キンキンに冷えた飲み物
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翌朝になると、何となく体調の変化に気がついた。
どうやら気温の変化で体調を崩してしまったらしい。
街の気温と鍛冶場内の気温の差が、自律神経の均衡を崩してしまったのだろう。夏バテや熱中症の軽い奴だ。
「まさか冬を迎えるって時に熱中症になるとはな」
「ゥニャァ──」
胸の上で眠っていたライムが返事をする。
彼女は大欠伸をすると、ぐ──っと背伸びをして体を伸ばしながら、肉球をぐりぐりと押し付ける。
俺の体の横に降りると顔の側までやって来て、今度はぐりぐりと頭や体を乱暴に押し付けてくる。
「分かった、起きる、起きますから……」
よいしょと上半身を起こし、寝台から出ようとすると──急に喉が渇いてきた。
「冷たい物でも飲みたいな」
そう言いながらドアを開け、ライムと一緒に廊下に出る。
「冷たい物ですか?」
少し離れた場所にあるドアを開けて現れたレンネルが言った。
「ああ、いや……なんでもない」
レンネルの足下に居たのは二匹の子猫。
そこへライムも歩いて行き、子猫達を引き連れて階段の所にある巣箱へと戻って行く。
そこにユナとメイが猫の食事を盛った皿を運んで来た。
「おはようございます」
ユナ達は挨拶し、レン達も一緒に食堂へと向かった。
俺は自室から紙と万年筆を持って来ており、それで簡単な文を書いておき、それを冒険に行く前に鍛冶屋の方に持って行くようにユナに頼んだ。
「体調が悪いのですか?」
「ああいや、念の為だ。寒暖差に体が参ってしまったらしい」
「そんなに気温は寒くないけど」と言ったのはメイ。
「いやいや、鍛冶場は凄く暑くなるんだよ。その場所との差で、少し体調を崩したみたいだ」
ユナは手紙を受け取ると「必ずケベルさんとサリエさんに伝えます」と言って、物入れに折り畳んだ紙をしまう。
食事は少なめにしておいた。
乾酪や腸詰めなどをしっかりと食べ、食後はゆっくりと、座ったまま──ぼうっとしていた。
温かい紅茶を飲みながら座っていると、レーチェが声を掛けてきた。
「おう? どうした」
彼女は冒険に行く時の伸縮肌着に鎧を着込んだ格好で現れ、手にした硝子容器を差し出す。
「冷たい飲み物を飲みたがってると聞いたので」
レンネルから聞いたのだろう。
「ああ、炭酸飲料か。そういやそんな物も作っておいたな」
二酸化炭素を注入する小さな機械を作ったのだ。チョ○バッ○と一緒に飲もうと予め作ったのだが、すっかり忘れていた。一応、果実水に使って皆で試飲したのだが──甘みを足して作るように書いた調理法を機械に貼り付け、自分では使わないまま放置していた。
「せっかくなので、作ってみましたわ」
彼女が言うには、仲間達で数回実験するみたいに甘みを足した物を作って、配分を研究していたみたいだ。
「へえ、感心だな。炭酸飲料が気に入ったのかな?」
「そうですわね。言われた通り、麦酒に炭酸を加えた物なども試してみましたが、あれはいいものですわ」
氷を浮かべた硝子の器に、しゅわしゅわと立ち上る小さな泡。
ほんのりと色が付いた具合を見ると、どうやら果実水に炭酸を加えた物らしいが──
俺はレーチェの作ったそれを飲んでみた。
口にしてびっくり、なんと、それは生姜の入った炭酸飲料だったのだ!
「キンキンに冷えてやがる──‼」
俺が一口飲んで、そう雄叫びを上げると、彼女は驚いて身構える。
「なっ、なんですの⁉ 急に! きんきん……? 意味が分かりませんわ!」
久し振りに飲むそれは……ジ○ジャーエー○、もしくはマウ○テ○デューを思い起こさせる物だった。
「すごいぞ、レーチェ! これを作ったのは誰だぁ!」
俺が興奮してそう言うと、彼女はかなり引き気味に「だから、私ですわ……」と、呆れた感じで答える。
俺はそれをゴクゴクと飲んで「ぷは──っ」と息を吐く。
「気に入っていただけたなら、良かったですわ」
「おいおい、もっと喜んでもいいんだぜ? これは流行るぞ! まさかジ○ジャーエー○とは! その発想は無かったわ」
炭酸飲料と言えば○カ○ーラとかサ○ダーばかりを思い浮かべてしまい、ジ○ジャーエー○を失念していた。
「じ、『じ○じゃーえー○』ってなんですの? 『きんきん』とかも……もしかして、向こうの言葉ですか? 生姜を使った飲み物もあったのですわね」
俺は残りを飲み干すと「おう」と返事をした。
「生姜を使った飲み物は、こちらでは健康にいいと言うので──私の妹にも、よく作ってあげていましたわ。温かい飲み物ですけれど」
なるほど、彼女は飲み物を作る事はしていた訳か。
「それにしても『きんきん』なんて、意味が分かりません。なんなんですの、それは」
訝しげな表情で聞いてくるレーチェ。すると食堂にカーリアが入って来て、「レーチェさん、そろそろ行かないと……」と彼女を呼びに来た。
「ああ、カーリア。冒険、頑張れよ。……キンキンとは──そうだな、『よく冷えた』程度の意味だな。うん」
俺が「また作ってくれ」と言うと、彼女は嬉しそうに微笑み、それでは冒険に行ってきますわ。と言葉を残して去って行く。
俺は少し気持ちを落ち着け、懐かしい味のする飲み物を思いながら、本日の骨休めの休日を、チョ○バッ○作りに掛けてみようと考えたのだった。




