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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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ミスランへの帰路の中で

 神ウル=オギトは神騎兵シュルトヴァーレンが浮遊する力を「監視飛翔体(ひしょうたい)」に応用する事に協力すると申し出たが、肝心の「監視」する部分については球体と箱、そして鏡の三つを「鑑定」して詳しく、その構造を書き出していく事になったが……


「箱側にある操作系統を球体自身に組み込んで、直接球体を飛翔させ操縦できるようにする……と。問題は映像と操作の送受信をどうするかだな。その機構メカニズムはこれに備わっている物を改善すればいけるか……?」

 紙に書きながらそうつぶやくとウル=オギトは満足そうに「チュウ──」と鳴き声を上げる。


「浮かせるのに必要なのは神結晶だけで充分だそうです」

 そうなると飛翔体は、この硝子ガラス鏡面レンズ付きの丸い本体と映像を映す鏡だけでいい訳だ。

 硝子鏡面を通して画像を映す機構は複雑で、魔法技術における新たな分野の開拓かいたくとなるだろう。

 電波に似た通信を、飛翔体と鏡(端末装置)の間でやり取りする部分が一番の問題になる。魔力の波長を合わせる方法で映像を送受信している部分を造るのは、単純に金属板に魔力回路を生成するだけでは不可能だ。


 魔力の波長を変更したり、自在に変えるよう造るのはもっと難しく。その双方が離れた場所にあっても互いの送受信を行える機構を造るのは、相当に困難なものとなるだろう。


「結晶体を使って波長の送受信を……いや、神貴鉄鋼を使うべきか──」

 俺がうなっていると、神ウル=オギトは「時間は掛かっても構わない」という言葉を告げて、地の慰霊祭いれいさいの打ち合わせをしなくてはならないのだと言った。


「今日はわざわざお越し頂き、ありがとうございました」

 巫女のアロエがそうお辞儀じぎする。

「うん、これを借りる訳にはいかないんだろうな? 出来れば詳しく機構を書き写したいが──いや、もう少しここで書いてから帰るとしよう」

 ウル=オギトと二人の巫女は管理局の保管庫から去って行く。




 俺はというと、飛翔体の大まかな設計図を描いて、いくつか思い付いた簡略化できそうな部分などを書いておいた。

 管理局の職員に礼を言って建物を出ると、街を歩きながら細い道を通って人気ひとけの無い場所に足を踏み入れる。

 その後も俺はずっと「監視飛翔体」の設計について思い付く限りの事を紙に書きながら、ゲーシオンの街を歩いていて──気づくと公園の長椅子に座って紙を前に考え事を続けた。


「ウニャァ──ォ」

 何やら()()()()猫の鳴き声が聞こえ、体を脚にこすり付けている赤茶色の毛をした、少々太り気味の猫を見つけた。

「おう、なんじゃい。お前はこの辺りの野良のらか?」

「ブニャァ──」

 濁声だみごえの野良猫はズボンに体を密着させてくる。ずいぶん人懐ひとなつっこい奴だ。


 紙を折りたたみ胸の物入れ(ポケット)にしまうと、デブ猫を抱き上げて膝に乗せる。

「うお……お前、重すぎだろう。運動をしろ、運動を」

「ィニャァァ──」

 猫は「いやだ」と言うみたいな鳴き声を上げてから膝の上で丸くなる。


 周りを見てみると、二匹の猫の姿があった。その二匹は太っておらず、芝生からこちらに歩いて来ると、長椅子の上にぴょんと飛び乗った。

 日の当たる長椅子の上で丸くなると、二匹の茶色い猫は身を寄せて目を閉じるこの二匹は兄弟だろう。……いや、このデブ猫も家族なのかもしれないが。

 ゲーシオンの人々は猫を家で飼うよりも、自然に近い状態で可愛がっているのだろうか。公園の一角に小さな小屋が建てられているのだ。それは猫達の住みだろう、木陰や岩陰に置かれた小屋が見える。


「おっと、なごんでいる場合じゃない。帰らないと」

 俺は膝の上で眠ろうとしていた大きな猫を抱き上げて、長椅子の上に下ろした。

「ゥニャァ──」

 茶色い猫のそばに置いてやると、デブ猫は寂しそうに鳴き声を上げた。

 茶色の猫達はこちらを見上げながら鼻をひくつかせたり、小さな鳴き声を上げたりする。

 デブ猫の喉を撫でてやり、頭をぽんぽんと軽く叩いてお別れをした。


 野良猫とたわむれてはいられない。

 馬車が出発する時間になってしまう。

 買い物をする暇も無い。

 俺はミスランへ向かう馬車に乗ると、数人の乗客と共に中央都市へと帰って行く。


 その間も俺は、監視飛翔体について分かった事を考えていた。

 映像を送り、それを受け取る鏡──それだけでは意味が無いかもしれないのだ。混沌こんとんの中を移動し、敵の位置や方向を示せるように出来なければ、管理局が欲する情報にはならないだろう。

 監視飛翔体の位置、座標などを表す装置が必要になる。それも三次元的な物がる。飛翔体と同時に──距離を測ったり、どの距離まで離れても送受信が行えるか、混沌の闇の中を見渡せる視覚が得られるか。

 そうした性能についても考えなくては、この監視飛翔体の実現にはならない。これは多くの専門家の知恵を借りるべきだ。


 管理局には神騎兵が持つ索敵範囲などを付け加えた、飛翔体の試作設計図を持って行き──座標を作成する技術を管理局にも手伝ってもらう事になるだろう。

 座標などを作る作業には──きっと俺は向いていない。その辺りの物を開発する人物を探してもらうとしよう……


 俺は馬車に揺られながら、再びウトウトしてきて──気づくと眠ってしまっていた。

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