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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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四大神力珠の台座と冷暖房装置

 あらゆる感覚、あらゆる悟性をって、真摯しんしに作業に取り組んだ。

 この台座を作る作業を他の誰にも任せる訳にはいかない。そのくらいの気持ちでいた。

 神貴鉄鋼シルエヴァルリスの中に魔力結晶を加えて魔力回路を生成すると、四大属性すべてを、その回路に取り込むよううながす。


 あまりに作業に没頭しすぎた為に、時間の経過も、疲労も、熱さも感じなかった。


 四つの神結晶を神貴鉄鋼の台座にめ込む時になって初めて、自分が作っている物が完成する一歩手前にあると気づいたほどだ。


 溶けた金属を打ち、耐熱手袋で引っ張って伸ばす。そうした作業を行っていたのは確かに自分だったが、今、思い返してみても──、その時の自分が何を感じ、何を思い取り組んでいたか、あやふやな感じだった。

 ただ真剣に、設計図通りに、目の前の金属の形を変えて、台座へと作り変えてやる事だけを意識していたのである。


「完成──か」

 終わってみると、急に熱さを感じる。

 左半身が炉の方を向いていた為、身体の左側が火傷やけどしそうだ。


「大丈夫ですか」

 俺が軟膏なんこうを塗っていると、ケベルとサリエが近づいて来た。手にはそれぞれ防具を持っている。

「そっちも終わったか」

 そう問い掛けると、彼らはそろって「はい」と答え、点検チェックを求めてきた。


 二人の作った新人用防具──。これで最後の防具だが、かなりの錬成強化も成されていた。彼らが日々、研究をし、互いに意見を交換しながら──時には錬成叢書(そうしょ)や、俺の書いた錬成手記なども参考にしながら取り組んだのがうかがえる。


「うん、いいじゃないか。二人とも、よくやった」

 俺は彼らの仕事を誉めると、それを保管庫にしまって、金属板を打ち出すよう頼んだ。

「設計図は出来ている──ええと……これだ」

 机の引き出しから一枚の紙を取り出し、二人にそれを見せる。


「これは──金属の箱? 何かの装置ですか?」

「うん。冷暖房装置だな。まあここに置く物は、冷房だけで充分なんだが」

 箱の中に設置する物を冷結晶か、火の精霊石や精霊結晶に替える事で、冷房か暖房に切り替えられるのだ。


「ちなみに、冷結晶でなくとも、水の精霊石などでも代用出来る。冷結晶の方が、多少は燃費が良くなる、といった程度の違いになるだろうな」

 設計図を指しながら、二人に装置の外側の部分を作るよう指示を出し、俺は内部の細かい部品に、魔力回路による冷風や温風を発生させる機関を作る。


 しかし、その前に、完成した「四大神力珠の台座」をしまう木の箱を作る──。仮にも神の力が宿り、これを通して神が顕現けんげんするのだ。

 箱の中に綿わたきぬを使った敷物を詰めて、傷が付かないよう施す。


 台座は、頂点に赤い「火の神の神結晶」を頂き、その下に「風の神の神結晶」を配置する。その下であり、左側に位置する場所に「水の神の結晶」を、その反対側の右側に「地の神の神結晶」を配置する。──これは、ここフォロスハートを象徴的に表した配置になっている。


 各神結晶を支える神貴鉄鋼の「枝」、──あるいは「根」を心象イメージする物に宝石を取り付け、白銀色の樹木の台座に、各神を表す象徴的な浮き彫りを施すと、それは仕上げられた。

 なかなかに神々しい、それでいて自然の荒々しさに似た「不調和の調和」が、その台座には表されている。


「うん、いい出来だ」

 完成した台座を前に、自らの仕事に満足すると、それを磨いてあらを削り取り、木箱の中にしまって保管庫へ運び込んだ。




 一大作業が片付くと、改めて冷暖房装置の内部機関を作る作業に取り掛かる。


 細かな金属の板や棒に、魔力回路を作り出す作業だ。ある意味では先程の「台座」よりも難しい、細かな作業が必要となる。

 それでも、最近の俺は以前より──


 けいを傷つけてせっていた以前よりも、さらに繊細せんさいな作業感覚を身に付けて、細かな作業にも躊躇ためらう事無く、取り組む事が出来るようになっていた。


 老いてますます盛ん、などと言いたくは無いし、生涯現役などとも思わない。

 老いて身が言う事を聞かなくなる前に、大人しく去るのもまた、生き様と考えている。


 内部に入れる冷結晶と火の精霊石を用意すると、内部機関だけでテストしてみた。

 冷結晶から力を増幅した物が、小さな箱の外へ流れ出てくる。

 これを外をおおう箱と、結晶を取り入れる機関からつなげる、風の力を封入した部分を通じて外へ、冷気や暖気だんきを送り出すのだ。


 機構的には、それほど難しい物では無い。

 精霊石などから力を取り込んで、望みの現象を起こす装置を作るのに、錬金術の理論を応用した、魔法工学の技術が必要になるが。


 弟子の二人が、金属板を望みの大きさに切りそろえると、俺はそれらを組み上げて、まずは一つ目の冷暖房装置を作り上げた

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