ウリスの故郷の外周区と猫
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地の神からの手紙の内容を読んだ俺は、武具を身に着けた巨人戦士の言葉として受け取ろうとしたが──、脳裏にどうしても、銀色の大鼠が踏ん反り返っている姿がちらついて、笑いを噛み殺しながら廊下を歩いて食堂まで戻る。
食堂で冒険について話し合っていたレンネルとリトキスが、同時に「お客さんは帰ったんですか?」と言った事を尋ねてくる。
遠くからレーチェもこちらを見て、どうだったのかと目で訴えていた。
「地の神、ウル=オギトからの使者だった。前にも話した通り、海底にある神殿に行くに当たって、神々の力も借りる事になったのだ。詳細については後で話すが、海底への探索は神々の助力も得られるので、安心していい」
神様の助けが得られるなら安心だ。
そう言った声が聞こえる。
海底に居ると考えられている他の大地の神が、友好的に接してくれるとは限らない、そう考えていたのだろう。
今日もリトキスやメイ達は、跳躍大鰐と槍角蜥蜴の討伐へと向かい。
レーチェやヴィナーらが、神結晶と霊晶石を求めて、上級難度の転移門「神座す山脈」に採掘に向かうと言ってくれた。
「神座す」とあるが、「その様に感じられる」という事から付けられた名で、実際に神が居ると分かっている訳では無い。
だが、この四つほどの山が連なる山脈からは、稀少な神結晶や霊晶石が採掘できる確率が、他の場所に比べると非常に高いのである。
また、金剛石や青玉なども手に入る事も多く。レーチェに至っては、宝石の原石を掘り出すのを楽しみにしている節がある。彼女も俺と同じく、原石の魅力を理解する者なのだ。
「でも私、採掘で宝石を手に入れた事が、未だに無いんですのよ。過剰な期待はしないでおきますわ」
巡り合わせの悪さ、というものは致し方ない。
物欲感知装置が働いて、石が逃げ出しているのだろう。──むろん冗談だが。
「まあ、気を付けてな。あそこには危険な生き物や、霊獣が出現する場所でもある。リゼミラも連れて行け」
俺が忠告をすると、彼女は頷いて「分かりましたわ」と応えて、宿舎を出て行く。
俺も皆の後から拠点に向かう。
宿舎にはウリスが残り、弓矢の訓練や掃除、猫の世話などを任される事となった。
*****
彼女は子猫達から懐かれており、我々人間からすると若干、取っ付き難く、怖い雰囲気を持つウリスなのだが、猫達は、そうした雰囲気以外のものを感じているのだろう。
まるで母猫に甘えるみたいに彼女の足下に擦り寄ったり。鳴き声を上げて、盛んに気を引こうとする。
その様子を、メイが羨ましそうに見ているのであった……
「猫は昔、飼っていました。山の中に棲んでいた野生の猫ですけど。家では無く、森や山の中で飼っていた──みたいな感じでしたね」
大地の外周区近くの山や森には、まだ多くの野生動物が潜んでいるらしい。
幸い彼女らの住んでいた「ペルム」近辺の山などに、野犬は棲んでいなかったらしいが、野犬はここフォロスハートでは唯一、人を襲う可能性のある危険な生き物なのだ。
ウリスの実家から木の実が送られて来たので、今度、それを使って焼き菓子を作ってやろうと考えていた。
「森の猫には今でも、家族が餌をあげているみたいです」
家族から届いた手紙に目を通しながら、ウリスは懐かしそうに目を細める。
その足下で三匹の子猫が、彼女に遊んでもらおうと、体を擦り付けたり、鳴き声を上げたりしていた……
*****
拠点の前でリゼミラとアディーディンクと挨拶を交わして、建物の中へと入る。
拠点での打ち合わせは、すぐに決まった。
新人達の数名には武器と防具が与えられ、採掘や採取に向かってもらう。
「霊晶石が欲しい? わかったあたしも『神座す山脈』に行くよ。神結晶は──まあ、期待は出来ないね」
リゼミラの言葉通り、滅多に入手でき無い物なのだ。もし神結晶の塊を入手できたら、それだけで高品質の武器を購入するだけの額が手に入るだろう。
俺は仲間達を送り出すと、隣の鍛冶屋へと向かった。




