魔法の武器の作製依頼と「旋風炎竜」
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午後までに入った仕事は、錬成強化が数件だけだった。
中級の転移門で集めた素材を持って来た──その若者は、人生を賭けるみたいな真剣な様子で、錬成をお願いしますと言って来た。
伸び悩む冒険者が、なんとか現状を打開する策を考えて、錬金鍛冶師の所に来るのは昔からあるらしいが、伸び悩んだら旅に出て、別の転移門を巡るか、初心に返る方が適切ではないだろうか。
まあ、それを語るのは、その若者が所属する旅団の先輩なり、旅団長に当たる人物が行うべき事であろう。
俺は彼から預かった長剣に複数の強化を行って、増加指数以上の結果を導き出した。これならあの若者の手助けになるだろう。
──一休みしようと考えていると、そこへダリアとフレジア、ラピスの三人が鍛冶屋にやって来たのだ。
彼女らは、素材を入れた背嚢を背負っており、小柄な少女であるフレジアまでもが、身体に見合わぬ大きな背嚢に、多くの素材を入れて運んで来ていた。
「魔法の武器の素材、持って来たよ」
ダリアはそう言って、机の上に大量の鉱石やら精霊石、霊晶石、魔力鉱石などを取り出す。
「おいおい、金鉱石まであるじゃないか」
「それは、武器を作る代金にしようと思って」
ラピスやフレジアの背嚢からは、竜革や竜鱗、禍々しい輝きを放つ朱色の大きな角や、鋭く尖った牙も出てきた。
「これは……フレイマ転移門に出る『旋風炎竜』の素材か? まさか、三人だけで討伐したのか」
俺が驚いて口にすると、ラピスが冷静な口調で「死にかけましたけれど」と呟く。
「いやぁ──『火竜エングナス』を討伐しに行ったんだけど、出会ったのが旋風炎竜だったのさ。危険だと思ったけど、やるしかない状況だったから……」
俺は呆れつつ、閃光弾に煙幕なども使って撤退しろ、と忠告する。
「私はそのつもりでした」とラピス。
フレジアも彼女の横で、こくこく、と頷いている。
「いやぁ──、強敵を見ると、つい熱くなっちゃうんだよな」
俺は盛大に溜め息を吐き出すと、「危険だな」と呟く。
「うちの旅団の若手達も明日、初めての竜種討伐に臨むんだが。──お前らの力も借りようかと思ったが、止めた方が良さそうだ」
私達は大丈夫ですよ、とラピスがフレジアの肩に手を置いて、ダリアから距離を取る。
「あ──、わかった。悪かったよ。もう、無茶はしないからさ」
危うく親友にも、妹にも愛想を尽かされそうになったダリアが泣きを入れる。──とはいえ、まさかミスランで旋風炎竜の素材を見る事になろうとは。
「無事だったから良かったものの、あまり仲間に無茶をさせるもんじゃない」
大人しく反省している様子のダリア。
しかし、彼女に魔法の大剣を与えた後の事だ。彼女が魔法の武器を手にし、さらなる高みへ行けるのではと考えたとしても無理は無い。
新たな技術の獲得、新たな挑戦は、常に不安や緊張と共に、高揚感に溢れているものだ。
「それで? この鉱石や精霊石で、誰の武器を作るんだ?」
そう尋ねると、三人は予め話し合っていた結論を口にした。
「今回は、妹の──フレジアの手斧を。二本、作って欲しい」
「──分かった。フレジアの対応属性は……火と地属性だったか? 二本共に二つの属性を付けるとなると、その分、価格も高くなるが」
「そこは──ほら、旋風炎竜の素材と金鉱石でなんとか……」
姉がモゴモゴと口にすると、妹はお願いしますと頭を下げる。
俺は机の引き出しから紙を取り出して、それを少女に見せた。
「魔法の剣は、姉の使うのを見ただろうが、刃の部分が大きく伸び、そこから斬撃を撃ち出す事も出来るようになる。──斧は、刃が広がる形になるので二本同時に使うと、自分自身も危険になりかねないが、大丈夫か?」
手斧の刃の部分から扇状に広がる、魔法の刃の図面を見せる。形状によっては、魔法の刃の部分の大きさが、かなり変わった物になるだろう。
少女は腰に下げた手斧を手にすると、俺から離れた場所で、二本の手斧を鮮やかに振り回して見せる。
刃の先の部分が身体に向く事は無さそうだ。
「分かった、では大体の形状を決めておこうか」
今回は意匠もさる事ながら、旋風炎竜の素材を組み入れた柄と鞘となる部分も作る。そう告げて、大まかな絵を描いて少女に見せた。
「大きさは、これより少し大きいくらいで」と手斧を一本、手渡してくる。
「了解。金属は──火と地だからな……真紅鉄鋼と黒銀鉄鋼の合金でやってみるか。やや暗い刃の色になるが、強度と柔軟性を持った壊れ難い金属になる」
そう言って棚に置かれた短剣を見せる。
真紅鉄鋼と黒銀鉄鋼の合金で作った短剣だ。
フレジアは、その短剣を鞘から引き抜くと、指先で触ったり、叩いたりした後で「これでいいです」と応えた。




