表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

275/585

転移門前で(ユナ・エアネル・カムイ視点)

 転移門のある広場で「竜棲の広原と森」に行く私達のパーティと、「海の中の島」に向かう班は別れ、互いの冒険の成功と団員の無事を願い合った。

 転移門をくぐるのに、これほど緊張したのは生まれて初めての事だ。


 私の「竜素材を使った杖や防具を手に入れたい」という発言をメイにしてしまった事から、急に話は進み──気づけば本当に竜を討伐とうばつしに出向いてしまっている。


 大きな転移門の前には、昨日のうちにリトキスさんが手配していた、素材運搬(うんぱん)用の荷車と、解体と運搬を行う「素材回収屋」と呼ばれる業者の人達が数名来ていた。

 もちろん彼らは戦わない。

 安全な場所から私達の活動を見守り、竜が倒されると、その死体から素材や肉をぎ取って運ぶのだと言う。


 ……メイを見ると、彼女は凄くやる気に満ちあふれている感じで、首からひもで下げた銀の指輪──団長からもらった物だ──を下げている。これでも指輪の効果を得られるらしい。


「がんばろうね」とメイは言ってきた。

 そうだ──これから竜を討伐し、私はまた、大きな成長の為の一歩を踏み出すんだ。

「うん。がんばろう」

 私は精一杯強がって、答えて見せた。

 正直に言うと、まだ恐怖の方が勝っている感じだ。


 大きな転移門を前にすると、緊張で心臓が早鐘を打ち始める。

 だめだめ、こんなんじゃ、──魔法の使用にも不手際が発生しかねない。


 私は大きく深呼吸すると、覚悟を決めた。──そう心の中でつぶやいた。

 仲間を守り、竜をつ。


 その事だけに意識を集中するの。

 大丈夫、私なら出来る。強力な各属性の攻撃魔法も覚えた。仲間を補助サポートする魔法もだ。


 それに私には、強力な昇華しょうか錬成の腕輪がある。オーディスワイアさんが作ってくれた、最高の、究極の、錬成品。


 私はもう、力の前におびえる事しか出来ない子供じゃない。大きな力にあらがって、抵抗して、激しくやり返す事だって出来る。──その力がある。


 仲間を守り、竜を狩る。

 そうだ。この試練を乗り越えて、私は冒険者として大きく成長するんだ。


 *****


 ユナが緊張しているのが分かる。

 ううん、──私だって緊張している。

 もっと言えば、恐怖を感じているのだ。

 さすがの弟も、今回の相手に対しては恐れを感じている様だ。


 今はカムイと普段通りに話している。──冷静をよそおいながら、腰に付けている小物入れを確認したり、剣や盾を気にしたりしながら、何とか気持ちを落ち着けようとしている。

 私の視線に気づいたレンが近づいて来た。


「いよいよだね、姉さん。──少し怖いな」

 驚くほど素直に弟は認めた。


 それはそうだ、巨大な竜を相手に戦いを挑もうとしているのに、いつも通りの()()()()感じで来られたら、腹に拳を叩き込んでしまいそうだ。


「そうね。私も怖い」

 槍を持つ手が震える。

 でも、大丈夫。


 戦いになれば、私もレンも、全力で相手を倒しに行く。その事に変わりは無い。

 出来なければやられるだけ、その事を良く知っている。


「全員で無事に帰ろう。──もちろん、竜を倒してね」

 レンがそう言うと、少し離れた場所に居るカムイがうなずく。


 今日のカムイのそばには、ウリスとヴィナー二人が居ない。


 その代わりと言っては何だが、ユナとメイ、そしてカーリアが付いているみたいだ。あるいは、カムイが彼女らを守ろうとしているのだろう。


「今回の敵は強大だ。仲間同士で助け合って戦うんだ」と、リトキスさんも言っていた。


 *****


 がんばりましょうと、ユナが言ってきた。

「ああ」と、思わずなま返事で返し──しまった、と思う。


 今日の竜狩りにはいつもの二人が居ない。

 ウリスもヴィナーも、自分達には竜狩りは早いと、俺にも参加しないよう訴えてきたが──俺は、それを受け入れなかった。


「ここで挑戦しないと、いつになるか分からない。俺は、少しでも早く、一人前の冒険者──戦士になりたいんだ」

 そう言って俺は、今ここに居る。


 最悪、命を落とす事は──何も、竜狩りの時だけじゃない。その他の冒険でだって命の危険はあるんだ。

 俺は今回の冒険で、はっきりと強くなった自分を確認したい。ただそれだけ。


 だから、この冒険には命だって賭ける。それくらいの気持ちでいなければ、今までの努力を自分で否定する事になる。──そんな風に思う。




 しばらくすると、周囲の注目を浴びる三人の女冒険者達が広場にやって来た。

 ダリア、フレジア、ラピスの三人だ。


 彼女らは──いつも通りの様子で、これから竜と向かい合うという、特別な感じは微塵みじんも感じさせない。


 リトキスさんが「いこう」と俺達に声を掛ける。

「はい」

 俺とユナが同時に答えた。


 大きな転移門の前に立つと、膝が震え出しそうになる。


 ぐっと下腹部に力を込め、呼吸を意識する。ここを乗り越えなければ、俺に居場所は無い。そんな風に自分に言い聞かせ──俺は、足を大きく一歩、踏み出した。

ユナ、エアネル、カムイの順番に語られるそれぞれの気持ち。

共通しているのは「竜に対する恐怖」「挑戦する時の緊張」といった心理ですね。


ダリア達三人も参加する様子を追記しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