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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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ミスランに吹く、新たなる風

「西海の大地」との接合を果たしてから数ヶ月の時間が流れていた。

 収穫の時は、あっと言う間に過ぎ去り、秋を終えて冬が訪れるのだ。……もっともフォロスハートは、それほど大きな気温の変動がある訳では無い。

 例年では一(けた)台にまで気温が下がる事も無く、低くても十五度を下回る事は無かったはずだ。これはおそらく、燃料の問題があるからではないだろうか。


 気温は神々の力で制御されているが、我々は室内の温度を保つ為には何らかの燃料がいる。各人にそれだけの燃料が行き渡ったとしても、それを使用して燃料を浪費するよりは、神々の力をって気温を一定以上に保っておいた方が()()()()だと考えているのではないだろうか。──管理局が、である。


 野菜などは気温の変化で甘味を増すと言われているが──もし、それをすのなら、()()()()()()()()はどうだろうか。

 局地的に神の力でもって、畑の周辺の気温だけを下げ、氷点下近くまで下げたりするのである。……出来るかどうかは神に聞かないと分からないが。


 ──おっと、いかんいかん。


 管理局から依頼を受けている、新たな西海の大地の神──その()()の一方──混沌こんとんに支配され、大きく力を失ってしまった地の神、エウシュマージアの象徴しょうちょう武具を作製する依頼を受けているのだ。


 蛇の姿をした地の神の──元々はかにの姿を持った、海をつかさどる神エウシュアットアから分離した──大地の神の力を回復する為、神結晶を用いた儀式を行い、その回復力を高めるのに象徴武具を使おうと言うのである。


 大掛かりな祭儀になりそうだ。……海の大地には陸地が少なく、人の住む土地も無いが。大きな海に満ちた大地を祝福し、海の幸の恩恵を受けている俺達は新たな大地の神々に礼をし、奉仕すべきだろう。

 管理局はそう考えているようだ。


 俺も個人的に大地の神(エウシュマージア)に頼まれた事もあり、象徴武具の作製については協力を惜しむつもりは無い。

 神貴鉄鋼シルエヴァルリスもある。


 西海の大地におもむいて、蒼い甲殻を持つ大きな蟹のエウシュアットアと、小さな灰色の蛇エウシュマージアからも話を聞き、どういった象徴を使用して神の力を回復させるか、じっくりと考えた。

 今それを、机の前で紙に描き上げている。




 しかし──それだけが俺の為すべき仕事ではない。

 管理局──メリッサからも呼び出しを食らっている。なんでも協力して欲しい事があるのだとか……技術班の実務長となったメリッサからの手紙が届いたのだ。どうやら彼女も忙しいらしく、簡潔に「お知恵を借りたい」みたいな事が書いてあった。明日にでも管理局へ向かわなくてはならない。……大忙しだ。


「黒き錬金鍛冶の旅団」には新人三名が加わる事にもなった。十四、五歳の、冒険者になったばかりの新人達だ。

 一応戦闘試験をやらせてみたが──うん、気持ちは買おうと思う。


 その戦闘試験の相手を務めたカムイだが、ここのところ凄い勢いで伸びてきている。実際に剣を交えてみたが、正直言って驚かされた。男子三日会わずんば刮目かつもくしてみよ、などという言葉があったが──まさか本当だったとは。

 俺も男子のはずなのに、うっかりしていたものだ。


 若者の成長速度には及ばないかもしれないが、こちらも負けてはいられない。……もちろん武芸の事では無く、錬金術や鍛冶の技術の方で、であるが。


 最近は団員の数も増えた為、副団長のレーチェも忙しくしている。事務作業が増え、冒険から帰って来ては書類の作成に大忙しだと、俺に文句を言って来た。

 しかし、旅団運営については任せると言っておいただろうと言うと、彼女は言葉に詰まって()()()()と帰って行ったのだった……


 う──ん確かに、ここ最近の旅団活動の幅が広がり、遠征で手に入れた素材などの報告から食料の受け取りなど、確認するだけでもかなりの量だ。

 レーチェとリーファだけでは厳しいのかもしれない。こちらもひまではないが、少しは彼女らの手伝いをしておこう……


 そんな事を思いつつ、象徴武具の設計図をいくつか描いておき、部屋から出て一階にある「旅団執務室」に向かったのだった。

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