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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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オーディスワイアの告白

「オーディスワイア、あなたは──。あなたは、()()()()()()()()()()()?」




 その言葉からは俺の素性すじょうについて、はっきりとした認識があるのだとうかがわせた。彼女レーチェがウンディードまで出向き、女神アリエイラとの謁見えっけんで何を聞いたかは明白だ。

 まあここで、人間個人が「何者であるか」などという、哲学的問題提起について語って聞かせ、煙に巻くつもりは無い。


「女神アリエイラから聞いたのなら、それ以上に付け加える事は無いな。フォロスハート……いや、この混沌に包まれた世界とはことなる世界からやって来た。その事に間違いは無い」

 俺がそう認めると、レーチェは固い表情のままうなずいて見せる。


「そうでしたか……。しかし、元居た世界に戻りたいとは……考えませんでしたか?」

 その言葉を受け、改めて過去と、現在に渡る記憶を探ってみたが、やはり答えは決まっていた。


「いや、全然」

「生まれ故郷なのに?」

 と、彼女はさらに尋ねてくる。


「生まれ故郷なのにと問われると、少し考えるな。俺は向こうの──俺が居た世界の自然は好きだったから。だが、その気持ちは、今はこちらの世界──フォロスハートの自然に向いているから平気だ。今ではこの大地が、第二の故郷だと思っている」

 俺の回答を聞いたレーチェは少し、ほっとした様子を見せる。


 どうやら彼女は、俺が異世界から来た人間だから信用できない、と疑っていた訳では無く。

 故郷をなつかしく思って、いずれは帰ってしまうのではと、不安を感じていたらしい。


「ま、そういう訳だ。……それに、神アリエイラから聞かなかったのか? 俺は、元の世界に戻そうと言ってきた女神の提案を蹴って、今ここに居るんだぞ」

「それは、聞いていましたが……。本人の口から、はっきりとした言葉で聞かないと、安心できないじゃありませんの」

 などと言う。


 異なる世界の女も、元居た世界の女と()()()()()()()な。

 さすがにそう口にするのは止めたが、それについては思い当たる事がある。


「どうしました? 急に真剣な表情になって」

「うむ。お前が『はっきりと言葉で言ってくれないと』などと、面倒臭い女丸出しな事を言うもんだから──」

 しまった、うっかりと口に出してしまった。

 不安そうな表情をしていた彼女のまゆが、キリキリと吊り上がっていく。


「ま、まあ待て。──あれだ、ほら。俺の居た世界と、こちらの世界に大した違いは無いって事さ。こちらの世界の女も、向こうの世界の女も、どっちも面倒臭いっていう共通点が……」

「面倒臭くて悪かったですわね」

 あわわわわっ、つい口に出してしまった。

 他の事を言おうと思っていたのに!


「違う、今のは──あれだ。そう! 口が滑ったという奴だ。……つまり、俺が言いたかったのは、向こうの世界の象徴シンボルが、こちらの世界でも通用する──という事について言いたかったんだ」

 すでに怒り出しているレーチェだが、彼女は学術的な事に興味を持つ側面もある。


 予想通り、象徴がどちらの世界にも共通する部分があると聞いて、それはどういった象徴が共通して居るのか、二つの世界に共通する部分があるのは何故だと思うか、などと尋ねてきた。

「うん、それはだな──」

 俺は自分の考えをべた。


 それは、人の「意識」といったものの構造が同じだからではないかと。()()()()()()()()()()()()なので、異なる世界であっても、その意識と無意識に展開する「()()()()()()()()()()()」が似通にかようのだと説明する。


「それに、この二つの世界が、まったくの別物であるとは言い切れない。何故なら、結局のところ俺がここに居るからだ。神アリエイラの力が作用したとしても、そもそもつながりの無い世界だったら、俺がこちらに召喚しょうかんされる事は無かったはずだ」

 そうした言葉に彼女は「なるほど」と相槌を打ったり、「確かに」と頷きながら話を聞いている。


 チョロいな……そんな風に思っていたが、彼女はこう言ってめた。


「人の基本的な精神構造が似通っているから、面倒臭い部分も同じ、という事ですわね」

 俺は乾いた笑みを浮かべつつ、迂闊うかつな発言を謝罪するに至った。

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