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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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義足の改良

誤字報告ありがとうございます。

「どうしたにゃ、義足の調子が悪いのかにゃ?」

 彼女は重そうな荷物を床に降ろし、軽硬合金フラウレグムで形を作っておいた義足を品定めする様な目で見ている。


「これは前に試作で作った型だ。表面は多少汚れているが、内部の弾性(ひも)を付け替えているんだが……どうも、思った通りに可動しなくてな。もう少し細いけんを作るしかないか──」

 だが、腱を細く切って紐を作るのは難しい。と言った事を呟くとナンティルは言う。


「それ(にゃ)ら──エルニスにやらせればいいにゃ。今なら管理局の方に来ているはずにゃ。あいつらの手先の器用さは良く知っているにゃ?」

 小獣人族エルニスが管理局に? 首をかしげると、彼女は管理局の技術班に招かれたエルニスが居る事を説明する。


「たまたまボロッコスの町で、そういうエルニスに会ったにゃ。行ってみるといいにゃ」

 買い物をしてから(にゃ)。と言いながらナンティルは、大きな背嚢はいのうの中からゴソゴソと布袋を取り出す。


「『雷撃亀ライガルキン』のうろこと爪にゃ、甲羅こうらは店の方で売ってるにゃ。欲しければ持って来るにゃ?」

 俺は「いらん」と即答そくとうしたが、鱗と爪は買う事にした──雷属性を錬成強化する時に役に立つ。

 雷撃亀は鱗に覆われたゴツい足から周辺に電流を流したり、長い尻尾の先に付いたこぶ状の物で殴ってくる(しかも放電しながら)。

 ずんぐりした身体の割に機敏な奴で、尻尾から雷撃を撃ち出す事もある。


 ウンディードの転移門「水満ちる丘と川」に出現する事の多い生き物だ。出現頻度(ひんど)はそこそこだが、えてこの生き物と戦って素材をぎ取ろうとする者が少ないせいか、ミスランではなかなか手に入らない素材だ。


「毎度ありにゃ~~」

 ナンティルの嬉しそうな声を聞きながら、以前から付けている義足に履き替えると立ち上がり、管理局へ向かう支度を始める。

「おっととと、待つにゃ。まだ商談が終わってにゃいにゃ」などと言い出す猫獣人フェリエス


 今日持って来た物は、各地の生き物から採取した素材が多いらしい。早いところ管理局に居るというエルニスに会いに行きたい俺は、手早く購入する素材を決めると彼女に金を払って、素材を大量に購入した。


「は──い、ありがとにゃん」

「おう。ミスランで手に入りにくい素材なら大歓迎だぞ。一遍いっぺんに購入してやるから、少しは負けろ」

 俺がそう言うと、ナンティルは「考えとくにゃん」と、イラつく声で返答する。




 ともかく跳躍大鰐ジャーガナックの腱と予備の義足を持って、管理局へ向かった。

受付で話を聞くと、技術班の方に呼ばれているエルニスだと言うので、さっそく技術班のある建物へ向かう。


 ずかずかと建物に入り、メリッサの元へ向かった。──彼女は技術班の開発と管理に関わる二つの部署をまとめる「実務長」なる肩書きを得ていた。


「あら、オーディスワイアさん。どうしました? また新技術の提供でもして頂けるのですか?」

「いや、ここにエルニスが来ていると聞いたので、彼女らの手先の器用さを借りたくて来たんだ」

 するとメリッサの近くから声が聞こえてきた。

「呼びましたか?」

 机の上に乗った小さな引き出し棚や、山になった書類の陰で見えなくなっていたらしい。そこにはエルニスの中でも特に小柄な少女──の様な、小獣人の女が立っていたのだ。


「や、いきなり申し訳ないが、義足を改良する為に力を貸してもらえませんか」

 白い耳や髪の毛を持つエルニス。

 メリッサは、その小柄な──頭の上部から垂らした耳を持つエルニス──を「パルトラ」と紹介した。


「私に手伝いを? と、その前に。あなたのお名前はオーディスワイア言うのですか?」

 そうです。と応えると、彼女は「おお──」と声を上げる。

「やあ、あなたの事はミリスリア様から聞いていますよ。あの魔法の剣を作った、優秀な錬金鍛冶師であると。私はパルトラ、以後お見知り置きを……」

 そう言って、彼女はうやうやしく頭を下げる。


 パルトラは、ミリスリアの持っている伸縮肌着ネクタートや、エルニス向けの衣服や、装飾品を作る工場で働いている技術者だと言う。

「それで? 私にやって欲しい事とはなんでしょうか?」

 ニコニコと微笑みながら言うパルトラ。


 予備の義足と、その中に使う腱を取り出し、義足の中の構造を見せながら、細い糸状に加工した腱をねじり合わせて紐状にして、それを使って義足の均衡バランス制御機能を高めたいのだと説明する。


「なるほど、なるほど。足運びに合わせて内部の支えが、体重を分散する仕組みですか……う──ん。この腱を紐に加工するのは可能ですが、足を地面にしっかりと、特に横方向に体重を移動させたりする様な動きにも対応させるのは──難しいと思います」


 それはこちらで何とかやってみると言うと、彼女はこころよく引き受け、腱を作業台に持って行くと、小さな刃物──まるで解剖用小刀メス──を取り出し、それで腱を素早く細かい糸に加工する。

 凄い速度でそれを行うと、糸を寄り合わせて数本の紐を作り出し、彼女が持っていた小瓶の中身を紐にる。


「これを塗れば、紐は長持ちします」

 どうぞ、と渡してくれた紐を受け取り、俺は彼女に感謝の言葉を掛けた。


 彼女の作業を見て、どうやれば細い紐に加工できるか、そのコツが分かった。次からは自分で作ってみようと考え、俺は、二人の女性に別れを言って建物を後にした。

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