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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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小さな蛇の願う事

次話で最終話です。

あわわわわっ、最後がだいぶ、はしょった感じになったら──ごめんなさい!

区切りの良い300話にこだわり過ぎたか……

 その日の夜には「神威しんいの台座」を納める木の箱が四つ、完成した。

 それぞれの属性に対応した装飾を施した木箱。中にはきぬ綿わたを仕込み、さかずき型の台座をそっと包み込む様にしまえる作りだ。


「ご苦労さん。明日、朝食を食べたら、管理局に持って行く事にしよう」

 ケベルとサリエもうなずいて、自分達も持って行きますと言ってくれた。

「そうだな、一人で四つの箱を運ぶのは厳しい。それでは頼む」

 木箱の中に台座を入れると、ふたをした箱を青や緑、赤に灰色の布で包み、それらを保管庫にしまって置く。

 鍛冶屋の扉を閉めると、二人の弟子におやすみを言って、宿舎へと戻る。


 薄暗い夜道を照らす、青い月火つきび

 空気は少し冷たく、肌をでる風に身を震わせながら宿舎へと帰って来た。

 玄関前の猫達の居る場所に、発光結晶の指輪付けたユナとメイが居た。……どうやら風呂から上がって、部屋に戻る前に猫の様子を見ていたらしい。


「おかえりなさい。台座の箱、完成しましたか?」

 ユナの言葉に頷きながら靴を脱ぐ。

「ああ、明日の早朝に徒弟達と管理局の方へ持って行くよ──メイ、猫は明かりが苦手だから、そっと寝かしておいてやれ」

 巣箱の中に居る子猫達は、母猫のお腹に顔を押し付けたり、丸まって顔を前足で隠したりしながら眠っている。

 ライムはまだ起きていて、俺の顔を見ると小さな鳴き声を上げ、おやすみを言った様に目を閉じた。


「さ、俺達も眠るぞ。明日も早い」

 俺は部屋に戻ると、風呂で軽く汗を流す事にし、着替えを手にして風呂場へと向かった。




 風呂を上がると部屋に戻り、髪を乾かしながら物思いにふける。


 新しい転移門が開く度に、冒険者達は──その門の先に、大きな期待と不安を抱いて、仲間達と共に旅立って行くのだ。


 今回の大地の接合……これは、それよりも遥かに大きな変化であるだろう。

 当事者となる我々にも、その変化がどれほどのものかを判断できないほどに、それはフォロスハートに新たな可能性をもたらす事になる。


 今まで、漫然まんぜんとした食料自給の少なさに、ある者はおびえ、ある者は慣れてしまっていた。これからは、そんな不安の種が、少しは解消されるだろう。

 何故だろう。明日への期待や希望が──胸の奥をざわつかせ、波立たせる。

 不安になるほどの喜びの感情。


 今までの苦労がむくわれる。そんな気持ちを感じながら、その日の終わりを──今までに無い、充実した気持ちで眠りにく事が出来た。


 *****


 波の音が聞こえる。

 なつかしい、ひどく懐かしい波の音。

 気づけば俺は、白い砂浜の上で横になっていた。


「夢……? いや、精神世界か……?」

 自分の意識を認識できる。──夢では無い。

 周囲を見回すと、小さな島の砂浜に居るらしかった。


 青々とした空と、内陸に生えた緑()しげる草木の豊かな場所。見覚えは無いが、なんとも落ち着く光景だ。

 俺は近くの岩場に行くと、体に付いた砂を払いながら岩に腰掛ける。


「私の力は、こんなにも小さくなってしまった」

 不意に、誰かの声が聞こえた。

 振り返るが、誰も居ない。


 ……ふと、白い砂の中から何かが()()()()と動いて、隣の白い石の上に、それが乗っかった。

 灰色の小さな蛇だ。


 ああ、その蛇には見覚えがある。こんなに小さくは無かったが。この蛇は、混沌こんとん領域りょういきで戦った──海の神の半身。エウシュマージアだろう。


「この小さな島。ここが今の私の力のすべて」

 その蛇は、さびしげに言った。

「しかしそれは、海の神エウシュアットアに、その力を預けたせいでは?」

 小さな蛇は、金色の眼を光らせて、チロチロと小さな舌を出す。


「うむ、それもある。しかし、私の力は本質的に失われてしまったのだ。──このままでは、お前達人間の力になってやる事も出来ない。……そこで──人間よ。私に、私達に力を貸してくれないか」

 そう言うと、蛇は象徴しょうちょう武具や、神威の台座で海の神(エウシュアットア)と、その半身である地の化身(エウシュマージア)の力を回復させて欲しいと訴えてきた。


「それは──個人的にはそうしたいのですが、後者の使用には神結晶が必要ですし──どちらにしても、管理局の方に聞かないと、俺の力だけでは、どうにも出来ません」

 なるほど、と蛇は言い、では管理局に力が回復したあかつきには、こちらの大地から転移門を作り、別の大地への扉を開く事に協力すると伝えてくれないか。と言ってきたのである。


「そうか、海のある大地から転移門を開けば……もしかすると、南の海の女神を見つける事も可能になるかもしれないですね」

 安請やすうけ合いは出来ないが、明日、管理局へ行くので──その時に、あなたの訴えを伝えましょうと返事をした。


「うむ、頼んだぞ……それと、大地の移動が順調に行えている。間もなく虚無きょむ間隙かんげきを抜けて、そちらの大地の近くに出るはずだ。直接会えるのをたのしみにしていよう……まあ、お前とは、すでに会っているとも言えるが」

 あの時の事、感謝する。この身を救ってくれた事、決して忘れぬ──蛇は心底愉しそうな、おだやかな少年の声でそう告げると、声も、視界も遠ざかって、俺は微睡まどろみの中へと引き戻された。

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