祝杯と旅団名の変更
今週中か、次の日曜には完結するかもしれません。
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宿舎の自室に戻り、鎧などを脱いで普段着に着替える(ライムは子猫達と一緒になって、俺の足下でじゃれついている)と、庭で始まる宴会に向かう。
──その途中、廊下の先にある食堂の方からレンネルや、ラピスが食事を乗せた皿を持ってやって来る。
「あ、お疲れ様です」
「お互いにな」
二人の背後からは、エアネルとダリア、フレジア達が大皿を運んでいるところだ。
俺達は先に庭に出ると、扉を開け放しておいた。
子猫達も一緒になって庭に出て来たので、踏まれないように、ユナやメイに庭の隅で遊ばせるよう言いつけておく。
俺の足下に居たライムを抱き上げてやると「ニャァ──」と、甘えた声を出してゴロゴロと喉を鳴らした。
そんなライムの喉を撫でてやりながら、長テーブルに皿を置いたレンネルとエアネルを呼んで、旅団拠点の二階に住んでいる新人や、鍛冶の徒弟二人を呼んで来てくれと言うと。
「新人達は、ウリスとヴィナーの二人が呼んで来るはずですが──遅いですね」
とレンが言い、徒弟の二人を呼んで来ますと、宿舎を出て行った。
「お前も行かないか」
エアの背中を押して、弟だけに行かせるなと苦言を呈する。
「はぁ──い」と気乗りしない感じで応えると、彼女も宿舎を出て行く。
俺は竜狩りから帰って来たメイや、ダリア達に声を掛け、その労を労いつつ、狩りでの活躍などを耳にし、これからの冒険の指標にしようと、考えを巡らせる。
今回の竜狩りや「海の中の島」での事件を経て、「黒き錬金鍛冶の旅団」は──大きな仕事を成し遂げたのではないかと考えていた。
竜を狩る事が出来る旅団──または、そうした冒険者の居る旅団は、総じて高い評価を得られるものだ。
我々の旅団は、すでに中堅では無く──上級の旅団としての実力を持っていると考えても問題は無い。
「名前──変えるか」
「え、『オーディスワイア』を変えるんですか? 何の為に?」
と、鍋に胡椒を投入しながらリトキスが言った。
「違う、旅団の名前だよ。『黒き』という部分をさ。もうこの旅団は、上級の冒険者の集まりになった、と言っても差し支えないだろう」
そう言うと、リトキスも「確かに」と賛同する。
「なら『金色の錬金鍛冶旅団』とでも変えますか?」
「お前、古巣になんか恨みでもあるのか」
リトキスは肩を竦め「上級旅団というと『金』を冠する事が多いじゃないですか」応える。
今度は俺が「確かに」と応える番だった。
「それでしたら、『白金の錬金鍛冶旅団』でいかがですか?」
着替えてきたレーチェが現れ、こちらの話に割って入る。相変わらずライムを見ようともしないが。
「ただ『金』とするよりも、こちらの方が私達の旅団には合っている様に思いますが」
彼女の言う意味は「金の」実力を持ちながら「銀の」階級にある、といった謙虚さを持った旅団である──という表明であるらしい。
確かに白金は銀色をしているが、謙虚さが表せるかどうかは疑わしい。
「まあ謙虚さは、旅団員一人一人の行動に掛かっていると思うが」
俺の言葉に「そうですわね」とレーチェ。
いやいや、お前の言動がそもそも──謙虚さとは無縁のものだろう。そこまで口から出掛かったが、未だにグリグリと押し付けてくるライムの頭に口を塞がれ、それが言葉になる事は無かった。
そうしているところへ、玄関の扉を開けてウリスとヴィナーが新人を連れて帰って来た。
新人達は冒険から帰って来た後で、自主的に市外訓練場に赴いて、冒険の反省を兼ねて、訓練に励んでいたという。
彼らもまた、この旅団の団員達が持つ、真剣な、冒険に対する態度を学び始めたようだ。
レンとエアがケベルとサリエを連れて来たのを確認すると、まずは各人に酒、または果物の絞り汁などを入れた杯を渡し、今回の冒険についての報告をする事になった。
「さて、今回は新人達にも冒険に本格参入してもらった訳だが、先輩に当たる旅団員の面々も、初めての『竜狩り』を成し遂げて無事に帰って来たようだ。俺や副団長達も、困難な仕事を成し遂げて、新しい大地をここ、フォロスハートと接合する約束を取り付ける事が出来た。
この旅団は確実に実力を付けてきている。そこで、今までの『黒き錬金鍛冶の旅団』を改めて、『白金の錬金鍛冶旅団』と改名するか検討している。皆も、これといった意見があるなら、俺か副団長に話してくれ。検討させてもらう。
色々と話もあるだろうが、大量に運ばれて来た料理が冷める前に食べる事にしよう。それと──庭に猫が歩き回っているから、踏まないよう注意してくれ」
そう言うと、皆から笑いが漏れる。
「──それでは……乾杯!」
皆が手にした杯を掲げたり、隣に居る者達の杯に軽く当てて飲み物を口にすると、長テーブル上に並べられた皿の前に集まったり、炉の側に置かれた深鍋の、竜の内臓料理を皿に盛って貰いに行く。
こうして過酷な冒険、または初めての冒険を乗り越えた仲間達が、一堂に会しての宴会が始まったのであった。




