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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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改良した義足の完成

今回も脱線──


必要なのは身体ではなく、心が重要。というお話。

 鍛冶場に戻って来た俺は、すぐに小獣人族エルニスに加工してもらった、跳躍大鰐ジャーガナックけんを細切りにしてひもにした物を取り出すと、椅子に腰掛けて思案する。

 横に足を移動させた時に踏ん張りが利かないのは、体の重量を支え──足に掛かる負荷を押さえ込み、踏みとどまる事が出来ないからだ。


 人型の足だから駄目なのか? 足の先を二つの靴を十字に重ねた様な形にするか……

 そんな事も考えたが、一つひらめいた。


 義足の中の体重を支える部分を、弾力を持ってしなやかに受け止める部分と、横に体重を掛けた時に、真っぐになって棒の様に動かない芯を義足の中に入れてみよう。

 義足の中で負荷の分散をはかり、立ち上がる時には、それを元の状態に戻す部分を腱紐で作れば──何とかなりそうだ。


 様々な素材の強度や柔軟性を考慮して、設計図に「これ」だという物を書き込む。


 今までの物も、弾性紐で支えとなる心棒を引き上げるなどして、負荷に耐え得る形を取ろうとしたが──こちらの方が、少々重くなるだろうが、より体重移動をおこなやすくなるだろう。設計図を見直し、いくつかの修正を加えてから、必要な材料を集め、物によっては新たに錬成する。


 義足の構造を考えると改めて、生き物の脚は(それ以外の部分も)良く出来ているなと考えさせられる。無意識に身体の均衡バランスを整えようと働く機能もだが。

 体幹たいかんなどの仕組みをかせればいいのだが──それほど細かな物を作るのは、魔法との兼ね合いになるだろうか? 神経と、錬成で作った神経をつなげる様な──あまり、想像したくは無いな。


 き出しになった(疑似ぎじ)神経が、切断した脚から生え出ている。──想像するだけで、失った脚の部分がかゆくなりそうだ。


 運動感覚の神経だけを使うとしてそれほど正確な疑似神経作るのは、今の技術では──無理だろう。

 それに外科手術が必要になる。一度、傷口の閉じた膝下を切開して、神経を引っ張り出す羽目になりそうだ……止めておこう。


 詰まるところ、義足が体重を支えつつ、しっかりと地面に足の裏を固定し、踏み留まってくれればいいのだ。

「大丈夫、いけるはずだ」




 俺はすぐに作業に入った。

 炉を使い、軽硬合金フラウレグムで外装部分を作り上げると、それに合わせた内部の部品の作製に入る。

 中に入れて体重を支える部品を、獣の骨と、黒銀鉄鋼グラズアルドの二つで作った心棒を使って作る事にし、それらを繋げ、引き戻す部分に腱紐を利用する。

 内部の構造は──かなり細かい物になった。


 内部の細かな部品を固定し、他の部分と接触するなどして、機能をさまたげないよう工夫するのに手間取ってしまう。


 一度、組み上げた物を持ち上げ、足先が下がり過ぎないかどうかを確かめ、足の裏が地面に接触し易い状態になるまで調整する。


 これだと言う物が出来た時には相当な時間が経過してしまった(作業の合間に徒弟達の作業を見たり、強化錬成の仕事をこなしたのもある)。


 試しに試作品を付けて、足を大きく開いて前に一歩踏み出したり、素早く横に動いたりして動作を確認する。


「おぁっ」

 何度目かの体重を掛けての運動をこなしていると、義足の中の部品が外れてしまった。

 危うく床の上で股裂きをしてしまいそうになる。──危険だ。


 危うく()()()()となりかけた俺は、義足の中を確認し、どの部分が外れ、負荷がどこに一番掛かり易いかを調べて、その部分を重点的に補強する。──問題がありそうな場合は、素材自体を別の物に変更する。


 費用コストが掛かっても構わない。どうせ売り物では無いのだ。

 もしこの義足が、あらゆる可動に耐え、大剣を持っても平気なようだったら──俺は、()()()()()()()()()()()()()

 ふと、そうした事が頭をぎる。


 冒険者としての自分は──すでに死んだと思っているが、今から身体を鍛えて、現役に返り咲く──それも悪くは無いだろう。しかし、あまり現実的では無い。

 いざという時は、自分も戦える準備はしておくが、冒険者としての自分は、やはり「終わった人間」なのだ。気持ちが、心が、情熱を持って取り組める状態には戻らないだろう。


「出来た……」

 かなりの負荷を掛けても体勢を崩しにくく、素早い動きにもある程度、対応可能な義足が完成した──


 俺は、鍛冶場に置いてある、大きく重い大剣を手にしてみた。

 重い剣を振り上げ、振り回す。右足の義足で踏ん張ると──やはり、義足では持ちこたえられなかった。膝下がガクンと落下する感覚。


「あたたたた……」

 義足は通常の脚と違って、筋肉で姿勢を制御する様な働きは出来ない。結局、踏ん張りが利かないのだ。


 だが、以前から使っていた義足よりは、だいぶマシになった──それは確かだ。


 俺は新しい義足で立ち上がると、そのまま作業に戻り、義足の予備や部品を作製しておく事にした。

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