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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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大顎獣竜の討伐(リトキス視点)

 眠る大顎獣竜ボアヴァーケルの腹部や喉を同時に攻める──その役割を担うのは、エアネルとレンネル。そしてカムイの三人。

 ダリアは少し離れた場所で待機してもらう。


 ユナは後方で魔法を掛ける用意を。カーリアの二人は、前衛の三人の背後から魔法剣を発動する準備をしている。


 エアネルが、足下に落ちていた枯れ枝をんでしまい、音を立ててしまう。

 それが逆に合図となり、三人は、ほぼ同時に攻撃へと行動を起こした。


 腹部にエアネルの槍と、レンネルの剣が突き刺さる。──しかし、分厚い皮にはばまれて、致命傷ちめいしょうにはならなかったようだ。


「ブシュァァ──ッ!」

 苦痛から息を吐き出した竜の喉を、カムイが剣で引き裂いた。……しかし、こちらも皮一枚を断ち切ったのみで、大きな被害ダメージを与える事は出来ずにいた。

 大顎獣竜は脚をばたつかせ、尻尾しっぽを使って身体を起こす。


「さがれっ!」

 僕は前衛に、そう声を掛けて、カーリアと共に魔法の刃を展開し、立ち上がった竜の側面から同時に、火属性の爆裂剣を撃ち込んだ。

 林の木々を震わす大きな爆発が起こり、竜の身体は近くの岩と木に倒れ込む。


「グギャォオォッ‼」

 ぶうん、と音を立てて大きな尻尾がぎ払われる。

 短いが、鋭い爪の付いた前足で木をつかむと、横倒しになりそうな体勢を強引に立て直す大顎獣竜。

 ドスン、と足を地面に叩きつけ、鋭い爪で地面をえぐる。


「ゴァアアァアァッ‼」

 怒りの咆哮ほうこうを上げる竜から僕達は、素早く次の行動を起こし、林の外へ脱出した。

 もちろん、ただ逃げ出した訳では無い。せまい場所で戦うよりも、戦いやすい場所での戦闘を選んだのだ。


 逃げた先の広くなった空間で待っていたユナが、全員に防御魔法を掛ける。


 ラピスとフレジアも合流したが、彼女らはおもに、外から乱入して来る他の竜種が居ないかなどを見張っているのだ。

 戦いに積極的に参加しないよう言いふくめてある。


 僕達を追って来た竜の傷ついた側面に、今度はユナの「氷槍」が三本飛んで、竜の身体に突き刺さった。深々と刺さった氷の槍が体内に冷気を送り込み、竜の動作をにぶらせる。


「ガァァアァアァッ!」

 氷槍の冷気を嫌がった竜に対し、エアとレンが接近して、その足を狙って斬り付け、突き刺す。

 二人に向かって振り下ろされた尻尾の内側を狙って、カムイが剣で斬り付ける。


 僕も彼らに続く。

 剣に今度は風の刃をまとわせると、自分の背丈の三倍以上はありそうな、竜の側面に回り込み。足と腹部を狙って立て続けに連撃を叩き込む。

 剣の斬撃と、風の魔法剣の斬撃が重なって、無数の傷を与えたが、竜は体勢を変えて、こちらを振り向き、みつこうとしてくる。


 僕は横に飛んで牙をかわしたが、横薙ぎにされた頭部に殴りつけられて、大きく弾き飛ばされてしまった。

 姿勢を低くした大顎獣竜は、大きく尻尾を薙ぎ払って、周囲を取り囲んでいた仲間達を吹き飛ばす。


 竜は、少し離れた場所に立っていたユナに狙いを付けると、のっし、のっしと彼女に近づいて行く。

 ダリアがユナを守る為に行動を起こそうとした。


「させないっ」

 弾き飛ばされたメイが、地面に片手をついて踏ん張ると、竜の脇腹目掛けて飛び掛かり、気を打ち出す攻撃をお見舞いする。

 思い切り振り下ろした拳から、爆発的な気の放出が起こり、竜の巨体を大きくぐらつかせた。


 竜は怒りの──あるいは痛みから、大きなえ声を辺りに響かせ、突如とつじょ現れた小さな少女を狙って掴み掛かる。今度はカーリアが動いた。


 大地をおおう気を剣に纏わせると、衝撃波としてそれを撃ち出す。

 辺りに響く乾いた爆音が鳴らされた。


 直後に、重い音を立てて竜の巨体が大量の血を噴き出しながら──地面に倒れ込む。


「はぁぁぁああぁっ‼」

 倒れ込んだ竜の頭部に駆け寄りながら、メイが身体に溜めた気を腕に流し込み、両拳に集中させると、竜の頭部に向かって力一杯の連撃を打ち込む。


 どすっ、どずっ、どごっ。


 そんな鈍い音が聞こえてきて、竜がぐったりと伸びてしまった。

 気絶した大顎獣竜を僕達は容赦ようしゃなく攻め立てる。


 ──固い皮やうろこを持つ大きな竜に、無我夢中で攻撃を仕掛けるエアネル。

 冷静に軟らかい部分を探し出して、的確に傷を負わせるレンネル。

 ユナは杖に魔力を集中させると、尻尾の付け根を狙って斬撃を数回に渡って撃ち出し、尻尾を切断させる事に成功した。

 メイが動き出した竜の頭突きを受けて、離れた場所に着地する。


 だが、勝負はついていた。


 僕とカーリアが、再び火の魔法剣を使って挟撃きょうげきしたのだ。

 凄まじい火力に挟まれた竜は、魔法に強い抵抗を持っているとはいえ、強力な力に挟まれて、その場に倒れ込み、そのまま絶命して動かなくなった……


 *****


 焼け焦げた竜の皮膚ひふや鱗、それらをけて竜を解体する素材回収屋。

 その様子を興味深そうに見ている仲間達。

 全員、大きな怪我は無かったが、カムイが尻尾に弾き飛ばされた時にあばらを痛めたみたいだ。


 初陣ういじんだったが、全員が積極的に戦う姿勢を見せ、勝利したのは大きな経験になる。

 それは僕も良く知っている──危険な戦いを乗り越えた時、大きな自信と、確かな技術や精神面の向上を感じられるのだ。


 僕も素材の回収を手伝う事にした。

 心臓や脾臓ひぞうなどに造られる、竜の体内からまれに得られる竜結晶や竜秘石などを求めて、腹を切り裂いて、その中を探る──凄まじい血の匂いに包まれながら、僕達は懸命にその作業に取り組んだ。


 解体の様子を離れた場所で見ていた三人の女冒険者──ダリアとフレジア、ラピス達が何かに気づいた。

 彼女達は僕に合図を送ると「あっちは、私達に任せてください」とラピスが言って、武器を手に駆け出して行く。


 こちらからは見えないが、林のかげから竜が近づいて来たのが見えたのだろう。

 彼女らも、このまま手ぶらで帰る訳にはいかない。そんな気持ちがあるはずだ。


 たった三人でも、彼女達は──高い実力を持つ冒険者なのだ。おそらく「竜棲の広原と森」に出る竜とも、何度も戦った事があるのだろう。

 自信にあふれた彼女らの後ろ姿を見送ると、僕は早めに解体作業を済ませる事に集中した。

カーリアの使った、大地の気を剣に纏わせて放つ「爆裂剣」は地属性魔法の魔法剣です。

爆裂剣は、振った剣の圧力を利用する魔法剣の攻撃の呼び名で、近距離から中距離に効果を発揮する剣技の様なものだと考えてください~


ダリア達三人が参加している部分を追記しました。

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