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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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神威の台座、吊り橋の建造

 完成した台座を納める木箱を作る作業は、徒弟の二人に任せる事にして、俺は台座の仕上げに入る。


 せっかく休日にしたというのに、二人の弟子達は、断りもせずに二つ返事で、その作業に取り掛かった。


 台座に細かな象徴しょうちょう的装飾を彫り込み、あらを削り、みがく。

 装飾の一部に取り付けた精霊結晶や宝石。それぞれの属性を司る神の力を表す、象徴を盛り込んだ台座。


 四つの台座を磨き終えると、二人の弟子達は、箱を一つずつ完成させたので、残りは明日の夕方までに用意する事にして、夕食を宿舎で食べる事にした。


「まだ夕食には少し早いから、俺も何か料理を作ってやろう」

 そう宣言し、台座と箱を保管庫の中にしまい、鍛冶屋の扉を閉めて宿舎へと向かう。




 宿舎の庭では、エウラにカムイ、カーリアやメイが訓練をしていた。

 カーリアは、メイから基本的な格闘の技術を学んでいるらしい。

 カーリアの一撃に頼る動きは、攻撃が当たる敵には有効だが、かわされた場合に、それを補う動きが出来ないのだ。

 今はそうした欠点を補うべく、防御や反撃の基礎を学んでいた。


 初めて彼女カーリアが宿舎に来た時の事を思い出す。

 その時もメイに、ボロボロになるまで稽古けいこを付けさせられたと聞いている。


 旅団員達は変わらず、これからの冒険に対して真摯しんしに取り組む姿勢を貫き通し、訓練にはげんでいる訳だ。


 すべては己と、それを支える仲間達、いてはフォロスハートの為に。

 冒険を辞めた俺も、彼らと気持ちは一緒だ。だからこそ、海のある大地を手に入れられるというのは、あまり表だって喜びをあらわにはしていないが、フォロスハートの住人にとって、大きな始まりの一歩になる。


「大地がつなげられれば、その日は記念日になるでしょうね」

 リトキスが言っていた事を思い出す。

 祭りがおこなわれるかもしれない。

 物資の少ない窮状きゅうじょうを脱した記念日に、その事を喜ぶ祭り。


 管理局内でも大童おおわらわだった。

 フォロスハートに海のある大地が接合される──これが大事にならない訳が無い。


 新たな大地と、新たな神を迎え入れる。

 凄い事が起ころうとしているのだ。

 誰もが、その瞬間を心待ちにしている。

 わくわくとした、気持ちを揺さぶる高揚感こうようかんを隠しながら。




 調理場に来ると、リトキスとレンネル、エアネルの三人が調理を始めるところだった。


「おう、すまないが、二人増える事になった。俺も協力するから、よろしく頼む」

 察しの良いリトキスは「お弟子さん達ですか」とたずねてきたので「そうだ」と応える。


 塩漬けにした跳躍大鰐ジャーガナックの肉を取り出し、適当な大きさに切った物を、玉葱たまねぎ馬鈴薯じゃがいもと一緒にいため、味付けした料理。


 後はふかしたいもつぶした物に、大鰐おおわにの肉と玉葱を微塵みじん切りにした物を混ぜ込み、平たく──()()()にした物に、小麦粉や卵、パン粉を衣にして油でげる。


「おいしそう」

 いつの間にか、すぐそばにメイとユナが立っていた。

「おう、カーリアの訓練はどうだった?」

 少女メイは少し考えると「前よりは、ぜんぜん良くなったよ」と言って、揚げ立てのコロッケをつまみ食いしようとする。


「くぉらぁっ、──食堂に行ってろ。しっしっ」

 メイを追っ払うと、ユナが彼女の腕を引っ張って食堂へ連れて行く。


 その日の夕食。

 食卓に集まった仲間達。

 食後に出された蜂蜜はちみつ漬けの、小さな柑橘類かんきつるいの実。

 甘酸っぱい。


 明日の予定──というか、数日の予定が話し合われた。

「それでは『西海の大地』が接合される次の日まで、冒険は休みといたしましょう」

 レーチェが告げ、皆が、それぞれの言葉で返事を返す。


 これはうちの旅団に限った話では無さそうだ。

 今日の夕刻前には、管理局から一斉いっせいに「新たな大地を接合する」話しが成され、掲示板にその事が貼り出されると、街中が大地の接合に向けて、記念すべき日を見届けようと、フォロスハートの西側──ウンディードのある方角──の、その外周区へ集まりそうな活気にあふれていたらしい。


「とは言っても、全員で押し掛ける訳にもいかんだろ」

 もうすでに管理局によって道は統制され、吊り橋を建造する為の資材や、人員が優先的に外周区へ向かったようだ。


「もう、半分以上建造が進んでいるらしいですよ。半日で資材を組み上げて、持ち運んで行き、外周区でおもな物を組み立てているらしいですね」

 そうアディーディンクが言う。


 俺の提供した鉄線綱(鋼索(ワイヤーロープ))も、多くの錬金鍛冶師の協力を取り付けて、全体の七割以上が完成しているとか。


「それは凄いな。もしかして、ミスラン以外の錬金鍛冶師にも協力させているのか?」

「ええ、他の四都市の管理局が主導しゅどうして、()錬金鍛冶師に、作業に当たらせているそうです」

 それは……管理局も本気の本気。

 全力で、この事業に力を注いでいるのだ。


 二日後には、と言っていたが、彼らは一日で吊り橋を開通させる気でいるらしい。

 まあ、それほど長い吊り橋では無い。大勢の人員が力を合わせれば、成しげられるだろう。


 俺とケベルとサリエは、神結晶の増幅装置である「神威しんいの台座」を納める箱を作る為、鍛冶場に戻る事になった。

 明日の早朝に各都市へ台座を送れるように、という気持ちになったのだ。


 多くの錬金鍛冶師達が、吊り橋造りに参加しているのに、俺達だけ──のんびりしている訳にはいかない。


「今日中に作ってしまおう」

 俺も鍛冶場に着くと、用意された木の板に、装飾を彫り始めた。

柑橘類は「金柑きんかん」様な物を想像──変な色をしてたりして(笑)

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