猫獣人族(フェリエス)の会議
第八章「新たなる指標」開幕です。
今回はゆっくりと投稿する予定です。どうぞよろしく~
総PV1556900からスタートですね。まあ、PV数にはあまり意味はありませんが。
薄暗い会議室。
窓にはカーテンが張られ、日の光が室内をほんの少し照らしている。
会議室の長いテーブルの周りには、数名の同胞達の姿。……ただ彼らは、色々な役職の、それぞれの立場を表す衣服を着ており、中には会議室に相応しくない格好の者も紛れていた。
「これは由々しき問題ですにゃ」
ボロッコス商会の代表が声を上げる。
「フォロスハートが新しい大地を自分の領土として引っ張り込むなど、これは……我々の利得を先回りして潰しているに等しい事ですにゃ」
ネイブノキア商会の代表が応じる。彼らは海のある大地には──自分達もいつかは転移門を開いていたかもしれないと、そう言っているのだ。
「このままではフォロスハートの連中に、いいように新たな大地を奪われてしまうにゃ!」
そう言ったのは街の防衛に当たる戦士達を纏めているバーンズ将軍。軍隊がある訳でもないのだが、何故か彼は「将軍」と呼ばれていた、……特徴的な髭のせいかもしれない。
「なんとか、アヴロラ様にお願いして、我らにも新たな大地との接合をお願いできないものか」
誰かがそんな発言をすると、会議室は騒然となり、多くの同調や反発の声が響き渡った。
「いや、それは僭越にゃ!」
「しかしどうするにゃ⁉ このままにしておいていいものなのか⁉」
「それよりも現実的に──我らの神には、そんな力は残されているのかにゃ?」
ざわざわと、会議室はそれぞれの立場の者が意見を述べ合い、騒然しさが段々と収まってくると「神官長はどう思われますかにゃ?」と、都市ライデールの代表が私に尋ねてきた。ライデールはパールラクーンの中でも一番大きな都市だ。
私は咳払いをすると、声を落として喋り始める。
「まず……神アヴロラ様に、他の大地を引き寄せる力があるかというと──不可能ではないでしょう。しかし、その為には、やはり神結晶の入手が必要になります、我々には正直、この大地の開拓すらままならない状況で、神結晶を集める事など……かなり困難な話だと思います」
私の言葉に、さざ波を打つみたいに静かなざわめきが起こる。「それは確かに」とか「いや、そうは言っても……」などと、各所で小さな声が漏れ聞こえてきた。
「それよりもフォロスハートの人々は、私達と共に生きると考えてくれているのです。それは、あの大地で創造された新たな武器、『魔法の剣』の造り方を教えてくれた事からも明らかでしょう。その相手に大地を『奪われた』などと言わずに、その新たな大地から得られる物を分けてくれるよう、交渉すべきではないでしょうか」
しんと静まる会議室。その沈黙を破ったのは、フォロスハートとの交易を扱う「貿易監督所」の所長ベネドリス。彼は哀しみを湛えた表情で周囲の人々を眺めながら、低く、重い溜め息を吐き出した。
「それは、その通りかもしれないが……輸入超過がより大きな物になるぞ。これ以上、輸入量が増加すれば、我々の持つ金や銀は……数年後には尽きてしまうのではないか?」
それは彼が最も危惧している事の一つだろう。
今までも、輸出量よりも輸入量の方が多かったのだ。
「開拓を推進するしかないでしょう。私達の土地を開墾し、新しい大地を手にするなどと夢想するより、まずは身近な土地に手を加え、農耕地を拡充するのです。その為には犬亜人との勢力争いに勝利するしかありません。その為にも……ここには居ない小獣人族と共に、犬亜人との戦いに勝利するのです」
私の言葉に再び会議室はざわめいた。
「その戦いにも、フォロスハートの手を借りるべきであると、私は考えています。彼らの抱える冒険者達は戦いにも優れた能力を示し、集団での戦いにも慣れていると聞いています。……その点、我らの兵士達は──その、集団行動にも戦いにも、今一つな成果しか出せていない状態です。このままでは、我らは犬亜人の侵攻にじりじりと後退を余儀なくされ、ここ中央神殿都市アーカムにまで追い詰められるやもしれません」
その言葉に反論しようとバーンズ将軍が声を上げる。
「それは……確かに、我らの性格ゆえに、戦いは個人的なものであると考えられていますからにゃ。これからは、我らも集団として力をつける為に、考え方を改めねばならないかもしれませんにゃ」
そうした将軍の言葉を受け、改めて戦士の育成と、開拓を行う人材を集める準備をしようという事に話が進んだのであった。
まったく、私達の民衆は──どこかおっとりとした性格で、それでいながら攻撃的な面もある、気まぐれな者が多くて困る……
そもそも集団の構成が下手だ。
数人で暮らす事に慣れている者も多いが、不意にその輪から外れて、一人でどこかへ行ってしまったり。かと思えば──一人一人の対立が激化して、争いを起こしてしまう不器用な人達……そんな連中ばかりにゃ──いや、ばかりだ。
「このままではじり貧にゃ!」
各商会の代表が声を荒げる。ああ、すでにこの小さな会議室の中でさえ争いが起こり始めているのだ……
こんな事を、神アヴロラ様にどう伝えたら良いのだろう。……私は表面上は平静を装いながら、心の中で頭を抱えるのだった。
神官長が語尾に「にゃ」を付けないのは、女神アヴロラに合わせてのことです。神殿に務めている猫獣人の多くは、語尾に「にゃ」を付けないよう自制しているらしい……
完結から続くのが気に入らないと☆1を付けた人は、もう二度と読まないでくださいね(にっこり)。
あなたのために書いてはいません。




