周区の近くにある集落で暮らしていた人達は、狩りと農耕と畜産などで生計を立てていたが、それに加わって新たな働き口を手に入れられた訳である。


 西海の大地はフレイマとゲーシオンの中間辺りに接合箇所があり、そこへ通じる新たな街道も作られ──ペルムのあった場所は、最近になってとても活気づき、新たな住居や施設が作られる計画もあるらしい。

 海産物取引所みたいな場所らしいが──管理局が、妙な実利主義を持ち出さなければいいのだが。……まあ、パールラクーンとの取り引きもあるので、乱獲や不平等な売買を取り締まる必要性はあるから、管理局が手を出すのは当然ではある。




 朝食を食べ終えると、ウリスやユナに寝かせてある生地を焼いておくよう伝え、俺は小さな荷物を持ってフォロスハートの北東──北をフレイマ、東をゲーシオンとする方角──に向かう馬車に乗って移動する。

 クラレンスとファンディアの間にある土地は多くが農場であり、細い道の間を抜けて行くと、外周区の山が近くに見える場所までやって来た。


 そこには小さな集落のペルムがあり、ウリスが言っていた通りに近くには森と山がある、自然の多い場所だった。

 ペルムから西海の大地まで向かう荷車に乗せてもらい、そっちへ向かうのだが──どういう訳か子供達も乗り込んで来た。


「彼らは貝を拾うのに協力する子供ですよ」

 御者が説明してくれた。

 子供達は四人。ペルムに住む子供達らしい。

 ウリスを知っているかと尋ねると、子供達は「うん」と明るく返事をする。

「お客さんはウリスの知り合い?」

 俺と同年代くらいの御者が言った。

「そう。ウリスは俺の旅団の一員なんだ」

 そう答えると子供達はウリスは元気かとか、活躍しているかとそれぞれしゃべり掛けてくる。


「へえ、彼女の旅団の……最近ウリスはペルムに帰って来ないから分からないけれど──元気にやっているのかい?」

 俺はもちろんだと答え、子供達にも彼女は立派に冒険者をやっているだけでなく。新たな魔法(きゅう)という技術を会得えとくして、それを他の旅団の狩人かりゅうどなどの弓使いに教えている、教師役もやっているんだと教えてやった。


 子供達には細かい部分は分からなかったらしいが「すごい」と感心している子供も居た。──将来、こうした子供達が冒険者としてフォロスハートを支える一人になるかもしれない。




 荷車が西海の大地につながる吊り橋の前に止まる。橋の前には監視所の様な建物があり、許可の無い者が立ち入る時は、用件や身分などを紙に書いて行かなければならないらしい。

 俺は先に荷車を海へ向かわせるよう言って荷車を降りた。


「用件は──えっ⁉ 地の化身エウシュマージア様に会う⁉ 本当か!」

 管理局から推挙されたらしい兵士に書いた紙を見せると、驚いた声を上げてもう一人の兵士も紙を覗き込む。

「ああ、いつでも来てくれて良いと言われているので──たぶん、陸に上がって来てくれているはず」


 俺は兵士達をその場に置いて、西海の大地へと繋がる吊り橋の、歩道専用の部分を歩いて行く。

 しっかりと補強された吊り橋は、俺が歩いたくらいではびくともしない。最初にこの橋が架けられた時よりも多くの鉄線綱ワイヤーロープが大地に繋げられている。


 直線上を結ぶつなに斜めに繋いで、揺れないようにしている鉄線綱だ。

 足下付近にはあみも張られており、物が落下しないようにもしてあった。管理局が改善策を取っているのが良く分かる。


 大地の狭間から見える混沌──それは黒い「隙間」だ。

 二つの大地の間は百メートルも無いだろう。

 なのに、そこを渡る時は──もの凄く長い時間を掛けて歩いたような、そんな気分になったのである。

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