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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第一章 錬金鍛冶の旅団

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炎の間での大いなる火の神の姿

 俺達は裁定の間を後にした。火の神ミーナヴァルズは俺とユナ、メイの三人に、神殿付きの迎賓館げいひんかんにある客室に泊まって行くようにと言い残して去って行った。


 神殿前の広場に来ると、アブサウドが改めて謝罪を口にし話し始めた。

「まさか昇華錬成を行った錬金鍛冶師がオーディスワイア、あなただったとはな。片脚を無くしてからは、鍛冶師を始めたらしいと噂で聞いていたが。金色狼こんじきおおかみの三勇士に会うのが、この様な形になってしまったのは無念でならない」


 彼の沈痛な想いは計り知れない。俺の言葉を自らの言葉と認めた神の──その怒りを受けたのだ。彼には旅団の責任者としての自覚があったから踏み留まれたのかもしれないが、もしそうでなかったら彼は、自らの恥を己の死によって消し去ろうとしていたかもしれなかった。

「もうこの話はよそう。俺もこれからは気ままな鍛冶師の日々を送れなくなるかもしれんと思うと、無くした脚の痛みが()()返してきそうだ」


 アブサウドはその冗談を聞いても笑わなかったが、「感謝する」と一言呟き、旅団の同胞と共に去って行く。

 神殿前広場には、多くの火の神の信奉者が参拝に来ている。神殿の大きな入り口の前にある階段を上がり、大いなる炎の蛇を一目見ようと、神殿の中へ向かって行く。


「オーディスワイアさんって有名な冒険者だったのですか?」

 ユナはそう言って腕に付けた銀の腕輪に触れる。メイもうんうんと頷き、俺の話を聞きたがっている様子だ。

「一昔前の冒険者の事だ、お前らは知らなくても構わんだろう。それに俺達三人が活躍していたのはミスランでの事だからな、そんな事より──」

 と神殿の方を指し示す。


「折角だから、俺も久し振りに炎の蛇を拝んでこよう」

「さっき会いましたけどね」

「女神様、顔は見えなかったけど綺麗」

 彼女らとそんな風に話し合いながら神殿へと向かう。今回の事件の事にはもう触れたくもない、そんな感じが彼女らの態度にはにじみ出ていた。


 神殿内の通路も広々としているが、その奥にある炎の間こそ、この神殿で最も大きな区画である。

 高い天井を支える巨大な柱が円形状に立ち並び、その円形の穴の底に、赤々と燃え盛る炎が広がっている。

 だが不思議と暑さは無く、柱に刻まれた呪文が、炎の大蛇が放つ熱気を抑え込んでいるのが分かる。

 穴の底で丸まって眠っているらしい、大きな燃える蛇をおがんだり、巨大な姿に圧倒されている者達が大勢いる。


 俺達は穴の底に居る大きな蛇と、先ほど見た紅玉ルビーの仮面を付けた者が、同じ存在であると頭の中で結び付けるのに苦労していた。


 すると穴の底の炎が突如、烈しい炎を噴き上げて辺りは騒然となった。結界で穴の内と外を分けていなければ、その炎が噴き上がった時の熱で我々は発火していただろう。

 凄まじい熱とまぶしさに顔の前を手で覆い隠していると、周囲の人々がざわついている事に気づいた。


「な、なになに、なんですかぁ……!」

 そう言いながら前を見たユナが凍り付く。この熱波の中で凍るとは……などと思いながら、穴の方を見ると……目の前に巨大な燃え盛る蛇の頭があるではないか。

 威圧的な火炎のかたまりは、まるで小さな太陽の様である。


 それは炎の舌をしゅるしゅると伸ばし、鼻の穴から火を噴きながらこちらをじっと見ている。

 あまりの熱さと光量に数歩後退し、手で目を守りながら炎の神の姿を見ると、()()は口をぱくぱくと動かして、何かを喋ろうとしているらしかったが──その大きな口から漏れ出る炎と熱に体を焼かれそうになる。


「あ、あついですぅ……」

 ユナとメイは何とか踏ん張っているが、急激な温度の上昇に耐え兼ねてよろよろと後ろへ下がって行った。


「わかった、分かりました! 旅団の事は何とかしてみますから……!」

 俺が言うと巨大な炎の蛇は「ふしゅうぅぅ──」と鼻から炎を噴き出す。あわや俺の体は、その鼻息を浴びて──こんがりと、()()()()()()()しまうのではと思ったほどだ。

 凄まじい熱気を浴びせ掛けられ、後ろへ下がりながらその場に片膝を突き、屈み込んだのだった。


 炎の間は騒然となった。蛇の姿をした炎の神は、もう自らの寝所に戻り、炎の中で体を寝かしているが。俺やユナ達は急激な体温の上昇でふらつきながら、神殿の職員──若い神官や巫女に肩を貸されて神殿の外へ運ばれて行ったのだ。

 彼らも驚いていた。火の神が穴の上部へ顔を出す事は滅多に無い事だと興奮している。


「こんな事がしょっちゅうあったら死人が出るぞ」

 俺の悪態は彼らの耳には入らなかったようだ。ユナとメイは早々と後退していた為に体調はすぐに良くなったが、俺は広場に置かれた長椅子に横になって、ぐらぐらする頭を神官が用意した冷水の入った不銹鋼ステンレス製の器で冷やしながら──体調が回復するのを待っている。


「あの女神は俺に旅団を造れと言っておきながら──俺を殺す気なのか⁉」

 死にかけた俺だったが、何とか調子が戻って来ると盛大に悪態を吐いた。長椅子の前で冷水を飲みながら俺の回復を待っていた二人が笑い合う。


 俺は頭を冷やしていた冷水をゆっくりと時間を掛けて飲みながら、何とか自力で歩けるようになると、巫女に案内されて迎賓館へ向かう事となる。

火の神の大きさを表現する文を入れてみました。「威圧的な火炎の塊は~」という一文です。

あとは、モ○ハ○風の「こんがりと、上手に~」と少し変えてみました(笑)。

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