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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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これからの予定を立てよう。上級編

 食堂に来ると、そこには温かな料理の匂いに満ちていた。

 それは何だかなつかしい香りだった。小麦粉の焼ける香ばしい匂いと、牛酪バターの香り。


「おいおい、この匂いは……」

 テーブルに置かれた皿の上には、見覚えのある物が置かれていた。

「ホットケ──」と言いかけて、レーチェを見ると、ジロリとにらむ彼女の姿が。

「ここっ、これはなんて言う料理かな?」

 鍋で作ったばかりのいちごのジャムを持って来たリーファが、柄付きの鍋をテーブルの上に置く。


「これは『フォーシク(パンケーキ)』です。今回は甘いジャムと合うように、砂糖で味付けしてありますが。肉などと合わせる場合は、小麦粉と卵、馬鈴薯じゃがいもり下ろした物を混ぜて焼いた物など、風味を変えた物になります」

 へえ──、と感心しつつ、蜂蜜を掛けても美味しそうだな。と言うと、リーファは「蜂蜜と牛酪を乗せる事もありますよ」と答えた。


 用意しますか? と聞いてくるので、それはまた今度にして、せっかく苺のジャムがあるのなら、それを乗せて食べようと俺は答える。


 その料理は確かにパンケーキだった。

 薄く焼き上げた生地には卵も入っているようだが、ふっくら感はあまり無い。

「泡立て器を作ろう」と俺は心の中でつぶやく。




 ユナとメイの二人は、いつもと変わらず仲良く隣り合って朝食を食べている。

 今日は朝から甘い物が出された為か、メイは先程の話をすっかり忘れている様にすら見える。


「ユナ、君はどうだ。竜と戦いたいと──あるいは、戦う覚悟はあるか?」

 唐突な質問に彼女は驚いた様子だったが、フォークを手に持ったまま真剣に考え込む。

「……竜の事を色々と調べましたが、魔法が利きにくいという事なので──不安はあります。でも、いつかは戦ってみたいですね」

 ユナの言葉を受けて、メイを見ると──少女は頷きながらパンケーキを頬張っている。


「実は、君の隣に居る娘が、ユナと『竜棲の広原と森』に行って、竜を倒しに行く。とか言い出したんだが……」

 するとユナが予想外な反応を示す。


「ああ、……それはたぶん。私が竜素材の杖と防具を欲しがったからですね。いつかは手に入れたいとは思っていますが、今すぐにという訳ではありませんよ?」

 俺がジロリとメイを睨むと、さすがに彼女はこちらのり取りを聞いて目を背ける。


「だが、まあ……いずれ竜域にも入って行かなくてはならないのは確かだ。今は、まだ早いと思うが、そのうちにな」

 ユナは元気に「はいっ」と答えたがメイは、つまらなそうな顔をする──。ただ単に、パンケーキが無くなったからかもしれなかったが。




「でも、彼女らも最近、また一段と強くなったんですよ」

 と少し離れた席からリトキスが声を掛けてきた。

「彼女らの実力なら、『緑棘爪竜ダルスヴァルデン』か『大顎獣竜ボアヴァーケル』くらいなら充分に戦えると思いますよ」


 大顎獣竜は二足歩行する大型の竜種だが、おもに人より少し大きな肉食竜を狙って狩りをする奴で、竜種の中では、それほど強くは無い。

 とげおおわれた身体と、長い尻尾を持つ緑棘爪竜は、「竜棲の広原と森」で草食竜や小型の肉食竜を捕食する狩人かりゅうどだ。

 場合によっては大顎獣竜も標的にして襲い掛かる、獰猛どうもうな竜種である。


「──そうだな。では、()()()()()()()()行かせる事にするか?」

 俺がそう言うと、リトキスは少し狼狽うろたえる。

「あ、ごめんなさい。それはちょっと……」

 その言葉を聞いたメイは、頬をプク──ッとふくらませて不平を訴えた。


 実力がともなっているとは言え、危険には変わりが無いのだ。慎重になるのは当然だろう。


「分かった、こうしよう。上級難度の『金銀鉱山と濃霧のうむ湿地しっち』に行って、そこに出る『槍角蜥蜴ラスリザーデ』と『跳躍大鰐ジャーガナック』を合わせて五体。これを倒して来たら、『竜棲の広原と森』へ行く事を許可しよう」

 俺の提案に喜んだのはメイ。ユナは「私はどちらでも……」という感じだった。


「なるほど、槍角蜥蜴(とかげ)跳躍ちょうやく大鰐おおわにですか。確かに、竜種を相手にする戦い方に似た形で挑みますからね、良い判断だと思います」

 リトキスは何故か上から目線だ。


「とにかく、リトキスは二人に竜との戦い方と、上級難度の転移門先についての知識を教える係りな。これ決定だから」

 フォークをビシッと突きつけて言うと、リトキスは「分かりました」と、あっさりと受け入れ、朝食後にユナとメイ。その他数名の団員達と相談を始める。

 どうやら俺が思っていたよりも、竜種との戦いという、危険な冒険をしたいと考えている奴が多かったようだ、この旅団には。


 頼もしい仲間達だと感慨かんがいひたりながら、パンケーキに苺ジャムを乗せて食べる俺。

 今度は俺が、卵を泡立てて()()()()とさせたパンケーキを作ってやろう。などと企みながら朝食を食べ終えるのだった。

跳躍大鰐は手足が長いワニで、若干気持ち悪い感じの生物。飛び跳ねて尻尾で攻撃したりする。

もちろん実在しませんよ〜

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