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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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海藻から甘味料を作り出す。

 鍛冶仕事が入らなかったからと言って、ひまだ、暇だと、椅子に座って貧乏揺びんぼうゆすりしていた訳では無い。

 まずは徒弟達に、まだ作っていない新人の分の武器防具を作るよう指示を出す。

 これが完成したら、彼ら新人──厳密には新人冒険者ですら無い、()()()冒険者──を冒険に送り込むのだ。


 まあ、最初は簡単な採掘依頼や採取依頼がほとんどだろう。

 新人の中には、本当に()()素人しろうととしか言いようの無い者も居たくらいだ。もちろん徹底的に鍛え上げたから、そこら辺の新人よりはマシになっているはずだ。


 この日の俺は、神から受け渡された神結晶を飾る台座を、どういった形にするかの設計を考えて、紙に書き出しておいた。


 その後は、作っておいた魔法の剣に、錬成台を使って「対混沌攻撃力」を付与する実験をした。方法論は剣を打ち出してやった時と同じ、「混沌多色玉石」を加えるのである。

 言わば、後から付け加えるので、失敗する確率は多少増えるみたいだが、混沌素材を失うだけで済んだ。


 武器に宿る精霊力と上手く調和できないと、後から付け足そうとした混沌素材が拒絶され、力の逆流によって混沌素材が自壊するようだ。


「だが、それなら付与対象が壊れる危険は少ないだろう。安心だな」

 何度かの実験で、錬成台の上に、どういった配置で行えばいいのかが大体わかった。法則性を狂わす混沌の無作為ランダム性が発揮はっきされると、どうしようも無いが──この失敗を少なくするのにも霊晶石があれば、格段に調和させ易くなるのが分かった。


「しかし、これでまた、希少価値の高い霊晶石を使う機会が増えてしまう訳だ。──ふところが痛むな」

 もちろん俺の懐が、では無く。客の懐が痛む事になるのだが。


 これも簡単に錬成指南書に付け加える部分として書いておき、後日、管理局の技術班に持って行く事にしよう。




 そうした取り組みの最中にも、旅団の仲間達に冒険に行ってもらい、取って来て欲しい素材などを考えておく。

 リトキス達には、跳躍大鰐ジャーガナックの脚を持ち帰るように頼んでおいた。リトキスは「なんでそんな物を……」といぶかしんでいたが。

 竜退治の前哨戦ぜんしょうせんとして選んだ槍角蜥蜴ラスリザーデと跳躍大鰐の討伐だったが、少し思いついた事が出来たのだ。


 ──それはひとまず置いておき、俺は針金を作る形に、溶かした柔らかい合金を流し入れ、耐熱手袋を付けてその針金を取り出すと、金属板の上で転がしてさらに伸ばす。

 そうした作業を数十回繰り返し、多くの針金を作り出した。こんなに使う訳では無いが、物を作る時は、予備の分も一遍いっぺんに作り置きした方が効率が良い。


「何を作るんですか?」

 サリエが興味を持った様子で尋ねて来た。

「ああ、泡立て器だよ」

 柔らかい針金を曲げて、数本の同じ様な物を用意する。

 後は木の柄に付けた穴にして、根本を圧力を掛けて固定し、金属の留め金などを付けて完成だ。


「これが……泡立て器ですか?」

 サリエは完成した物を見ても、それをどう使うかが分からなかった様子である。

「卵とかを、こう──混ぜる物だ。空気を含ませる様に、浮かせて混ぜるのがコツだな」

「へえ──、どこで作られている物なんですか?」

 しまった……つい、使用していたていで語ってしまった。これでは下手な言い逃れは出来ない。


「いや、文献ぶんけんに出ていたんだ。菓子作りで使う調理器具らしいな」

 少女は素直に「そうなんですか」と、文献の情報から、すぐに実物を再現するなんて凄いです。と誉めてくれた……言えない。()()()()()これを使っていただなんて……




 そうこうしている内に鍛冶屋での作業を終え、ケベルとサリエは、新人用の武器を作り出し、残すは防具のみとなったようだ。

「お疲れさん」

 俺は彼らと別れて宿舎に戻ると、庭のすみに置かれた木樽きだるを見て思い出した。

「しまった、海藻を忘れていた」


 庭ではカーリアが子猫達を遊ばせていた。

 子猫達も伸び伸びと遊べる外の方がいいだろう。


「オーディス団長、どうしたの。樽の前で腕を組んで……」

「ん、いや──錬成容器に入れて錬成するつもりだったが、水に濡れた状態でも大丈夫か、計算していたんだ」

 少女カーリアは「何を言っているか分からない」という顔をする。


 俺は倉庫から綺麗なバケツ錬成台と錬成容器を持って来て、樽のそばで錬成する事にした。

 カーリアに、宿舎内の倉庫にしまった、ふた付きのびんをいくつか持って来てくれと頼み、こちらは錬成作業に入る。


 それほど難しい事では無い。

 海藻を溶かして塩の結晶を分離し、残された液状になった物を、甘味のある液体へと変換するだけだ。

海藻水飴かいそうみずあめ」とでも言う物が出来上がるのだ(以前の世界で作った事がある)。


 当たり前だが、味や風味に海藻を感じさせる部分は無い。分解と分離をする際に海藻の匂いなどは消えている。要するに出来上がるのは、ただの水飴だ。

 カーリアが瓶を持って戻って来た時には、水飴は完成していた。少量の塩の結晶も取れたので、一石二鳥。一挙両得いっきょりょうとくというものだ。


「これが、海藻から作った甘味料? なんか、臭そう……」

 少女は、まだ残っている、バケツに入った海藻から漂う海の匂いをいで、顔をしかめる。

「そんな物を俺が作ると思うか? まあ、舐めてみろ」

 そう言って錬成容器から瓶に移す時に、ふちに付いた液体を指ですくってみるように言う。

 彼女は躊躇ためらいがちに、それを指に付けて口に運ぶ。


「甘い……!」

 そう言って、また舐めようとするカーリアの手を押さえ。手を洗ってから、もう二つ瓶を持って来るよう言いつけて、俺は再び海藻の残りを水飴に変換する錬成を行った。

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