表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

300/585

方舟大地の未来

 目覚めた俺は、朝食を食べるまで、ぼうっと考え事をしながら、惰性だせいで動いているみたいだった。


 エウシュマージアの言葉は、はっきりと頭の中に残っていて、俺は早々に鍛冶屋へ向かうと、徒弟の二人と共に「神威の台座」を持って管理局へ向かう。


 管理局に「神々から依頼のあった物を持って来た」と伝えると、驚くほど速やかに担当の者が呼ばれ、礼を口にすると同時に──箱に入った台座を運ぶ者達が集められ、四人の職員が、それぞれ護衛を引きれて、管理局から飛び出して行く。


 唖然あぜんとする俺達に報酬を約束し、契約の内容が書かれた紙に捺印なついんすると、その職員もまた、あっと言う間に去って行った。




 徒弟達を帰し、俺はエウシュマージアに力を取り戻させるべく、相談する相手を探して──結局メリッサを頼る事にした。

 彼女は、半信半疑はんしんはんぎで聞いていたようだったが、間もなく「西海の大地」がフォロスハートの近くに現れるらしい、と話すと、メリッサは言う。


「──ええ、どうやらそうらしいのです。私は、神官が賢者と話していたのを聞いただけですが」

 それから彼女は、賢者ヴォージェスの居る場所に案内してくれた。

 どうも彼女は、ヴォージェスの「耳」の一人であったらしい。


 ヴォージェスは中央会議(とう)の外に居た。なにやら職員達とせわしなく話していたが、メリッサが近寄ると、すぐにこちらの話を聞く体勢に入る。


「どうした、二人とも」

 そこでメリッサは、俺の話を聞くようにと賢者に進言する。


 俺は昨日の夢……精神世界での事を話し、地の化身エウシュマージアが力を取り戻す為に、協力を求めている事を伝えた。


「もちろん大丈夫だ。それについては賢者達の中でも、すでに話し合っている」

 ヴォージェスは海の大地の神々の力も借りて、フォロスハートを守るいしずえきずこうと考えていると明かす。

「その為の神結晶などは、こちらで手配するように働き掛けよう──だが、今はまだ、他にやるべき事がある」

 彼はそう言うと、「お前も来い」と強引に俺を馬車に乗るよう言い、メリッサと別れて──急遽きゅうきょ、賢者ヴォージェスと共に馬車で移動する事になった。


「せっかくだ、お前も吊り橋の完成を見届けたいだろう。神官の話では、間もなく混沌こんとんを抜けて西海の大地が、こちらに姿を見せるらしい。急ごう」

 俺は流されるまま、馬車に揺られ、街の大通りを西に向けて進み始める。


 その時だった、窓硝子(ガラス)の外を見ていた俺の目に、見知った人物の横顔が目に入った。

「止めてくれ!」

 俺は御者ぎょしゃに声を掛け、馬車を停車させる。

「なんだ、どうした」

 いぶかしむヴォージェスにびを言い、もう一人連れて行ってもいいかと尋ねる。

「ああ、構わないが」


 俺は返事を聞くと馬車を飛び降り、道をこちらに向かって歩いて来る人物に、手を振りながら駆け寄る。


「オーディス……団長! どうしたのです? 今、そこの馬車から降りて来たように見えましたが」

「話は馬車の中で、行くぞ。レーチェ」

 急に現れた俺に手を引かれ、訳も分からぬと言った様子で馬車に乗り込むレーチェ。

「いったい、なんなんですか……」

 レーチェはそう言いながらも、少し楽しそうだ。


「こちらは?」

 賢者ヴォージェスが尋ねる。

 俺はレーチェを旅団の副団長だと紹介し、賢者を、元冒険者の「黒獅子ヴォージェス」だと紹介した。


「賢者の方でしたの、それに昔は冒険者だった方とは──意外ですわ。七賢者……いえ、今は五人の賢者でしたわね。全員、管理局の人間で構成されているものとばかり思っていましたわ」

 管理局の権力集中に対する不信感を持っていた彼女にとって、ヴォージェスの様な肩書きの賢者が居るとは、予想外だったろう。


 この大柄な賢者と俺達は、馬車の中で旅団についてや、西海の大地の海底神殿で起こった事などについて話し合い、街道をかなりの速さで駆ける馬車に揺られながら、目的地に辿たどり着く。




