旅団の今後
ここに来て新人達の人数や名前が⁉ まあ、モブ扱いなんですけどね(笑)
旅団なので、今後も増えるのだろう、という暗示みたいな演出だと思っていただければ……
宴は盛況だった。
旅団員は総勢二十三名。そこに二人の鍛冶の徒弟と、ダリア達三名の冒険者も加わっているのだ。
そう言えば新人──ニオとフィアーネを筆頭とした者達──は、あまり俺と絡んでいないので、どうも名前を忘れがちだった。
これからは冒険に出る彼らから受ける恩恵もあるだろうし、今よりも、より一層の支援をしてやる機会も増えるだろう。
新人達はニオ、フィアーネの他に六名居る。
前衛系の能力を持つ四人と、後衛の能力を持つ二人と覚えていたが、名前も覚えて行かなくてはと思い──最近、旅団員名簿を覗く機会が増えたのだった。
まずは戦士系のエクスダイン。ローレンキア。リグザミト。彼らは剣だけでなく、槍や槌、時には弓を使ったりする者も居る冒険者だ。
前衛にも後衛にもなれそうなアリスシア。彼女は力では先ほどの三名には及ばないが、魔法もそれなりに使える剣士になれそうだと、報告を受けている。
魔法使いのブラナラッハとアローレ。前者は男、後者は女の魔法使いだが──まだまだ修業中の身。
特にブラナラッハは狩人の様に弓も扱える類型の魔法使いだ。
そのうち、ウリスが火の神から教わった「魔法弓」をブラナラッハにも覚えさせると、意外な強さを発揮できるかもしれない──
まあ、勝手な期待に過ぎないのだが。
こんな風に団員達について考え、その成長の為に何が必要かなどと、自然と考えるようになった。我ながら団長が板に付いてきたと思う。
「何か考え事? 旅団長」
そう話し掛けて来たメイ。
彼女はどうした訳か、肩から麻袋を掛け、腰と結び付けたその袋の上に、青い毛の子猫を乗せてあやしている。
「子猫を構うより、食事を食べたらどうだ」
「食べてる。その為の揺り籠だから」
そう言って麻袋に乗る子猫を見せる。
「ニャァ──」
子猫は嫌がる様子も無く、麻袋の上で温和しく少女に運ばれていた。
「で、何を考えていたの?」
子猫に煮干しをかじらせながら、メイはあんまり興味の無い様子で問う。
「……旅団を立ち上げる事になった時は、どうなるかと不安だったが、我ながら良く団長を務めていると思ってな」
そっか──と、やはり上の空で応えるメイ。
「旅団長はね──良くやってると思うよ。私は二つの旅団しか知らないけど、他の皆も『前の旅団よりずっと居心地が良い』って誉めてたから」
メイは子猫を相手にしながら譫言の様に言う。
「他の皆」とは、エアネルやレンネル──後はエウラの事だろう。
そう考えると悪くはない答えだ。
メイのあからさまな態度はどうかと思うが……この少女の情操教育は、ユナやリーファだけに任せていては、いけないのかもしれない。
まあ冒険者の多くは無頓着な人間が多い。他人に繊細な配慮を示す者の方が少数派だとは思うが。
メイの元から離れ、エウラやエアネル、カーリアなどが集まって話している所へ行くと、竜狩りについての事をウリスやヴィナー、新人達数名に話して聞かせているらしかった。
彼女らの話を聞いた竜狩りの未経験者が、自分もいつかは、上級難度の転移門の冒険に行くのだ、という──強い意志を持って、日々の活動を行ってくれる事を期待しよう。
リトキスに竜狩りの話を聞こうと炉の前に行くと、そこにはレーチェとリゼミラ、アディーディンクが居て、旅団の新たな名称について話し合っていた。
「やはり『白金の』でよろしいのではないでしょうか」
「金や銀の色では無く、金属の事を示す方法も良いと思いますね。『鋼金の』などはどうでしょうか」
リトキス曰く、──鍛え上げた金──という意味の古語らしい。
「分かり辛くないか? だが、ファルガルナという響きは気に入った」
俺が横から声を掛けると、リトキスは嬉しそうに微笑む。
「そ、そうですか? でも、古い書物の中で、そうした言葉──硬い黄金──という物があると記されている文献もいくつかあるんですよ。製造方法までは載っていませんでしたが」
どうやらリトキスの中の、古書好きの魂が再燃しそうだ。あまり深く立ち入らない方が良いだろう──長い話になるに決まっている。
「それで? オーディス、あなたはどうなんです? 何か、他の案はありまして?」
おっと、お鉢が回って来てしまった。
「俺は──そうだな『星金の』なんてどうかな。造語だが」
星、という単語を知っているリトキスとレーチェには伝わったが、リゼミラとアディーには分からなかったようだ。
ちなみに「金星」ではなく、「金色の星」という意味合いの方が近い感じの言葉になる。
「金の星、ですか。それは──どうでしょう。古代世界の事を知る人にしか伝わらないのではないですか?」
レーチェの言葉に、アディーが「なるほど、そういう事か」と納得する。──どうやら「星」という単語を読んだ事があったようだ。
「正直、俺は──名前の事は、そんなに気にしていない。問題は中身──団員達にとって、旅団がどうあるべきか。そっちの方が気掛かりだからな」
リゼミラは最初から、名称が変わろうが、変わらなかろうが、気にもしない風だった。
この女にとって旅団とは、冒険に集中できるか否か、それが問題になる場所なのかもしれない。




