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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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混沌領域の決戦

 黒い大蛇は地面から頭を持ち上げると、人の高さの二倍から三倍くらいの高さになる。

 うろこは固く、黒い発光気オーラを放っており、生半なまなかな魔法や打撃では損害ダメージを与える事は出来ない。


 頭から突っ込んで来た相手の攻撃をかわすと、首から下がった触手が伸びてきて、鋭いとげかすめてくる。

 リゼミラは躱しながら、その触手を斬り落としているが、こちらは躱すのに手一杯だ。


 義足で地面を踏み損ねない様に、しっかりと歩幅を考慮して──足を運ぶ。

 ガチンガチンと金属音を鳴らして、闇の底の地面を走る大蛇。俺は、その胴体に大剣を振り下ろした。固い鱗を砕いて、重い一撃が肉まで届くと、奇怪な絶叫を発して、尻尾で俺を打ちえる。


 弾き飛ばされ、地面に叩き付けられる俺。

 だが、アディーの防御魔法と、神々のまもりのお陰で──被害はそれほどでは無い。少し痛みが残るだけだ。


 リーファが果敢かかんに攻め立て、気をまとう拳の連打で腹部を徹底的に叩く。

 気の爆発が大蛇の内部にまで届いたのか、苦痛の叫びを上げて転げ回る。


 エウラとレーチェが同時に攻撃に移った。

 彼女らの攻撃が鱗を弾き飛ばし、中の青や赤に光る肉がき出しになる。──それは、魔力の流れと混沌こんとんの発光気に包まれた、異形の性質を持つ生命体に見えた。


「しゃぁあぁっ!」

 リゼミラの破砕撃が双剣で放たれる。体ごと回転する連撃が、次々に混沌の大蛇の表面にある黒い発光気を打ち消していく。

 鱗が剥がれ落ち、皮膚ひふやぶれて、暗色紫の発光気が剥がれていく。


 大蛇──エウシュマージアは高速で突進し、前衛の三人を薙ぎ払う。

 身体から突き出た棘に傷つけられ、膝を突くリーファ。

 すぐにアディーが回復する。


 大蛇が背中を向けた時、頭の下、首の辺りから突き出ている──黒紫色に光る、大きな水晶が目に付いた。

 それは、この大蛇を支配する混沌の支配力を表しているのでは、と考え俺は、この水晶を攻撃するよう指示を出す。


「了解!」

 リゼミラがいち早く答え、素早い動きで背中に回り込もうとしたが、触手と尻尾に攻撃を受けて弾き飛ばされる。

「ちっ、……野郎っ……!」


 次に飛び込んで行ったのはエウラ。

 彼女は尻尾の攻撃をんで躱すと、大蛇の背中に乗って、その黒く光る道を走り、首の後ろの水晶を魔剣で攻撃する──


ガツン(チュイィィィン)」と奇妙な音が周囲に響く。

 水晶を打たれた大蛇が、口をパクパクとさせながら前のめりに倒れ込む。


 レーチェとリーファ、そして俺が同時に動き、倒れ込んだ大蛇の腹部や背中、水晶を攻め立てる。

 リゼミラもアディーの回復魔法を受けると、すぐに戦線に復帰し、尻尾から胴体にいたるまで、縦横無尽じゅうおうむじんに動いて、凄まじい連撃をり出し、攻撃していく。


 黒い発光気を放つ鱗が次々に剥がれ落ち、飛散ひさんする。

 剥き出しになった大蛇の肉を切り裂き、貫く。

 血の通わぬ肉体に傷を付けると、内部から暗い紫色や青色に光る──炎に似た光が噴き出した。


「鱗を剥がし、内部を攻撃するのも有効みたいだ!」

 起き上がって、尻尾を薙ぎ払う大蛇から離れたリゼミラが大きな声で訴える。


