竜の棲む地
いつの間にか八十万PV到達です。
この章で完結予定ですが、百万PVいけるかな……?
朝早く、焔日が姿を見せる前に起き出した俺とライムは、結局そのまま庭で過ごした。
少し肌寒い早朝の空気だったが、俺は倉庫から敷物と毛布を運び出すと、その上に横になって、空を見上げながら物思いに耽る。
ライムはすぐに、横になった俺の胸の上に乗っかると、いつもの様に、その場に座り込んで目を閉じる。何とも落ち着いたもので、薄い毛布を脚から掛け、ライムの背中まで被せてやると、安心した様子で眠り続けてしまう。
猫は夜行性だったはずだが(地球の猫の事だが)、こちらの猫は、人間の生活に合わせてくれているのだろうか? 朝や昼間に起きている事が多い。
こちらの猫も、眠る時などに顔を前足で覆ったりして眠る様に、光に敏感な眼を持っている(光の中だと黒目が細くなるあれだ)事から、夜に獲物を狩り出していたはずである。
気のせいか、知性も高い感じがする。──いや、知性というか、察する事が上手いだけかもしれない。
こちらの考えを察する能力に長けているから、言葉が通じなくても、こうして庭に出たり。食事の用意をする時にも、躾た訳でも無いのに椅子の上で待機したりするのだ。
人間に凄く慣れた猫は、皆こんな感じになるのだろうか──いや、これは、無意識下の共通性に関するあれだ──「元型」に関係しているに違いない。
ユングの提唱した「集合的無意識」という奴だ。
猫に動物的本能を持たせる無意識領域に、「人間との共存」という部分が大きく反映された結果なのではないか。
この限りある世界では、獲物を狩って生きるには限界がある。そこで、彼ら猫や犬などの動物は無意識に、人間との共存共栄を果たす為の行動や、習性を持つようにと、変化していったのではないだろうか……
おっと、いかん。
こんな小難しい話を考える前に、錬金鍛冶師として、冒険先で仲間の助けになる物や、混沌などの敵に立ち向かう力などを強化する方法について、もっと考えなければ──
目を閉じて、「対混沌攻撃力」を強化する組み合わせなどを考えていると、俺は、そのまま眠ってしまったらしい。
*****
「団長」
すぐ近くから、誰かが呼ぶ声がする。
「団長、起きた?」
すぐ側に屈んでいたのはメイだった。
俺の胸の上で寝ているライムを撫でながら、俺を起こしていたのだ。短いスカートで屈んでいるので、下着が見えそうになっている。
「おはよう……いかん。考え事をしていて、そのまま眠ってしまった」
「夜からずっとここで寝ていたの? 風邪ひくよ」
「いや、早朝に目が覚めて、それで庭に出て来たんだ。眠っていたとしても、たぶん二時間くらいだろう」
俺の胸の上に居たライムは、メイに撫でられながらも、大人しくじっとしていた。自分が離れると、俺の体を温める物が無くなると考えているのかもしれない。
「団長。私、夢を見たの」
「お? おう……」
「私とユナで、『竜棲の広原と森』に行って、竜を倒しに行く夢。──これ、正夢にしよう」
やだ、この子。急に無茶な事を語り出したぞ。
「ま、まあ待て。そうは言うが、『竜棲の~』が付く転移門は、その名の通り、危険な竜が棲む場所だ。『はい、そうですか』と、簡単に送り出す訳にはいかないぞ」
すると少女は「わかってる」と真剣な表情で頷く。
「だから、ユナにも話を聞いて。それから『竜棲の広原と森』に行きたいと思っている人達を募って、皆で行こう」
そう言ったかと思うと、少女はさらに続ける。
「私、最近リーファから『循環気功』を習って、使えるようになったし。そのせいか、気を使った自己強化にも磨きが掛かったんだよ。最近、団長と訓練してなかったからわからないと思うけど。さっそく、手合わせしてみよう」
俺は、乗り気な少女の言葉に「それは結構です」と、お断りの言葉を口にして少し考える。──竜棲の領域に行くのは、リゼミラやリトキス達なら問題は無いだろう。
しかし、メイは──彼女は特に、拳や蹴りで戦う闘士だ。いくら強力な気による攻撃が打てたとしても、固い鱗や皮膚に守られた、あの巨大な爬虫類に立ち向かえるかどうか──
この娘なら、巨大な敵にも臆する事なく向かって行くだろう。その姿がありありと想像できる。
「……分かった。朝食の時に少し話してみよう。ただし、今日は行かないぞ。準備をしてからだ、メイやユナは『竜棲の広原と森』の情報を確認するところからだ。空いた時間にでもリゼミラやリトキスから聞いたり、『冒険指南書』に書かれたものを読んで勉強するのも大事だ」
そう言って立ち上がると、メイにライムを抱えて宿舎に戻るよう言い、俺は庭で神々への祈りを行う事にする。
こうした朝の日課を済ませると、庭に出していた敷物などを片づけて、宿舎に戻る。
すると玄関先でライムと子猫達が待っていた。
青い毛の子猫と戯れているメイも居る。
彼女が循環気功を身に付けたのが影響しているのだろうか? 他の子猫達も、今までよりはメイを避ける様子は無い。
「この子、かわいい……」
メイが、そうして子猫を撫でている所へ、ユナが二階から降りて来た。
朝の挨拶を交わし、俺達は揃って食堂へ向かって行く。
詳しく知りたい方は、C.G.ユングの『元型論』または『続・元型』を参照してください。
プラトンの「イデア」と同じ概念である、とユング自身も認めているくらい似ているものですが。興味深い部分を多く含んでいると思いますよ。




