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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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レーチェの決断

《外伝》と登場人物設定を読む事の出来るものも投稿しているので、そちらもどうぞ~

「まったく、あなたという人は……!」

 まだ憤慨ふんがいしているレーチェ。

 よほど「面倒臭い女」扱いされたのが気に入らなかったらしい。

 人は、核心をかれた時にムキになるものだ。


「──それはともかく。何で俺の過去を調べるなんて事になったんだ?」

 そう尋ねると、彼女は吊り上げていたまゆを下げて、あきれ顔へと変わっていく。


「何をおっしゃるかと思えば……、あなたの今までの言動を思い出してごらんなさいな。まるでわたくしには理解できない言葉を使ったり、通常では考えつかないような発明をしたりだとか……いい加減、あなたの素性すじょうを疑い出しても仕方が無いでしょう」

 この前、つい口に出した「ハンバーグ」などが原因だったか……。しかし、いつかはこちらから、話さなければならない時が来るかもしれない、そんな風にも思っていた。

 こんな風にバレるとは思わなかったが。


「そうですか。でも、この事は秘密にしておいた方が良いでしょう」

 俺が別の世界から来た事を皆に話すべきか、と尋ねると、レーチェは首を横に振ったのだ。

「皆が素直に、あなたの素性を受け入れるかどうかは分かりません。信じられない者も居るでしょう。私だって、神アリエイラの言葉で無ければ、信じなかったかもしれませんわ」

 確かに……しかし。


「しかしそれなら、何故レーチェは俺の過去を調べる気になったんだ。いったい何を疑っていたんだ?」

 そう問うと、彼女は少し躊躇ためらった。

「あなたが別の──、()()()()()()()()とは考えていませんでしたわ。私の想像では、あなたはフォロスハートとは違う、別の大地から──パールラクーンの様な──場所からやって来た、人間だと考えていたのですわ」


「なるほどな」と俺はうなずく。

 そう考える方が自然だろう。フォロスハートとつながっていない、人の住む大地が他にあったとしても不思議では無いのだ。

 その大地から転移門が(一時的に?)開いて、フォロスハートに侵入したり──。

 まあ、転移門がフォロスハートに開いたら、四大神が気づく可能性が高そうだが。




「とにかく、あなたの秘密については、このまま隠しておきましょう。幸い、あなたはフォロスハートに、大地を守る神々に愛着を持っているようですから。あなたがフォロスハートを共に守る仲間であるのは、私も、旅団の団員達も、疑いを挟む者は居ないでしょう」

 そう言うと、彼女は急にしおらしい態度になった。長い金髪の毛先を指でいじりながら、躊躇いがちにしゃべり出す。


「それで……その、水の神アリエイラの事をあなたは──。どのように思っているんですの?」

 少し頬を赤く染めるレーチェ。

 いや、まさか、アリエイラが俺の過去だけで無く、()()()()()まで話したとは思えないが……


「どのようにって……もちろん、敬愛しているに決まっている」

 そう言っても彼女は、何やらモジモジと照れているので、俺は()()()()と否定する言葉を選んだ。


「水の神だけでは無い。火の神も、地の神も、風の神も。俺は全ての神に──俺達を助け、守ろうとする神を、心から愛している」

 俺の信仰告白めいたものを受け、レーチェは「そ、そうですわよね」などとつぶやいてから咳払いする。

「もちろん。私もそうですわ」


 レーチェは真剣な口調で言ったが、頬には赤みが差している。彼女が俺とアリエイラの関係を、どのように疑っているかは分からないが──。たぶん、謁見えっけんの時に俺と女神との距離が近い事を、敏感に感じ取ったのだろう。

 やぶをつついて蛇を出すのは全力で回避したいので、この件は触れないでおくのが一番だと判断した。


 人と神との恋愛が、フォロスハートの住人達にとって身近なものであったとしても(火の神ミーナヴァルズには、そうした噂話が多くささやかれているらしい)、こちらから口にする事も無いだろう。

 彼女レーチェが聞きたがったとしても、すっとぼけようと心に誓った。


「それで、その……あなたの居た世界は、何という場所でしたの?」

 おや、そっちの方を聞きたがっていたのか? まあ、その事もあまりペラペラと話すべきでは無いだろう。

 異文化の──あまりに異質な文化の──情報を教え広めるのは、利点よりも欠点の方が多いのではないだろうか。


「向こうの事について話すのは止めておく。ただ、これだけは言っておこう。俺の居た世界の大地は丸く、地面よりも広大な海が広がっていた。フォロスハート大地も昔は大きな一つの丸い大地だった、と書物に書かれているのは読んだ事はあるか? それが事実だというのは、俺の居た世界では常識だった」

 それは読んだ事があります、とレーチェは頷く。


「そうすると、フォロスハートは今よりも、ずっと大きな大地だったのでしょうね」

「当たり前だ。フォロスハートの大きさなんて、大地のほんの一部だぞ。……いや、俺の居た世界での話だが。フォロスハートとして分離する前の『惑星』の大きさを知らんから、確かな事は言えないが」

 すると彼女は「『わくせい』って、なんですの」と首をかしげる。


「だから、俺の居た世界の話はしないと言ったんだ。この世界は混沌のせいで多くの物を失っている。その事に気づくよりも、まずは一つ一つを取り返す為に、『海の中の島』の大地と接合を果たす。それが何より重要だ」

 こうして俺とレーチェは約束を交わし、しばらくは、俺の過去についての情報をせておこうと決めたのだった。

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