神結晶と神からの手紙
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宿舎から旅団拠点に移動し、リゼミラやアディーディンクらにも、若手に「竜退治」の為に必要な経験を積ませるようにと言い含める。
「ほほう、竜退治ね。──いいじゃない。やっと旅団の冒険らしくなってきたんじゃないの?」
妻の言葉に童顔の夫が「上級者旅団の……ね」と、小声で訂正する。
人の立ち上げた旅団に参加したいと加わっておきながら、まるで「雑魚旅団」扱いしていたかの様な発言に、アディーも思わず突っ込んだのだろう。
まあリゼミラも、そんな悪意があって口にした言葉では無いのだが。
俺も、いまさらこの女の発言内容に穿った見方をするつもりは無い。
「あ──、それと。リゼミラから貰った古い武器に『対混沌攻撃力』を付けておいたぞ」
するとリゼミラがこんな事を言う。
「う──ん、それなら。魔法の剣にも付けられないの? 混沌に対しても強力な効果が得られる魔法の武器とか、最高じゃん」
それについては研究中だと答えておいた。
実を言うと二回ほど試してみたのだが、二度とも失敗したのだ。
魔力回路と「対混沌攻撃力」は問題なく結び付くのだが、他の精霊力が混じると、途端に崩壊するのである。
だがこれにも、おそらく混沌結晶から分離させた物を加える事で、魔法の武器の作製方法と同じやり方で、造り出せるはずだ。
二本の武器は、カムイとレンネルが受け継ぐ事になった。──強力な武器だ。きっと彼らの助けになるだろう。
ともかく旅団の冒険の方は現役冒険者に任せ、俺の方は鍛冶屋で地道な武器の作製と錬成に励むのだ。
今日も徒弟達と共に、外部からの依頼に応えて仕事を行う。
──そう思っていたのだが、今日はあまり仕事は入らなかった。まあ、そうなのだ。そう頻繁に武器や防具を強化しに来る冒険者など、そう居ない。
さらにミスランの──いや、それ以外の都市を含めても、そんなに多くの冒険者が居るだろうか?
正確な数は管理局員でも無いので分からないが、千人程度だろう。──たぶん。いや、もっと居るのかも……?
まあ、そんな具合で、暇になる事もあるのだ。余所の鍛冶屋に行った者も居るのだろう。
「せっかくだ、俺は魔法の武器に『対混沌攻撃力』を付与する錬成を行おうと思う。──すでに二回失敗しているからな。『三度目の正直』という奴だ」
ケベルもサリエにも馴染みの無い格言だっただろう。きょとんとしている。
いくつかの作業を終わらせると、ケベル達の手も借りて、炉に火を入れ、金属──今回は真紅鉄鋼を使って魔法の武器を造る作業を行う。
普段と違うのは、二つの属性を魔力回路に付与した後に、「対混沌攻撃力」を加えるのだが、この時に「混沌多色玉石」を加えてから「混沌鉄鋼」を使うのだ。
多色玉石には各属性に影響する力があった。これを使えば、おそらく安定して「対混沌攻撃力」を付与できるはずだ──何故なら、これらの物は、同じ場所から取り出せる物でもあるからだ。
精霊の力でさえも、である。
混沌は表面上は虚ろな闇でしかないが、その深奥には隠された倉庫、あるいは図書館の様な物がある。そこに無い物は無い。
全ては混沌の中に──始まりには終わりが、終わりの中には始まりがあるのである。
金属を溶かして金鎚で鍛え、各素材を加えていく。
肝心なのは多色玉石を加えて、安定した所へ混沌鉄鋼を加える部分だ。
魔力回路の様子を見ながら、慎重かつ素早く、的確に加えて金鎚を振り下ろす。
金鎚で叩いている時に、どうやら鍛冶屋に客が入って来たようだ。俺はそちらを確認する事も出来ないが、客の応対はサリエが行ってくれた。
金属から武器を形作るまでの流れで、対混沌攻撃力を付与するやり方は上手くいった。他の属性効果とも安定しており、試しに鍛冶屋の隅で魔法の刃を展開してみたが、異常は無い。
「よ──し、上手くいった。しかし、さらに集中して作業を行わないとならなくなったな──ところで」
サリエに、客は何を依頼して行ったのかと尋ねる。
「それが──風の神様の神殿から来た神官だと言っていました。『これを見せれば分かるでしょう』と言って、金属の入った麻袋に木箱と手紙を置いて行かれましたが……」
彼女はそう言って、一緒に置いて行った金貨入りの皮袋をを手渡してくる。
かなり重い──が、それよりも、手紙とブツだ。神殿から届けられたという事は……
『 オーディスワイアへ
私の力を封入した神結晶を送る。
事態は理解している。存分に腕を振るってくれ。
追記。神結晶を生み出す時に出た神貴鉄鋼に、金貨を送る。
ラホルス 』
なんとも簡潔な手紙である。
上司が部下に金を手渡して、「これで出張先で旨い物でも食べて、気張って来い」とでも言っているかの様な、そんな感じだろうか。
問題は木箱に入った神結晶の方だ。──形だけでも確認しておこう。
後は他の三柱の神から届くのを待つばかり──とか考えていたら、水の神の神殿から使いが遣って来た。
二人の巫女と護衛だ。
彼女らは手短に、神結晶の入った木箱と、神貴鉄鋼の延べ棒を持って来て、それらをテーブルの上に置いた。
「アリエイラ様からの手紙と、報酬です。お受け取り下さい」
巫女達はそれだけを言うと、馬車で帰って行く。
ケベルとサリエに、神貴鉄鋼の延べ棒を素材倉庫に運ばせる間に、アリエイラからの手紙に目を通す。
『 オーディスワイアへ
私の力を封入した神結晶を送ります。
このフォロスハートに、他の大地が繋げられるかもしれないだなんて、とても大きな躍進です。私も力を貸す事を惜しみません。私とオーディスワイア、多くの人々の力を合わせ、成し遂げられるよう力を尽くしましょう。
追伸。神貴鉄鋼と、今回の仕事に対する報酬をお支払い致します。──がんばって。
アリエイラ 』
なんとも優しく、励まされる内容の手紙だ。
俺はそっと、胸物入れに手紙をしまうと、二つの神結晶の形を確認して、これから造るべき台座の形を考え始めた。




