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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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神結晶と精霊力

いよいよ明日、完結予定。

まあ、華々しい結末とか、そんなのではないので、あしからず。

 神結晶については実のところ、ずっと昔から、その効果を高める方法がおこなわれてきているのだ。


 神結晶の周りに精霊結晶を配置した魔法陣を使っての、神への精霊力の昇華しょうか作業がそれだ。結晶から、それそれの属性の精霊力を高めて、神へ奉納ほうのうする儀式──


 だが俺は、この前の、神の力を封入した四つの神結晶を、一つの台座にまとめる事で、安定し調和した状態を作った。

 実はこれこそが、神の力を、神々が張る結界を、より強力な物にする要因なのだと知った。


 例えば風の神に神結晶の力を奉納するのに使われるのは、風の精霊結晶を配置した魔法陣なのだが、そうでは無かったのだ。


 四つの力が互いの力に干渉かんしょうし、その力を高め合う。──要するに、風の神に神結晶の力を捧げる時の魔法陣にも、火や地や水の精霊結晶をもちいて、儀式を行うべきだったのである。


「それさえ分かれば、後は組み合わせる配置や、法則性を発見すれば良いだけだ」

 それについては、もうすでに、錬成台の上で何度も行ってきた、錬成法則が応用できるはずだ。

 その法則を応用したものを、神貴鉄鋼シルエヴァルリスに魔力回路を生成した台座の中に封じ込め、四つの結晶を組み込んだ台座に、魔法陣と調和する術式を組み合わせて完成する。


 こうして出来た台座に乗せられた神結晶は、奉納の儀式を通して昇華され、台座によって増幅した力が神にささげられるようになるのだ。




 鍛冶屋に着くと入り口の鍵を開け、誰も居ない鍛冶場に入り、管理局から持って来た神貴鉄鋼や、神結晶を並べ、そこに倉庫から持ち出した各種の精霊結晶と鉱石、宝石などを並べる。


 本来なら昼食を取る時間だが、胃に物が入っていると集中できないので、食事は取らないで作業に入る。


 しかし、まずは──小さな神結晶を錬成台の上で調べ、今まではえて避けていた、深い調査を行う。

 ──つまり、神結晶を消費してでも、その構造を深く追求し、探索する作業を行う。魔法や、錬金術の技術を駆使くししての解析と分解……


 この調査研究の為に、五つの小さな神結晶を消費したが、台座を使って神結晶の力を効率良く、神に献上する為の方策を手にする事が出来た。




 まずは炉に火を入れ、神貴鉄鋼を溶かして魔力結晶、四つの属性の精霊結晶の力を付与する。

 四つの属性を一つの物に付与するという、ただでさえ難易度が高い作業の上に、装飾部分を細かく造るので、より難しい作業になる。


 霊晶石で対立属性の調和を計りながら、慎重に四つの属性を付与した台座を造り出した。


 出来上がった台座は「台」と言うよりは──「さかずき」に似ている形状になった。なるべく細かい突起とっきや、複数の脚を付けないようにと考えて造っていたら、この形に落ち着いたのだ。


 それから俺は──なんと、一度も失敗せずに、全部で四つの台座を作製する事が出来たのだが、気づけば夕方近くの時間になっていた。


「終わりましたか?」

 急に、離れた場所から声が掛かる。

 そこには、テーブルを用意して、そこで書き物をしているケベルとサリエの姿があった。


 なんでも、神貴鉄鋼から不純物を取り除く為に、金鎚で叩いていた音が、二階で勉強していた彼らの耳に届き、一階に降りて来ると、俺が作業していたので声を掛けたのだが──


「まったく聞こえていないみたいで、よほど集中していたのでしょう。僕達は、ここで作業の内容を書き取りながら──終わるのを待っていましたが、まさか、こんな時間まで、ぶっ通しで作業するとは思いませんでした」

 そこまで集中していたとは……頭の中で、それぞれの台座を構築する形状や、装飾を考えながらの作業だったので、いつも以上に神経を研ぎ澄ませた結果だろうか。


 弟子達の書いた帳面ノートを見ると、事細かに作業の工程が書かれている。魔力鉱石を炉の中に投入した事や、対立する属性の結晶を金属に加える前に、霊晶石を使用する事など。

 また、気づいた事や疑問に思った事も書かれていたので、俺は彼らに、それらの内容に対する答えを教え、作業を行う上で必要な、目には見えない──いくつかの注意点についても忠告アドバイスする。


 錬成に必要なのは集中力。時に想像力。

 だが、それらを成し遂げるには、その前に、観察力が必要になる。


 これは錬金鍛冶のみならず、多くの職業で共通する事柄だろう。特に職人の仕事は、口で言っておぼえる様なものでは無い。

 手先の作業だけでも無い。

 多くの職人は、手先の器用さだけで物を作っているのでは無いのだ。


 心や魂。そういったものをふくめた、身体を有する己。

 それ(総体)が、作るべき物に向かって自らを問い、試し、考え抜き、答えをみちびき出す。

 そうした作業と結果の中に、普遍ふへん的な──己の本質が垣間かいま見えるのである。


 だからこそ、そうした創作者達は、己の産み出した物に愛着を感じ、時にほこらしく感じて喜び、時に憤慨ふんがいして──それを自ら否定する。


 ……だが、今回の俺の仕事は、そうした個人的なものを超えた、──世界の真理の一端いったんに触れるかの様な、遠大な意味合いを持つ作業であった。


 精霊の、神々の力の根源に対しての取り組みから理解したものは、世界のことわりが、必ずしも人間を許容きょようするものでは無い、という事実。


 世界の理とは、まぎれも無く──人間の為にあるものでは無く。自然界の摂理せつり秩序ちつじょ付ける、冷徹れいてつなまでの()()()()()()として存在する。

 その事実を再認識する事になった。


 俺達は、その力の恩恵おんけいを受けるべきであって、支配しようとしてはならない。


 世界とは、人間の法や尊厳そんげん埒外らちがいにあるものなのだ……

職人が「自己」を物に「投影」するというお話。

小説も同じでしょうが、敢えてそれを(意識的に)外さないとろくな物が生まれない場合も──特に、言葉を扱う場合は注意ですね。

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