大地の接合へ向けて
あれ? 昨日投稿したと思ったのに、出来ていなかった……
その後、驚いた事に──海底にあった神殿の周囲の地面が盛り上がり始め、転移門のある島から少し離れた場所に、もう一つ島が誕生する事となった。
それほど大きな島では無いが、神殿の外へ出て来た大蟹のエウシュアットアが、螯で地面を叩くと、地面の状態があっと言う間に変化し、石ばかりの土地に土が生まれ、草花がすくすくと成長すると──島全体に緑が宿り、新しい命の芽吹きに満ちた島へと変化したのだ。
空に浮かぶ陽光が、海の神の青々とした甲殻を美しく照らし出す。
大きな螯を持ち上げて二度、三度と螯を打ち鳴らすと、空に白い雲が浮かんで、霧吹きの様に細かい雨を島全体に降らせる。
海岸沿いには真っ白な砂浜が広がり、周囲の状況は見る間に変化してしまった。──まるで魔法……いや。これは魔法を超えた、神的権能の発現だろう。
「いや──、すごい変わり様だね」
リゼミラが白い砂浜に立つと、そんな感想を漏らす。
海は相変わらず穏やかで、空も蒼く晴れ渡っている。新たに浮かび上がった陸地には、新たな命に満ち、明るく輝く道を指し示している啓示の様に感じていた。
「ところで、何故この大地がある事に気づいたのか? そして、この大地と繋げたいという事であったが……どういう理由によるものか」
エウシュアットアの疑問に、俺やアディー、そして四つの属性神も加わって話し合いが行われた。
フォロスハートには人々が多く住んでいるが、塩や食料の供給に問題があり、この土地との接点を持つ事で、安定した食料の確保をしたい、という望みを訴える。
「……なるほど、わかった。そちらの大地の側へ、この大地を移動させ、物理的に繋げようと言うのだな。それは構わないが……こちらとそちらでは、微妙に気候が違うだろう。大地の周囲に張っている結界も異なるものであるだろうし──それについては、どの様に考えているのか?」
この問題については、俺が主に話を進める事になったが──あくまで、仮の話だという前置きをして──エウシュアットアには納得して貰った。
「なるほど、二つの大地の間に橋を架ける訳か。それなら、結界を二つに分け、気候などの環境も影響し合わずに済む」
「細かな部分は管理局との話し合いを通して行われるので、実際どうなるか分かりませんが……おそらく、いま説明した様な内容のものに纏まるでしょう」
地の神ウル=オギトも、互いの大地の間を空けて接続する方が良いだろうと請け負う。
「二つの大地の間に、外側に飛び出した岩場を作って、そこに橋を架けると良いだろう」
こうして、大地の接合についての相談が終わると、最後にエウシュアットアが──こんな事を言い出した。
「そういえば、一つ思い出した。──私の親しくしていた友も海の神なのだが、混沌に世界が呑み込まれる直前まで、あの者と念話で話していたのだ。もし、あの者も無事なら、フォロスハートに導いてやって欲しい。あの者は南の海を治めていた。私の管理する海とは違い──暑い、常夏の海を管理していたのだ。──そなたらの役にも立つだろう」
エウシュアットアによると、その南の海の神は女神であり、エウシュアットアやエウシュマージアと違い、強力な力を持っていたと言う。
四大神は、そうした大地を見つけたら管理局に報告しよう、と告げる。
こうして俺達は一旦、ミスランへ戻って、管理局に話を通したり、旅団の仲間達に事の経緯を説明する事にした。
*****
俺は仲間達と別れて、レーチェと共に管理局へ報告しに行く事になった。──俺の手には四大神力珠の台座がしまわれた箱があり、それはミスランの中央にある、大地を守る結界を作り出す、柱の元に預けられる事になるだろうと神々は言う。
なんでも、この台座の力で結界の力も安定させる事が出来るらしい。
元々、結界を構築する術式を応用し、神々の力を安定させる為に作り出した台座なので、そうした使い方をした方がいいのかもしれない。
「今回は本当にお疲れ様でした」
レーチェが隣を歩きながら、怪我は無いかと尋ねる。
「それは、こっちの台詞だぞ。あの混沌の毒の牙──あれを喰らった時のお前の悲鳴を聞いて、心臓が潰れるかと思ったほどだ」
彼女は無意識に肩などに触れ、痛みを思い出したみたいに恐怖に顔を強張らせる。
「お恥ずかしいですわ。あの時の事は、苦痛で良く覚えていないのです」
それにしても、そんなにも心配してくれたのですか? と俺の顔を覗き込む様に見る。
「当たり前だろ。声を掛けるのも躊躇われるくらいの、悲痛な叫びだった。──もう二度と聞きたく無い」
俺の言葉に、何故か顔を赤らめるレーチェ。
「そ、そうですか……これからは気をつけますわ」
頼む。と彼女に言いつつ、今回、無事に帰って来れたのは、神々の力のお陰だと思っていた。
なにしろ、戦いの後に「身代わりの護符」を調べてみたら、リーファ以外の護符が砕けていたのだ。
それほど混沌に操られた神エウシュマージアとの戦闘は危険な物だったのだ。──全員が生きて、五体満足で戻れた幸運に、神に感謝すると共に。仲間達を守る、新たな装備をもっと積極的に作っていかなければならない、そんな風に思うのだった。




