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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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賢者との顔合わせ

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 メリッサの隣に座らされた俺は、資料に目を通しながら、賢者達がやって来るのを待つ。

 資料には「海の中の島」を以降、「西海の大地」と呼び名が変更される事が決まった、と書かれていた。


 西の海を治めていたという神エウシュアットアと、エウシュマージアの事も周知させるという。

 これからは、この大地は「冒険先」では無く、漁獲ぎょかくおこなう為の水産業の場として管理されるのだ。




 ──もっとも、()()()()、そう考えられていた。というだけの事なのだが──




 大地の移動に関しては、もうすでに神々が始めているらしい。

 四大神と海の神の間で交信を行い、こうしている今も、西海の大地をフォロスハートに引き寄せている最中なのだ。


 それは、真っ暗な混沌の中を、見えないつなで引っ張っている、あるいは船をいで移動させる様なものだろう。

 神の作業は分からないが、大地が接近しても、ぶつかる様な事は起こさないと、神々は請け負ったそうだ。


 二つの大地に張られた結界を結び付ける事で、それ以上離れたり、近づいたりする事の無いようにする。──もちろん多少は動くだろうが、間に架ける吊り橋が壊れるような離れ方や、接近をする事は無いだろう。




 そんな事を考えながら資料を読んでいると、部屋の奥にある扉から、三人の老人がお付きの者を従えて会議室に入って来た。

 いや、一人は老人と言うよりは──いくらか若い、初老という見た目の男だ。

 その身体は骨太で、筋骨(たくま)しい体格を青い上着と外套がいとうおおっているが、以前は冒険者や兵士をしていたのではないかとうかがわせた。


 もう一人は、真っ白な長いひげたくわえた──か細い身体の、見るからにヨボヨボの老人だった。

 彼らは向かいのテーブル席へ腰掛けると、まずは初老の男が、遅れた事をびた。


「すまない、待たせただろう。なにしろ年を取ると、頻繁ひんぱん()()()()行ってしまうものなのだ」 

 唐突な言葉に、俺達は言葉を発する事も無く、じっと三人の賢者を交互に見つめていた。

「何を言う。わし()()()()てなどおらん」

 白髭の賢者が見た目とは違った、力強い口調で反論する。


「いえ、『垂れ流している』とは言っていませんが」

 すると二人のやり取りを見かねた、もう一人の賢者が「もういい」と彼らをいさめた。


「さて、本題に入ろうか。吊り橋の建造についてだったな。──神々の言葉によると、互いの大地が接触するのは二日ほど後だという事だが、転移門を使って今日にでも、向こうの大地にも資材を運び込む作業を始めるべきだろう」

 そこで、何か意見はあるか? という風に、こちらを見る三人の賢者達。


「こちらの錬金鍛冶師オーディスワイアが持って来た物があります。こちらをご覧下さい」

 メリッサはそう言うと、俺の持って来た紙を三賢者の方に持って行くよう、ひかえていた職員に指示を出す。


「ほう、なるほど。硬い金属のなわという訳か、さすがだな。ここ最近、何度かオーディスワイアの名は聞いているが、……私がその名を初めて聞いたのは、確か『金色狼こんじきおおかみの三勇士』という肩書きであったと記憶しているが。──相違そういないか?」

 三人の中でも一番若い、初老の男がそう尋ねてきた。


「ええ──そうです。脚を負傷した為、もう冒険には出ず、今は錬金鍛冶師の仕事に専念していますが」

 そう応えると、彼は何か思うところがあったのだろうか、少し沈思ちんしした後で「そうか」とだけ答える。


「しかし、この紙に書かれている様に、錬金容器とやらに溶かした金属を流し続けて、一本の長い鉄線を作り出すのは難しいのではないか? 金属を流し込む作業を一定の量と速度で行わなくてならない」

 そう反論したのは、先ほど他の二人を諌めた老人で、この男はなかなか気難しそうな顔をしている。──一言ひとことで言えば、偏屈へんくつさが顔ににじみ出ている類型タイプの老人だ。


「それは、漏斗じょうごを使う事で可能だと考えます。漏斗の上に長い筒状の容器を乗せ、その中に溶けた金属を流し、一定の速度で決まった分量だけが流れ続ける様にすれば、後は、溶けた金属を容器に足して行くだけですから。

 ──失礼、錬金術師にとって普段から使っている道具の事なので、えて資料に書くのをはぶいてしまいました」

 そう言うと、偏屈そうな老人は、一瞬むっとした表情を見せたが、大人しくうなずいて、むっつりと口を閉ざす。


「なるほど。では、麻を使った縄を作るよう指示を出すのを撤回てっかいし、錬金鍛冶屋に、この鉄線と綱を作る作業を手配しよう」

 初老の賢者は紙にスラスラと指示を書き込むと、判を押し、そばに控えていた職員に、俺の書いた紙と一緒に手渡す。


「この紙に書かれた内容の物を、『新技術』として登録し、報酬を渡す事を約束しよう」

 彼はそう言うと、他のいくつかの案件について、おもに管理局職員らと話し合う。

漏斗じょうごは口の狭い容器に液体を移し替える道具ですね。念の為。


「西海の大地」はこの先、いくつか展開があるのですが──(伏線)物語的には大きな内容にはならない物ですので、お気になさらず(笑)。

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