新たなる冒険と探索へ
何故か日常回っぽい展開に……あと二十数話以内に完結しなきゃならんのに──
翌朝。早めに起きた俺は猫達の餌を用意し(小鉢植物園に水をやり)、庭に出て神々への祈りを捧げる。
ライムや子猫達が餌を食べ、水を飲んでいる様子を見ていると──二階から、ユナとメイ、少し遅れてカーリアが降りて来た。
「おはようございます」
彼女らは挨拶を口にすると、猫達の背中や頭を撫でてくつろいでいる。
「ちゃんと眠ったか?」と尋ねると、三人とも「もちろんです」といった返事を返す。
しばらくすると、ヴィナー、ウリスも二階から降りて来て、一斉に食堂の方へと向かう。
「おはようございます」
と後ろから声を掛けられた。
そこにはカムイとレンネルが居た。
彼らも竜狩りに向かうに当たって、特別な緊張を感じている様だったが、かなり自信を持って討伐に向かう気構えでいる。少なくともそう見える、そう俺が言うと。
「開き直りです」とカムイ。
「心象訓練では、もう三体は倒しましたよ」とレンネル。
「心象訓練と、実際では違うからな。慎重に行け」
そう応えるとレンネルは「あはは」と笑い、分かっていますよ、と返事をして食堂へと向かう。
二人からは、いつもと変わらぬ様子を取り繕っているが、気合いが入っているのが伝わってくる。
それはそうだろう、これから彼らが行うものは──正真正銘の冒険。
強靱なる生き物に挑戦する戦士。その心境だ。
彼らになんらかの忠告をしてやりたいが、なにしろ俺は、子供の竜に脚を食いちぎられて冒険者を辞めた男。竜とは相性が悪いのである。
食堂に集まった俺達。
料理はリトキスやエウラ、エアネルが作っていたようだ。
例の塩漬けにした跳躍大鰐を燻製にした物などが出され、今日は義足を作りながら仲間達が帰るのを待つかと考えた。
「それでは団長から、今日という特別な日に──何か言葉を頂きましょう」
突然、食後にレーチェがそう言った。
一瞬、躊躇ったが、この際だと開き直って彼らを、それぞれの任務に送り出す事にする。
「──そうだな。『海の中の島』の海底調査に行く者達には、神々が付いているので心配はいらないぞと言っておく。
竜狩りに向かう者達には──慎重に、注意を怠らず、油断はするな、という言葉を掛けよう。脚を失ったりする危険は、油断や躊躇いから生まれるものだ。大丈夫、お前達ならやれるはずだ」
俺はそう言った言葉を掛けて、彼らを今日の冒険へと向かわせた。
旅団拠点に来たのは、俺とウリスとヴィナーの三人だけである。リゼミラやエウラ、レーチェなどは海底調査へ向かい、その他の者達は竜狩りへと向かって行ったのだ。
新人達……ニオとフィアーネ、その他の──いつだかに一遍入って来た彼ら、彼女ら。
「ウリスとヴィナーを統率者として、班を二つに分けての冒険に行ってもらおう。まずは『ただの新人』から『少しは使える新人』になってもらう」
俺はそう宣言すると、前衛と後衛の釣り合いを考えて班を決定し、「湿原と沼地」と「森林と草原」に出向き、素材の採取と獣や亜人の排除を依頼する。
「『湿原と沼地』の蜥蜴亜人は始めの頃は強敵だ、それはヴィナーに任せた方がいいだろう。『森林と草原』では──白豹くらいか? 危険な相手は」
俺の独り言を呟く様な指示に、ウリスは「灰色熊だって危険ですよ」と言う。
「うん、そうだった。──各班の指導者の指示に従うように、以上。気をつけて行け」
俺の指示を受け、団員達が空の麻袋などを携帯して拠点を出て行った。
ウリスもヴィナーも、すでに中級から上級に向けて行動を開始し始めた冒険者だ。大丈夫だろう。
希に人の言う事を聞かないのを「美徳」とでも勘違いしている若者が居るが、そう言った者には、帰って来たら厳しい罰を与えてやるから覚悟しておけ。
そんな風に言われていた奴も居たな──金色狼の旅団に居た頃の話だ。
懐かしい。あの強面団長は新人達にも容赦が無かった、甘やかしても腑抜けになるだけだ。そんな風に言っていた。
俺は──そこまで厳しくする必要は無いと考えている。人は色々だ、厳しくても耐えられる者も居れば、耐えられない者も居る。…まあ、耐えられない者に冒険者など務まりはしないだろうが。
鍛冶場の方に行くと、昨日の夜に預けられた武具に錬成を行う準備に掛かった。
これからは徒弟達にも作業を手伝ってもらう機会が増えるだろうから、念入りに作業内容を細かく覚えさせる。
午前中に入った仕事も含め、それらの仕事をこなし、昼食から帰ってしばらくは、跳躍大鰐の腱を使用した義足を作っていたが──どうも上手く伸縮しない。
予定では、足運びに合わせて足──いや、靴が地面をしっかりと踏むはずだったのだが、地面に対して平行に足の裏が動かないのだ。
椅子に座って悩んでいると──見慣れた行商人が鍛冶場に入って来たのであった……




