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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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初めての竜狩りの緊張と解放

竜狩りについても書いてみようかな……「一狩り行こうぜ!」くらいのノリで。

 ダリア達は旅団宿舎から宿屋へ帰る。

 フレジアは猫やメイ達と別れるのを嫌がって、宿屋へ戻るのを躊躇ためらっている様子だった。

 子猫をしぶしぶ手放すと、少女フレジアは手を振り、子猫と、自分と同年代の冒険者に別れを言って帰って行く。


 メイやユナ、カーリアに新しい友達が出来たらしい。──結構な事だ。

 頼もしい友人の存在が、自分をより強く、時にかしこく、時に誠実な者へと成長させる切っ掛けとなるものだ。──反面教師的な奴も、場合によっては居るものであるが。


 子猫達もフレジアが去って行く姿をじっと見つめていた。動物に好かれやすいとダリアに言われていただけある。子猫の一匹は落ち着き無く、その場をグルグルと回ってユナやメイを見上げると、またグルグルと回り出す。


 子猫達を巣箱に戻すと、各自が風呂に向かったり、歯をみがいたりして就寝しゅうしんへの支度したくを始め、明日の用意をしたりする。


 その日の夜は、微妙な緊張感を皆が感じている様子だった。


 食堂には明かりがいており、誰かの話し声がする。──様子を見に行くと、リトキスを始め、カムイやエウラとユナにメイが、明日の竜狩りについて最終点検(チェック)をしているらしい。


「……気持ちは分かるが、もう寝ろ。緊張を良い方向へ持って行く事も、戦う者には必要だぞ」

 竜を討伐とうばつするという緊張感から、不安に襲われるのも無理は無い。

 自分よりもはるかに大きな生き物に立ち向かって行くのだ、恐怖を感じないはずが無い。それは動物的本能が「逃げろ」と呼び掛けてくる事による不安なのだろう。


 冒険者は、そうした恐怖と真っ向から逃げずに立ち向かう精神力が必要だ。


 カーリアがこの場に居なかったのは、彼女が案外、図太い神経を持っている事のあかしなのではないか。

 彼女は普段はビクビクとおびえた小犬──あるいはうさぎの様なところがあるが、意外にも、大胆不敵だいたんふてきに大きな敵にも果敢かかんに立ち向かう精神を持っているのだ。


 戦士としての素質と言うよりは、無鉄砲な若者らしいおろかさ──そんな気もする。少なくともカーリアにとっては、竜と戦う恐怖よりも、まずは睡眠を取る方を選ぶ図太さがあるのは確かだった。


 *****


 部屋に戻って寝台ベッドに横になると、意識はぐに遠ざかっていった。──ふわりと体が浮き上がり、どこかへそっと降ろされる様な感覚。

 ……どうやら神々の居る精神世界に招かれたらしい。

 目を開けると、そこは昼日中の大自然が広がっていた。

 まぶしい太陽の光に、肌をでる──そよぐ風。


 草の生える草原の中にぽつんと寝かされていた俺は、上半身を起こして近くの草むらを撫でる。

 さらさらと音はするが、あまり草木の匂いはしない。


 ふと、近くにある灌木かんぼくの枝に、小さな鳥が留まっているのが見えた。その鳥は奇妙な色をしていて、青や緑がゆらゆらと揺らめきながら──様々な色を、その羽の上に乗せている。


「おめざめですか、ええ。わたくし、『鳥』でございます。ええ」

 その小さな──しかし、小鳥では無い奇妙な鳥が、やはり奇妙な調子でしゃべり出した。


「ええ、あなたはオーディスワイア。ええ、()()()()()()()()()()()()()みたいですが──まあ、ここではオーディスワイアでいいでしょう、ええ。あなたに、風の神より預かった言葉があります。ええ」

 その鳥は頭を右にかたむけ、左に傾けて。──まるで記憶を頭の中から外に出そうとするみたいな動きをする。


「オーディスワイアよ。海底への探索の事は案ずる必要は無い。お前の作った台座のお陰で、我々の力が十全に発揮はっきできるであろう。竜を討伐しに行く者らについても、不安になる必要は無いだろう。彼らなら無事に帰って来るはずだ。彼らは着実に冒険者としての実力を身に付けてきている。この竜狩りをげれば、さらに自信を持って冒険にのぞめるようになるだろう。──以前のお前が、そうであった様にな」

 風の神の言葉を一気に喋った鳥が、羽繕はねづくろいを始める。


 そう言われてみればそうだった。

 かつての俺も、竜を討伐するのは緊張し、不安に感じたものだ。


 それを乗り越えて、竜を討伐した時に、俺はさらに冒険者としての高みを目指せると確信し、次々にいくつもの転移門をめぐって、仲間と共に旅に出た。


 俺はその場で横になると目を閉じて、昔の冒険を思い出そうとした。

 竜棲の広原と森に初めて向かった緊張感と、その後の──「緑棘爪竜ダルスヴァルデン」を倒した時の興奮と歓喜。

 あの瞬間。


 緊張から解放され、圧倒的な存在感を持つ生物を打ち倒した高揚感や安堵あんど。それらがない交ぜになった形容しがたい感情。


 明日の冒険を乗り越えて仲間達が、より一層の力と自信を身に付ける事を願いながら、俺はいつの間にか眠っていた。

ここに登場する「鳥」については外伝にも(同じ固体では無いでしょうが)登場します。

古代エジプトでも死者から鳥や影の姿をしたものが飛び立つと考えられていたとか──魂をそういう風に表現(風や息に関係)するのは他の国でもよくあります。

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