 そこは、外周区に用意された工事現場だった。高い岩の壁に囲まれた外周の一部がひらかれ、外側へと地面が突き出している。


 すでに吊り橋をける準備が整っていた。

 大地の外側に、もう一つの大地が見える。

「西海の大地」は、もうすぐそこにあった。


 縄を取り付けた弓矢が放たれ、対岸に居る人々の間に縄が通され、その縄を移動して行く鋼索ワイヤーロープ。ズルズルと伸びて行くそれは、橋の上部に固定され、中央に馬車の通る道、両脇に人が通行できる、欄干らんかんの付いた吊り橋が──二つの大地の間に渡された。


 橋の床板を震わす様な歓声と拍手。

 双方の大地から人々が競って吊り橋を渡って行く。


 新しい時代を迎えた市民達が歌をうたう。

 これからの幸福と希望を願う歌。


「皆、本当に嬉しそうで──なんだか、こちらも嬉しくなってしまいます」

 レーチェがつぶやくのが聞こえる。

 様々な苦痛や困難を乗り越えて、俺達が成し遂げたのは──こうした日を、待ち望んでいたからだ。

 俺は、そう答えていた。

「ええ、……ええ。そうですわね」


 賢者ヴォージェスは俺の肩をぽんぽんと二度叩くと、民衆の中へ大きな声を響かせる。

「聞け! フォロスハートに住む者達よ! 今日という日を忘れるな。──そして、覚えておいて欲しい。多くの冒険者や、それを支える多くの人々の尽力じんりょくによって、今日という日が迎えられた事を! 我らの見る先にある西海の大地。そこに居る神を助け、こうしてフォロスハートに新たな土地を接合する為に尽力した、一番の功労者を紹介しよう」


 そう言って、賢者ヴォージェスは俺の背中を、たくましい太い腕で押し出した。


「この男、錬金鍛冶師にして、旅団をまとめ上げる冒険者のオーディスワイアが、海の神との契約を定め、フォロスハートに海から得られる恵みをもたらしてくれたのだ!」

 うぉおおぉっ、と凄まじい歓声が沸き起こる。

 まるで何かが噴火したかの様な、ビリビリと体に響く彼らの声と、打ち鳴らされる拍手の嵐。


「おいおい、俺一人でやった事じゃぁ無いぞ」

 俺は歓声に気圧けおされながら、賢者の無茶な表明に文句を言う。

 控えめに、背後でレーチェが手を叩いている。

 彼女の嬉しそうな微笑みを見て、俺は曖昧あいまいに笑い掛ける。


 これからも、冒険者を、市民を、フォロスハートを、神々を、支える日々が続きそうだ──




   ー 錬金鍛冶師の冒険のその後 第七章 方舟はこぶね大地の未来 完 ー

ここまで読んでくださった方に、まずは、ありがとうございます。

いかがだったでしょうか、最後ははしょってしまった感がありますが、なんとか毎日更新を目指して取り組み、300話までこぎつけました。


まだいくつか書かれていない(伏線の様な)部分もあり、これからの展開も考えなきゃなぁ……と考えつつ、他の小説を書かなきゃならないので、続編を書くにしても、いつになるか分かりませんし、もう毎日更新などという真似は出来ません(笑)&(震え声)。


今回で一応の完結ですが、上にも書いたようにまだ書いてないエピソードがいくつかあります。外伝に書く物もあるので、そちらも読んでもらえると幸いです。


それではまた、この物語の続編か、別の物語でお会いしましょう~~

感想、お待ちしています! ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 新しい神を迎えてここからも少しづつ広げていけるのか気になります
[良い点] 猫の表現と絡みが何とも素晴らしく、生き生きとしていて、可愛らしくて、何度も読み返したくなります。 [一言] 一気に(2日かけて)読ませていただきました。登場人(神)物も大変好感が持てて、…
[一言] ひとまずここで大きな区切りでしょうか 面白かったです 楽しませていただきました ありがとうございました 主人公が自分に逃げを許さず真摯に自分のなすべきことを考えて努力する物語は読んでて力が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