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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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混沌を倒す為に

臨床心理学でも、古い記憶や、子供時代の感情や(楽しかった)記憶などを呼び覚ます事で、より良い精神状態を取り戻したりする事があるそうです。

まあ、そんな感じなのかな、ここでのオーディスワイアさんの感情は。


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 ミーナヴァルズから「海の中の島」を管理している神の力や、特徴を聞いた俺は、その水の力と地の力に分けられた双神の、片方の力を増幅させる象徴しょうちょう武具を造る作業に入る。


 炉の前に腰掛けると──用意した神貴鉄鋼シルエヴァルリスを溶かす。

 ケベルが手伝いを訴えて来たが、今回の作業は象徴武具の作製なので、一人で取り組む事が求められる作業内容なのだと断った。


「急いで造らないと」

 俺は少しあせっていた。

 幸いというか、神貴鉄鋼は不純物も少なく、武器として使う訳でも無いので、鍛えあげる必要は無い。

 その分、時間を短縮する事は可能だろう。


 エウシュアットアは、かにの姿をした神だという。

 海を管理し、守護する神に力を与える──象徴を施した杖を造れと、女神ミーナヴァルズから言われた。

 象徴的には水の紋様と水晶、青玉サファイアを使用して効果を高める。


 魔力結晶と水の精霊結晶を溶かした金属に加えていく段になって、孤独な水の神の姿を思い浮かべる……

 の神は、人を救いたかったと言っていたらしい。──だが、神の手の届く所には人は存在しなかったのだ。


 人の力になろうとする神を、今度は俺が、俺達が──力になるのだ。絶対に混沌こんとんの手などに手渡しはしない。




 俺は水の──海の神を司る神の力を増幅させる象徴杖を造り上げた。

 水晶と青玉を杖の頂点に配し、波を表現した紋様などを杖に彫り込んで完成させた。この杖があれば、海の神の支えになるはず──


 次は、仲間達の武器に「対混沌攻撃力」を付与する作業に入る。


 鍛冶場の片隅かたすみにある錬成台は二台用意している。──徒弟達も作った武器や防具に錬成台を使って、初歩的な強化錬成を行っていたが、彼らに他の作業をしてもらう。

 ケベルとサリエに、いくつか錬成して欲しい物があり──彼らには、それを作るよう指示を出す。


「悪い、急ぎの用が出来た。──しかも、錬成が終わったら、俺も冒険に出なきゃならんらしい」

 唐突な言葉にケベルもサリエも首をかしげる。

 来客があったわけでも無いのに、いったい誰から言われたのか、と思っているのだろう。


 錬成台の横に置いてある作業台の上に、剣や手袋グローブを置き、素材保管庫から素材──混沌鉄鋼アディスヴァルドや、混沌爪と牙も用意する──が。


「しまった……混沌鉄鋼が──ギリギリだな。どうするか……」

 混沌鉄鋼が、もう残りわずかになっていた。

「ケベル。悪いが、管理局の『技術班』のある建物に行って、メリッサから混沌鉄鋼などをもらって来てくれるか。今……手紙を書く」

 少年ケベルは「分かりました」と即答する。


 簡単な手紙に「海の中の島」に居る神に危機的状況が迫っていて、それを退しりぞける為に協力する事になり、素材が必要なので提供して欲しい、と書いておき、それをケベルに持たせた。


「では、よろしく頼む。俺は一度、宿舎に戻って、俺の武器と防具を取って来るわ」

 鍛冶場の留守るすはサリエに任せ、すぐに行動に移る。




 鍛冶場を出ると、ケベルは管理局の方に、俺は宿舎の方に早歩きで向かう。

 まったく、急な依頼な上に、まさか俺が冒険──というか、戦いの場にり出される事のなろうとは……


「ああ、そういえば『混沌こんとんの巨獣』との戦いがあったな。くっそ、また混沌がらみとは……」

 思い出すと、またいらついてきた。あの痛み……パールラクーンの女神アヴロラに治療され、体内に入り込んだ混沌を除去じょきょする時に感じた、地獄の様な苦痛。


 その怒りがくと、その感情を力に変え、奴らをぶっ叩く方へ気持ちを持って行く。

「俺様のスゴいやつを、脳天にぶち込んでやるんだぜ?」


 生憎あいにく、俺の昔から使っている大剣は魔法の剣では無いが、気の力を増幅する「衝気増加」の効果が付与されている。

 気の力を攻撃に使うように特化した武器なのだ。


 対混沌攻撃力は、魔力とも気とも結び付けて攻撃する事が可能なので、奴らに目に物見せる──良い機会チャンスだと考える事にした。




 宿舎に入り、玄関を開けて中へ入ると子猫達が、階段前の廊下に敷いた布の上で眠っているのが目に付いた。三匹とも身を寄せ合い、丸まっている。


 自室に向かい、武器と防具を身に着けて部屋を出ると、食堂の方の通路から──ライムがトコトコと歩いて来るのが見えた。


「食堂の方には、あまり近づくなよ。悪さしたらレーチェに()()()()()ぞ」

 そう言って靴をこうとすると、ライムが俺の脚に身体をり付け、ズボンをくわえて引っ張り出す。


「おいおい、どうした? ……行くなって、言ってるのか?」

 彼女ライムの頭を、でるとライムは「ゥニャァ~~」と、不満そうな鳴き方をする。

「心配してくれてるのか、ありがとうな。でも行かなくては……仲間達だけに、危険な戦いをさせる訳にはいかないんだ」


 俺が玄関を出ようとすると、彼女は付いて来てしまった。

「お──い、ライムはれては行けないぞ。お前は子猫達を守ってやってくれ」

「ニィャァアァ──」

 なんだか悲しげな鳴き方をして、俺の後を付いて来る。

 仕方ないので、宿舎の玄関は少し開けておき、庭でライムを待たせる事にする。


「大丈夫。神様も俺達を守ってくれるんだ──心配するな。お前はそこで、俺達の帰りを待っていろ、いいな?」

 そう言って敷地から出るまで、ライムはニャァニャァと鳴き声を上げ続けていた。


 けものかんが働いたのか? 俺は今回の冒険には、いつも以上に気を付けてのぞもうとちかった。

 ここで帰らぬ人となる訳にはいかない。

 まだまだ俺には、やらなければならない事があるのだ。




 鍛冶場に戻って来ると、まず仲間達の武器に「対混沌攻撃力」を付与する強化錬成を始める。

 素材はギリギリ、失敗はしたくは無い。

 慎重に──だが、急いで作業に掛からなければ……時間に猶予ゆうよは無い。


 俺は、一つ目の錬成に混沌の牙なども使って強化を施し、二つ目の錬成も問題なくやりげた。凄く集中してきている。


 これから戦いに臨もうとしているせいか、感覚が……新鮮な感覚がよみがえってきた様に感じている。それはまるで、古い感情のからがれて、新しいきとした感情に生まれ変わったみたいな感覚だった。


 研ぎまされた戦いへの感覚が、錬成に臨む俺の背中を押してくれている。──そんな風にも感じている。

 次々に錬成を成功させていると、そこへケベルが帰って来た。


「早かったな」

「ええ、走って戻って来ました。管理局の──メリッサさんが、すぐに素材を手配してくれて──早く届けるように言ってくれたんです」

 よし、と俺は応え、ケベルにも礼を言って、自分の武器にも対混沌攻撃力を付与する──


 それらの作業が終わると、奥の部屋にそれらを運び、鍛冶場の奥の部屋で神──ミーナヴァルズに呼び掛ける事にした。

書き忘れていた「象徴武具作製」部分を冒頭に追加しました。

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