新しい土地の購入
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食堂には大勢が集まっていた。今日はリゼミラが来ており、アディーディンクは家で子供達と夕食を食べる予定だと言う。
席に着くと、テーブルの片隅に座るフレジアとユナとメイ──そしてカーリア。
フレジアとカーリアの膝には三匹の子猫が乗っているらしく、彼女らは楽しそうに子猫を撫でている様子が見える。
「ニャア──」
足下から鳴き声が聞こえたので床を見ると、そこには母猫のライムが居た。椅子を引くと俺の膝の上にぴょんと跳び乗ってくる。
ライムは俺の膝に乗った直後、ズボンに鼻を近づけて匂いを嗅ぎ出す──ゲーシオンの野良猫の匂いを感じたのだろうか。
「団長──って、また猫を……⁉ もう、食堂に動物だなんて」
突然現れてそんな事を言うレーチェを、ライムはじろりと睨みつける。
「ちょ、見ないでくださいな」
「いいから前に座れ、前に」
匂いを嗅ぐのを止めたライムは、俺の膝の上でごろんと転がってお腹を見せた。その白いお腹を撫でてやると、彼女は俺の手を前足で掴んでくる。
「噛むなよ、絶対噛むなよ」
俺はライムにそう警告したが、彼女は俺の手に遠慮なく甘噛みをする。
「この、このっ!」
わちゃわちゃとお腹を撫でてやると、ライムは膝の上で暴れながら前足で手を押さえ込み、がじがじと噛みつく。
「ちょっと団長。遊んでいないで私の話を聞いてくださらない?」
俺の前の席に座ると、彼女は隣に座るカーリアが抱く子猫にちらりと視線を向ける。
カーリアがそんな副団長を警戒して、両手で守るみたいに防御の構えを取った。
「か、カーリア? 別に私は、子猫をいじめたりしませんわよ?」
そう言われても少女は子猫を抱えて、レーチェから隠すように椅子をずらして背を向けるのであった……
「で? なんだ、話って」
「え、ええ……そうですわね。その──お隣さんが今日、お引っ越しされたのですわ」
「そうらしいな」
「それで……実はあの方は私の治める領地に息子さんが居まして」
「それも知ってる」
あら、そうでしたか。と言った副団長に、以前にそんな話しをお前の口から聞いたんだが、と言うと──彼女は少し赤面して「そ、そうでしたわね」と小声で言う。
「まあともかく、お隣りさんは引っ越す前に、私にあの土地と建物の権利を譲ってくれましたのよ」
「金で買収した、の間違いでは?」
すると彼女は憤慨した様子を見せる。
「あちらからの申し出で、格安で譲って下さるというので、お話しをしただけですわ!」とキレられてしまう。
「わ、わかった。それで? どうしたんだその金は」
「その……旅団費の中から出しましたわ」
「おい」
「大丈夫ですわ。旅団費に負担が掛かるようなら、私のお財布から出しますわよ」
まあ正直言って金には困っていない。
象徴武具の報酬などの固定収入があるので──うちの旅団(あるいは俺)は、ある程度の金持ちなのだ。
俺はそれよりも、隣接する土地を買ってどうするつもりかと尋ねる。
「それですわ、私が相談したい事とは。せっかく壁一枚を隔てた土地を手に入れられたのですから、壁を取り払って、訓練できる場所を大きくしたり、新しい建物の使い道を考えたりしたのですが……」
何でも老夫婦が住んでいた建物の床は、相当に傷んできているらしい。住むつもりなら床板を全て取り替える必要があるとの事だ。
「建物を宿舎として使うのか? そこまで旅団員は増えないだろう。取り壊してもいいのなら、解体という選択肢もあるが……」
そうこうしているうちに食事が運ばれ、リゼミラや三美人の冒険者らを含めた大勢での食事が始まった。
今日は魚貝よりも、羊肉や兎肉を使った料理が多く皿に乗っている。
西海の大地と接合した事による恩恵だが──以前は、「鉱山と荒野の大地」が接合対象として考えられていたようだが……あの計画はどうなったのだろう。
できれば自然豊かで外敵の居ない土地を確保して、農業や畜産業を行える土地があれば……そう言えば、管理局では「鉱山と荒野の大地」に植物を植えて、荒れた土地の環境を整えようとしていると言っていた。
荒廃した荒れ地を緑豊かな物に作り替える計画は、長期の取り組みが必要だろう。
苔を使った荒れ地の開拓なら知っている。砂漠化を防ぐ為に行った取り組みがあった──地球での事だ。
「ああ……小鉢植物園を作りたい」
趣味の小鉢植物園の作製と観賞が最近できていないのだ。しかもここにきて旅団宿舎の隣に空き地が出来るだと……? 確かにこの宿舎の庭だけでは狭いから──戦闘訓練をすると、二組の練習試合しか出来ないくらいだった。
それを広くなった場所で出来るなら良い事だ。
しかし色々とやらなきゃならない事が多すぎる! 考える事があり過ぎて、どれから手を付ければいいか答えが出せない。
すると目の前で同じ様に考え事をしていたレーチェが溜め息を吐いた。
「お互い疲れているようだな」
「……ですわね。私もここ最近は自分の領地に帰っても、実家にも立ち寄れない有様でしたので」
俺は少し思案する、このままではよくない。
「皆、聞いてくれ」
俺は立ち上がって言った。
「隣の土地を購入したので明日は──隣との壁を取り除いて、広くなった庭で旅団員全員で戦闘訓練をしよう。武闘大会も近いし、いい機会だと思う。そして明後日から全員で数日休みを取ろう。冒険には出ず、体を休めたり、装備を調えたりする時間も必要だろうから」
訓練後の休暇には一人につき千ルキ、俺が特別手当を支払おう。そう訴えると皆から「おおっ」と声が上がる。
なんだかんだで皆も休暇が欲しかったのだろう。毎日のように冒険に行って宿舎に帰って来るだけでは気が滅入る。
「大丈夫ですの……? そんなお金を払って皆を休ませるなんて」
「大丈夫だ、問題ない」
俺はきっぱりと言ったが、そう言えばこの宿舎以外にも若手の旅団員が居るのだ。──大丈夫、ここのところ鍛冶屋で売っている装備品も売れているし、二ヶ月ごとに管理局から「新技術開発報酬」が入って来るのだ。
むしろ使わないとお金を貯め込むだけになってしまう。お金は世の中に回さないと、経済が滞ってしまう。
不景気を起こすのは自然災害では無い。
人間なのだ。
旅団員に金を渡して、瓦斯抜きをすると同時に経済を回す……素晴らしいじゃないか。自分の懐が痛むだけで皆が幸せになる……
あれ? 俺の持っている金って総額いくらだっけ?
貰った金は鍛冶場の金庫と宿舎の自室にどんどんしまい込んでいるだけなので、正確な数字が分からない。
部屋の中にあるお金の入った皮袋……結構な量がある。新技術開発報酬の一部はレーチェに渡して旅団費に入れているが、それの残りだけでも結構な金額になりそうだ。
今度、確認しておいた方がいいかな……
なんかダチョウ倶○部さんみたいな事をやっているオーディスワイアとライム(笑)
熱湯風呂のCMとか、定番の展開だけどなんか笑ってしまうんですよね。




