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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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地の神からの手紙

 大海原の上に浮かぶ小舟。

 その上で横になっていた。

 上半身を起こして周りを見る。

 どこまでも広がる海。


 この時には気づいていなかったが、俺の右脚が義足では無く、普通の脚に戻っていたのだった。

 そう、この夢の中の俺には、右脚が義足。という事実は無いのだ。


 これは別段、不思議な事では無い。

 何故なら夢とは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからだ。──それ以外の要素が出る場合もあるが(これにより、集合無意識の説が正しさを帯びる)。


 大海原に一人。

 普通なら不安に駆られたり、どうしたものかと解決策を探ったりするだろう。


 しかし、夢の中の俺は周囲を見渡した後、おもむろに小舟から海に飛び込んだ。青々とした海の中に入ると、どんどん海の底へと引っ張られて行く。

 息は苦しくならない。

 何故なら、水の中では呼吸が出来ない、という常識が無いからだ。


 俺は、どんどん深い水底みなそこもぐって行く。

 まるで海の底に居る者が、俺を招いているかの様に、暗い海の底へ……


 すると、暗い海の底に何か──明かりが見えてきたのだ。

 小さな明かりは、段々と大きな光になって──俺は、その光の中に飲み込まれて行く。


 *****


 そこで俺は夢だと気づいた。

 目覚めた感覚で、この夢は吉兆きっちょうだと感じた。

 これから海底の神殿へと、仲間を送り出す事に不安を感じていた俺に、無意識が示したのは”恐れるな”という訴えだと感じられたのだ。


 たかが夢、そう思うかもしれない。

 しかし夢が、夢を見る者の不安や迷いを断ち切る事は、往々(おうおう)にして良くあるのである。

 この時の俺も、早朝に気分良く目覚めると、小鉢植物園テラリウムに水をやり、廊下に出て猫達に挨拶すると、玄関に置かれた小鉢にも水を与え、表に出て神々へ祈りを捧げた。

 今日は、いつもよりも日差しが暖かく、秋の中でも暖かな陽気に包まれている。


水飴みずあめを使って、焼き菓子でも作ろうか」

 俺は早速さっそく、調理場へ向かうと猫のえさを用意してやり、それを持って巣箱に運ぶと、再び調理場に戻って小麦粉(薄力粉)に牛酪バター、卵を用意して──壁に掛かった泡立て器を見て、はっとする。


「そうだ、ホットケーキを作るとしよう」

 そう思い立った俺は、卵を卵黄と卵白に分け、卵白を泡立てる──、空気を含ませる様に泡立てながら、計量した水飴と卵黄を混ぜて、ヘラで切る様に(卵白の泡を潰さない様に)混ぜ合わせ、ふるいに掛けた小麦粉を()()()()()混ぜ合わせる。


「あれれ、今日の朝食担当は団長じゃありませんよ」

 そう声を掛けて来たのはカムイだ。その後しばらくしてからメイとユナもやって来る。

「おはようさん。──これはホッ、……フォーシク(パンケーキ)だ。昨日食べたのよりも、ふっくらと焼けるか試しているんだ。お前らも食べるか?」

 するとメイがいち早く「食べる──!」と声を上げる。

「いただきます」とユナとカムイも言うので、団員達の分も結局、用意する事にした。


 ユナが少量の小さな丸パンを焼き、メイが生野菜料理サラダとチーズを用意し、カムイが豚バラ肉の燻製(ベーコン)と卵を焼いた物を用意する。

 そうしたものを食堂へ運ぶと、仲間達が座って紅茶を飲んでいた。

 朝食の皿がテーブルの上に並べられると、各人の前に、それぞれの料理を乗せた皿が配られる。


「あら? これはフォーシクですか。ずいぶん厚く作られていますけど」

 レーチェの感想に、周りの者からも「昨日のよりも二倍くらい厚いですね」などと声がれる。

 牛酪と蜂蜜を掛けて食べると、それはなつかしい味がした。

 各場所から「ふわふわだ──!」などの歓声が上がる。


「昨日、海藻かいそうから水飴を錬成しておいた──少量の塩の結晶も取れたが、これは錬成で使わせてもらう。海藻から結構な量の水飴が作れるから、これも管理局に提案した方がいいな」

 おお──、と感心したらしい声が、そこかしこで上がった。


 砂糖の供給は意外にも、海から得られる物でまかなえるかもしれない。

 これは錬金術ならではの結果だろう。


 特にメイは喜びながら、蜂蜜を掛けた分厚いフォーシクを切って口に運び、満面の笑みを浮かべている。

 なんとも幸せそうな表情で癒されるが、砂糖中毒が悪化したらどうしようと、若干の不安を覚えるのだった……




 食事が終わって皿を下げ、紅茶を飲みながら、簡単な今日の予定などを交えた談笑をしていると、玄関の呼び鈴を鳴らす音が「カララン、カララン」と聞こえてきた。


「朝早くから来客とは、いったいどんな用件だろうか」

 せっかくの気分の良い朝に、おかしな訪問販売だったら(こちらの世界(フォロスハート)でそんな者が来た試しは──ナンティルくらいだ)、すぐにお引き取り願おう。


 俺は立ち上がり、仲間達には冒険の相談を続けるよう言って、玄関に向かう。

 扉を開けると、そこには神官と、その護衛が立っていた。


「早朝から失礼します。オーディスワイアさんですね? 我々は地の神ウル=オギト様の使いとして参った者です」

 茶色と緑色の目立つ神官服を着た若者が、手にした木箱と麻袋を差し出す。


「ウル=オギト様より書状をお預かりしています。こちらもどうぞ」と彼はふところから封筒に入った手紙を渡し、頭を下げて去って行った。




『  オーディスワイアへ


  私の力を秘めた神結晶を渡す。

  新たな大地との接合計画が唱えられてから、随分ずいぶんと時間が流れたものだ。それだけ今回の発見は意義深い。上手く向こうの神とも折り合いが付けばいいのだが

  何はともあれ、交渉の場に我等も、この結晶を通じて参加する為に今一度、お前の力を借りよう。


  神貴鉄鋼シルエヴァルリスの延べ棒と、報酬も送る。

  では、後は任せたぞ。


                           ウル=オギト 』

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の  ウル=オギ ト 』 の部分が変な改行になってました
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