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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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海底へ向かう一同(エウラ視点)

 転移門先は晴れた空。

 いや、この大地には──大抵たいていの大地がそうであるように──雲自体が無いのかもしれない。


「管理局の者です」

 と、いきなり待ち受けていた人に声を掛けられた。

 若い管理局員二人が、動きやすそうな格好で立っている──彼らは挨拶あいさつをすると、海岸に舟が停めてあると言い、そちらへ向かって歩き始める。


 今回のパーティは私以外、皆しっかりとした人達だ。落ち着きがあると言うか──数々の冒険に出ているリゼミラさんとアディーディンク……アディーさん。この二人は別格だ。

 これから海底に向かうのを楽しんでいる雰囲気ふんいきすらある。


 レーチェさんとリーファさんは、緊張した様子もあるが、努めて冷静だ。


 私は──どちらでも無い。


 緊張していると言われれば、緊張しているかもしれないが、海底に向かうのを楽しんだり、恐れたりする気持ちはかない。その先に神が居ると聞かされても、あまり現実味が無いというか──

 危険な神が居るとは──私は考えていないのだ、たぶん。


 この大地には海ばかりで、危険な生き物も居ないと言う。そんな大地の管理者が、危険な存在だとは思えなかったのだ。

 あまりに楽観的らっかんてきな考えかもしれないが。


「エウラさんは、どう思いますか?」

 急にリーファさんにたずねられた。

「えっ、何がですか?」

 レーチェさんの両手に旅団長から渡された箱があり、その中にある物を通じて四大神が現れるというのだが──


「この『四大神力珠の台座』には、神の力が宿っていると考えると、恐れ多くて……」

 レーチェさんが言う。

 リーファさんが、それなら私が持って行きましょう。と言うと、レーチェさんは「いえ、わたくしの役目ですから」と言うのだ。


「レーチェさんに預けておいていいのではないですか? 私達はレーチェさんと、その木箱の中身を守りながら行きましょう」

 レーチェさんはうなずいた。




 舟のある場所まで来ると、私達は舟に乗り込んだ。十人乗りくらいの小さな舟。

 アディーさんが先導して、管理局の人達がかいを使って舟を進める。

 しばらく進むと、ふと奇妙な感覚になる。──四大神力珠──よくよく考えてみれば、私達の住む世界を守る神様と移動している様なものだ。


 うちの旅団長は、神々との交流もあるような事を言っていたが──凄い事だ。あまりに常識を飛び越え過ぎていて、実感が湧かなかった。

 けれど、神々の協力があると考えると──これ以上、安心できる材料は無いと思えた。私達の冒険に神様が付いて来ている。

 私が不安や恐れを抱かないで済むのは、このせいなのだろう。今はっきりと、その事に気づいた。


 指にめられた翡翠ひすいの指輪に目を落とす。

 この指輪の力に守られた事のある私には分かる。──神々の力は凄いものだと。


 光も届かぬ海の底に神が居るのなら──その神は、いったい何を思って、そこに留まっているのだろう?

 力のある神だからこそ、混沌の中でも生物の住める環境を維持できるのだから、別の場所に留まれば──いや、神の考える事は、私には理解できないだけなのだ……おそらく。

 きっと海底神殿に行けば、それらの事もはっきりするはず。




 私達は舟にられ、大海原おおうなばらを進む。

 小さな波が舟にぶつかる音。

 遠くの波間に、大きな魚がねたのが見えた。

 潮風の匂いが鼻につく。


 この海があれば、私達に塩という恵を無限に与えてくれるだろう。だからこそ、この大地を維持している神を迎え入れたい。

 管理局の職員は、そう言いながら舟をぐ。

 岸からだいぶ離れた所で、アディーさんが声を上げた。


「そろそろ、海底にある建物の近くです。呼吸器の用意を」

 いよいよだ。──けれど、今回の私達の役目は神様を送り届ける事だ。難しい仕事では無い。


 舟の上でアディーさんが防御魔法を掛けてくれた。普通の物と違って、水の圧力を防ぐ事に特化した魔法になっている、と「小さき大魔法使い(アディーディンク)」は説明してくれた。


「先に行くよ」

 リゼミラさんが武器や防具を身に着けたまま、海の中へと飛び込んだ。

 私達も、すぐに後を追い掛ける。


 海の中に入ると、アディーさんが前もって教えてくれていたように、体の周囲を魔法の保護膜がおおい、水を一切寄せ付け無い。

 私達五人の体は、どんどん薄暗い海の底に向かって落ちて行く。


 上を見上げると、青い光の中に沢山の魚の影が泳いでいるのが見えた。

 保護膜の上部から、呼吸器を使って呼吸している分の排出した空気(炭酸ガス)が、泡となって海の中に放出されている。


 周囲は、あっと言う間に暗くなり、準備しておいた発光結晶の指輪を使って辺りを照らす。

 不気味な海の暗闇に、白い影が浮いたのが見え、ぞっとした。それは沢山の足を持った、大きな──魚では無い──生き物(烏賊いか)だったのだ。

 それが、す──っと横切って行くのが見えた──一瞬いっしゅんだったが。


「下に──見えてきたよ」

 近くに居るアディーさんが声を掛けてきた。

 下に向かって五人が発光結晶の光を向ける。──そこには白い人工物が確かに存在していた。それは暗い海の底にある神殿の様に、私には見えた──


 海の底に降り着いた。

 少し離れた場所、黒い大きな岩に挟まれた場所に、白い石で建造された建物がある。

 海の中にあって、壁や柱が少しも汚れていない。


「どうやら建物の周辺は、空気の膜で覆われているみたいだ」

 アディーさんが神殿を見て言う。


 間違い無く、そこには何らかの存在がるのだ。


 私達は慎重に、暗闇の中を進んで──神殿へ向かって行った……

エウラは烏賊を見た事が無いんですね~

都市ウンディードになら烏賊型の生き物が出現する転移門もあるかもしれませんね。

ちなみに鯨型の生き物は──ゲーシオン(地の属性に関係する転移門が多い)に出ます……(ニヤリ)

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