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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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冒険者、黒獅子ヴォージェス

 俺も、吊り橋の建造方法について──簡単な調整案をしたりしながら、一時間ほどの会議に付き合った。


「いや、実に参考になった。改めて礼を言おう。オーディスワイアよ」

 二人の賢者は退席したが、初老の男は会議室に残り、俺とメリッサが話している所に近づいて来て、そう言った。


「いえ。ところで、あなたの名前をお聞きしても? まるで、兵士か冒険者かの様な体つきですが」

 俺の言葉に、賢者は声を出して笑い、自分は「ヴォージェス」だと名乗った。

「ヴォージェス? あの『黒獅子ヴォージェス』ですか?」

 鋭い目をした初老の男は、快活な笑顔を見せて笑い、「いかにも」と答える。


「賢者ヴォージェス様は、以前。ゲーシオンの旅団『黒獅子のたてがみ旅団』の団長だった方です。──もう、二十年近く前の事だそうですが」

 とメリッサが応じる。

「うん。俺が冒険者として活動を始めた頃に、辛うじて噂を聞いた事がある冒険者だ。その頃にはもう、現役を離れていたらしいが。大槍一本で黒獅子を三頭も狩ったという逸話いつわを聞いた事がある。──たった一人で」


 黒獅子はゲーシオンの転移門に出現する猛獣であり、その名をかんした「黒獅子の鬣旅団」は、当時のゲーシオンで一、二を争う規模の大きな旅団だ。


「かっはっは! まあ、昔の話だ。若い頃は無茶ばかりしたものよ」

 賢者ヴォージェスは、若かりし頃に冒険者として名をせ、黒獅子の鬣旅団内で小競り合いが起きた時に、それを治めた事で旅団長に選ばれ、その後数年に渡って旅団をまとめ上げた功績こうせきを認められ、引退を迎える賢者の一人に推挙すいきょされる形で、冒険者から賢者へと転職(?)したらしい。


「賢者になったとは聞いていませんでした」

「それはそうだろう。市民には、七賢者──今は五賢者だが──の名前すら知らされないのだから。少なくとも今まではな」

 権力が受け継がれる訳では無い──賢者とは、あくまで「意見をする者」なのだとヴォージェスは言った。

 様々な視点からの意見を発し、それらを纏め上げるのは、管理局の職員や、その上司という訳である。


「フォロスハートの為に出来る事をする。冒険者も、市民も、その事を第一に考えられれば──我々は、いつでも一つの答えに向かって邁進まいしんできるのだが」

 そんな事を口にすると、彼は軽い咳払せきばらいをした。

「そんなごとは、ひとまず置いて──お前は、()()()()()()()()()()()()のではないか? 神殿から管理局の方に、神結晶と神貴鉄鋼シルエヴァルリスが送られて来ているぞ」


 メリッサですら、まだ耳にしていない事を教えてくれるヴォージェス。

 おそらく、彼の耳となる者が管理局内に居るのだろう。


「そうでしたか、早いですね。──さすが神殿の仕事だ」

 俺のつぶやきに、賢者は何か言い掛けて口を開いたが……「そうだな」とだけ答えると、俺の肩に手を置いた。


「それでは、お前にしか出来ぬ仕事を頼んだぞ。大地の接合の事は、管理局や他の錬金鍛冶師に任せておけ。──それと」

 ヴォージェスは肩に置いた手を離し、こう言った。

「西海の大地での働きに感謝しよう。『黒き錬金鍛冶の旅団』──覚えておこう」

 そう言って立ち去ろうとする賢者に、俺は声を掛ける。


「あ──、その。旅団の名称、変更するかもしれないです。『白金はっきんの』とかに」

 大柄な賢者ヴォージェスは肩をすくめて「古い風習だな、まだ残っていたのか」と口にする。

「最近では、旅団の格を表すのに二つ名を付けたりする様な旅団は、少ないらしいぞ。初めから期待を込めて『金の』と付ける事も増えたとか──まあ、問題は旅団の『名』では無く、『質』の方なのだが」

 そんな会話をし、俺の後ろではメリッサが旅団の名の変更を耳にして──何か思案していた。




 俺はメリッサと共に、管理局の神殿関連の仕事を請け負う部署に顔を出し、「黒き錬金鍛冶の旅団」てに送られて来た神結晶や、神貴鉄鋼を受け取った。

 かなりの重さだが、なんとか持ち運べそうだ。


 管理局の外へ向かう道を歩いていると、メリッサが言う。

「この短期間で『錬金鍛冶の旅団』は多くの成果を上げました。私としても、早い段階から注目していた旅団なので、鼻が高い気持ちです。名前が変わっても、これからも()()()()()()()()()()ね」

 彼女は、そう言い頭を下げるが──俺は、思わず突っ込んだ。


「まてまて、よろしくってなんだ」

「もちろん、新技術の開発や、旅団の運営の事ですよ。これからは、上級難度の転移門での活躍が多くなるのでしょうから。()()()()()()()を期待していますよ」

 彼女はにっこりと、不穏な笑みを浮かべる──俺は、思わず「あ、うん……」と生返事なまへんじで返してしまった。


 計算高い彼女の事だ。また素材の提供などを申し出て、その見返りに何か仕事をさせる気なのだ……


 一抹いちまつの不安を感じながら管理局を出ると、俺はその足で鍛冶屋へと向かう。


 大地をつなぐ吊り橋が完成するのを願いながら。神々の力を増幅させる──神結晶の効果を引き上げる台座の研究に入ろうと、その作業への思索へ集中を開始する。

ヴォージェスさんについて、ここでは書かれませんでしたが。オーディスワイアが剣と盾を使っていたのを辞めて、大剣を使うようになった切っ掛けが──実は黒獅子ヴォージェスだという話を──外伝にでも書こうかな、とか考えています。まだまだ先の話になりそうですが。

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