 俺は大蛇から少し距離を取った場所から、剣に気を集中し、足に溜めた気も解放して──瞬迅を使って一気に間合いを詰めると、破砕撃を大蛇の胴体に向かって叩きつける。


「ゴギュゥぁわァアァぁァッ!」

 絶叫する大蛇。その悲鳴の中に、人間の男の声の様なものが混じり始めた。──混沌にとらわれている神、エウシュマージアの声だろうか……

 だが、手加減する訳にはいかない。

 飛び散る黒い鱗や暗色の光気を見ながら、躊躇ためらう気持ちを押し殺す。


 続けてレーチェが、触手を盾で弾きながらふところに入り込み華麗な二連撃で胴体を斬り裂く。

 彼女の横から飛び出したリーファが両手で胴体を突く。

 てのひらから打ち出された気の爆発を受け、大きな蛇の身体が宙を舞う。

 後方に弾かれた大蛇の胴体から、二本の大きな腕が生え出て、地面をつかんで踏み止まった。


「変形したぞ⁉」

 リゼミラが声を上げる。

「相手は神の身体だ、光体アウゴエイデス──形がある訳じゃない。大蛇の姿は、あくまで仮の姿に過ぎない。注意しろ」


 不気味な暗青色の皮膚をした腕の先にある手には、長く鋭い爪が伸び、敵を引き裂こうと振り回してきた。

 腕にも黒い鱗が生えてきて、胴体の傷口もふさがり始め、剥がれた鱗が元に戻りつつある。


「再生するのか!」

 リゼミラの声を聞いたアディーが呪文を唱え、かさず雷撃を撃ち出した。

 手にしていた四大神力珠の力も重なって、数本の青い雷撃が立て続けに大蛇に浴びせ掛けられて、爆音と共に、黒い発光気を纏う身体から──鱗や光気が周囲に飛び散る。


 魔法は効き辛いはずだが、アディーの魔力の高さと、四大神力珠の力が魔法の効果を高め、かなり強力な威力を持って、混沌の障壁を突き破ったらしい。

 ブスブスと音を立てて煙りを上げる大蛇の身体。所々から光気を燃え上がらせ、大蛇の頭部から──鱗のかたまりがボロボロと剥がれ落ちていく。


「しゃぁあぁぁッ‼」

 瞬迅を使ってリゼミラが突っ込んだ。

 大きく長い腕や、腹部を連撃で刻み、首や頭部にまでおよぶ火の魔法剣の斬撃を、旋風つむじかぜ──いや、嵐の勢いでたたみみ掛ける。

 とてもじゃないが、接近する事は出来ない。


 リゼミラと大蛇エウシュマージアの一騎打ち。


 腕を振るって反撃してくる大蛇の攻撃を剣で弾き、その腕の一本を、振り被った二本の剣で叩き斬ると、大蛇は大きくけ反った。


「ウラァアァァッ‼」

 渾身こんしんの攻撃が十字に放たれた。

 撃ち出された二本の斬撃が、守りに入った大蛇の腕を引き裂き、大蛇の頭部にぶつかって爆発する。


「ゴワァアァァアァッ‼」

 大蛇は下顎したあごを左右に()()()()と開くと牙だらけの口内から牙を無数に撃ち出してきた。


 レーチェが盾を持って、魔力を使い切ってフラつくリゼミラを護ろうとする。

 そんな彼女の太股や肩に、鋭い牙が槍の様に突き刺さった。


「あぁあああぁぁっ‼」

 レーチェの絶叫が響き渡る。

 その牙の毒が、神経をさいなむ苦痛を与えたのだ。混沌の恐るべき侵蝕しんしょく力は、人間の神経にすら影響を及ぼす。


 通常の痛みなら、ぐっとこらえていただろうレーチェも、神経を直接攻撃するかの様な痛みに悶絶もんぜつする。

アウゴエイデス(光体)はオカルト用語です。(元はギリシア語の「光輝の形」とかいう意味からきているらしいです)

霊的に上位の存在が持つ身体──かな? 火の様に揺らめいて見える光を発している──と想像しています。

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