海底調査前に
「明日は休みにしよう」
宿舎の食堂で、俺は仲間達にそう言った。
夕食は俺が作った。香辛料を利かせた煮込み料理だ。
生憎だが、フォロスハートで手に入る(転移門先で、と言う意味)香辛料では、カレーを作る事は出来そうに無い。
何が足らないのか……そこまで調味料に詳しい訳でも無いが、もしかすると、まだ発見されていないだけで、どこかの大地に香辛料となる素材があるのかもしれない。
「それは構いませんが、明後日の海底にある神殿へ向かう構成員は……」
今日は、リゼミラとアディーディンクも食堂に呼んである。
「リゼミラ、アディーディンク、エウラ、レーチェ、リーファに行ってもらう」
その他の団員は「竜狩り」にでも行ってもらおうか、とリトキスやメイ、カムイを見て言うと、彼らは、ただ黙って頷いて見せる。
今からそんなに気合いを入れていたら、明日の休みが持たないぞ。くつろいでいけ、俺はそう突っ込んで、明後日の探索や冒険について各々が相談するに任せた。
リゼミラとアディーは落ち着いたもので、神が居るかもしれないと知っても、動揺する様子は無い。
レーチェも、そんなリゼミラ達と親しげに話しており、明後日の探索についてアディーの防御魔法や、錬成で作った呼吸器などの事を話している。
リトキスの周囲には、竜を討伐しに行く旅団員が集まり、「竜棲の広原と森」についての情報を逐一尋ね。草食竜や小型の竜、棲んでいる生き物についての対処法を学んでいた。
「小型の肉食竜は集団で行動するものが多い。希にだけど、大型の竜に襲い掛かる場合もある。僕達人間に対しても当然牙を剥く、凶暴な生き物です」
小型の竜を排除してから戦うか、小型の竜を利用するか、時と場合に応じて戦略を立てておこう、などと話し合っている。
一応『冒険指南書』を読んで学んでいるのだろう。
リトキスから竜の行動について、あれこれと尋ねている。
頭の中で知っている事と、実際に経験して学ぶ事の違いを埋めようとしているみたいに。
「尻尾を持つ竜の多くは、尻尾での攻撃もしてくる身体の内側に入るか、尻尾の下を潜って躱すなどしましょう。尻尾を切断すれば、竜の多くは行動を制限されるので戦い易くなります」
などとリトキスが言い。続けて背の高い大型種は、脚を攻撃して倒す戦法が基本となると説明する。
集団戦、しかも魔法剣という新たな技術を有した旅団による竜との戦いは、あまり実戦が成されていない(アラストラが経験しているだけだ)。
特に我々の旅団は、団員の多くが魔法の武器を持っているのだ。今までに無い戦い方が考案されても不思議じゃない。
竜と戦う事になる前に、レンネルとエアネルの魔法の武器を作製しておきたかった。
しかし仕方が無い。
まさかこんな風に──突発的に竜の討伐へと赴く事になろうとは……難儀な話である。
危険な竜という存在と戦う──
旅団を受け持つ事になって、上級への進出というのは覚悟していたが、当事者であった冒険者時代の時よりも、より一層──緊張を強いられる思いがした。
誰も失う事無く生還させる。
閃光弾や煙幕、回復薬なども予備は大量に保管してある。抜かりは無い。
この日は各自が明日の休みを使って、簡単な訓練をした後に、身体を休める事に決まった。
海底神殿への探索と、竜狩り……二つの大きな冒険が開始されようとしていた……




