手斧は硬く鋭く、骨をも断つ
気付けば四十二万文字超え、さすがに毎日投稿はキツイ……
ダリアとラピスは買い物に行くと言って鍛冶場を出て行ったが、フレジアは鍛冶場に残り、魔法の手斧を打つところを見たいと言う。
俺は材料を揃え順番に並べると、ケベルとサリエにも手伝わせて、炉の前で作業に入った。
まずは一本目。柄の部分も金属で造られた魔法の手斧だ。柄から刃の部分までの長さも考えて、二種類の金属を溶かし、混ぜ合わせる。
真紅鉄鋼は燃える紅玉色の塊となり、黒銀鉄鋼が溶けた様は、黒かったのが嘘のように真っ白に焼けている。──それは白い炎を纏った灰色の溶岩。
二つの溶けた金属を金属の桶の中で混ぜ合わせると、それを適量取り出して金鎚で打つ。
他の金属と微妙に違う反発力を感じる。
赤黒い金属から白い火が、ばちばちと音を立てて噴き出された。
金鎚で打つと、火花が凄まじい勢いで飛び散り、側で見ていたフレジアが驚いて後退する。
それを何度も何度も繰り返し、折り畳んでは、不純物を含んだ火花が飛び散らなくなるまで、丁寧に鍛え上げて行く。
鍛錬が完了すると、いよいよ魔法を込める本番だ。緊張がケベルとサリエからも伝わってくる。
ここから先は、彼らが手を貸す場面も無いのだが。
鍛え上げた合金を火挟みで掴むと、炉の中に入れ、軟らかくなった金属を叩いて打ち延ばす。正確に、無駄なく、一気呵成に手斧の形を──その金属の中から打ち出して行く。
大体の形が出来上がると、まずは硬化結晶と不銹結晶を加えて、その効果を付与する。
続いて炉の中に魔力鉱石を放り込み、合金を炉の中に入れて軟らかくすると、取り出した手斧に魔力結晶を加えて、柄から刃に至るまで、魔力回路を生成する作業に掛かる。
金床に乗せ、金鎚で叩きながら、金属の中に結晶を砕き入れる。外側が赤く中が黒みを帯びた金属が、白い火をメラメラと燃え立たせ、魔力を帯び始めると、赤く焼けた中に、青や紫に見える線──あるいは模様──が見えてきた。
続けて火の精霊結晶を砕き入れ、魔力回路に火の力を通して行く。
こうした作業の中で、どんどん集中力が研ぎ澄まされていく時がある。
「考えるな、感じろ」そんな言葉が聞こえてきそうだ。
最後に地属性に対応させる為、魔力回路に地の精霊結晶を加え、慎重に的確に作業を進める。
フレジアは真剣な表情で作業を見守り、今か今かと完成を待っている様子だ。
熱い合金の手斧に二つの精霊の力が宿ると、それを水の中に入れて冷やす──「じゅぼぼぼぼっ」と音を立てて、沸騰した水が蒸発する。
「一応の形は成形できた。この後、表面を研ぎ、錬成台で『攻撃力強化』と『対混沌攻撃力』を付ければ、そこで完全に完成だ」
俺は、その手斧をケベルに渡し、仕上げの研磨を施すよう指示を出し、二本目の手斧の作製をすぐに開始した。
二本目の作製も一回で成功した。
途切れる事の無い集中力の継続が功を奏した。──不断の努力の賜物だろう。
二本目の研磨をしている間、フレジアは嬉しそうに、完成した一本目の手斧を握り、素振りを行っている。
少女の手から刃先が朱色で、その他の多くの部分が黒い色をした手斧を奪うと、錬成台の上に乗せ、さらなる効果を付与する──二本とも攻撃力強化と対混沌攻撃力を付与する事が出来た。
柄に旋風炎竜の皮膜を滑り止めに使い、柄頭に紅玉と縞瑪瑙をそれぞれ填め込み、二本の刃をそれぞれ収める斧鞘を旋風炎竜の皮で作って、少女の腰から下げてちょうど取り扱い易い具合に調整して作ってやる。
「よし、できたぞ──」
フレジアは、二本の完成した手斧を活き活きと振り回し、鍛冶場の中に旋風を巻き起こす勢いでブンブン音を立てて回る。
「こらこら、暴れ回るんじゃない。危ないだろう」
フレジアは、お気に入りの新しい玩具を手に入れたみたいに手斧を振り回す。
「ありがとう、とっても使いやすい」
少女は腰の両脇から下げられた手斧の柄を握ると、素早く振り上げて二本の手斧を構える。
その動き一つ取っても、彼女が優れた戦士であるのは一目瞭然だった。いちいち手斧の位置を目で確認する様な真似はせず、感覚ですぐに手斧の柄を把握するのだ。
まるで何年も使い込んだ武器を掴むみたいに、淀みが一切無い。
「気に入ってもらえたみたいで良かった。魔法の刃の出し方は教えた通りだが、ここでは使うなよ? まずは人気の無い場所でやるようにな」
そう説明しているところへ、ダリアとラピスが冒険に使う道具などを買って戻って来た。
「おお──もう出来たのか。良かったな、フレジア」
代金の一部は、明日の竜狩りを手伝う事で支払う事になった。俺は三人を雇い、ラピスには素材とお金が集まったら魔法の剣を造る事を約束し、ダリアには、武器に「対混沌攻撃力」を付与したくなったら、いつでも(金を持って)言うようにと訴えておく。
「わかったよ。今度──金が貯まったらね」
こうして、また新たな魔法の武器造りを成功させたのだった。




