錬成、錬成、また錬成。
暖かい評価や感想に感謝します。
茶色い猫は小一時間。俺の膝の上で眠り続けた。
俺もその間、随分と考え込んでしまった。公園の長椅子でボ──ッとしている中年なんて、組織再構成で首を切られたオッサンそのものだ。
茶色い猫は起き上がると大きな欠伸をして、膝の上から降りると「ゥニャァ──」と鳴き声を上げ、脚に頭を擦り付けてくる。
俺は猫の頭を撫でたり、痒いところを掻いてやった。
この猫は決まった時間になると、ここで昼寝をしたり──また、どこかへ移動したりと決めているのだろうか。
野良猫は公園の奥にある壁に飛び乗ると、石壁の上を歩いて行ってしまった。
遅くなったが俺も鍛冶屋に戻り、まずは新たに入った仕事をこなし、昼過ぎまで働いた。
錬成強化の依頼を片づけた俺は、まずはレンネルの回復魔法の効果を上げる為の、装身具を作り始める。
「回復魔法効果増幅」を水晶に付与するだけで無く。それを繋げる銀の留め金と、腕に巻き付ける革帯の二つに、「魔力量増加」「魔力回復速度上昇」「魔力強化」の効果を付与した物を作り出す。
例えレンネルの魔力内包量が少なくても、これで多少は回復魔法や、他の魔法も使い易くなるだろう。
ケベルとサリエは、新人達の武具を作製する為に二人掛かりで、熱を放つ炉の前で熱さに堪えながら、金鎚を手に、真っ赤に焼けた軽硬合金を叩き続けている。
火花を散らしながら、サリエも懸命に金鎚を振り下ろす。ケベルは金属をひっくり返したりしながら、炉の前で黙々と金鎚を振り下ろし続ける。
彼らの成長を願いながら、その光景を見ていたが──。俺にも、まだやらなければならない事が沢山あるのだ。
さて、予定していた「空気を生み出す錬成品」を作ろう。
いくつか予定していた中から、最も洒落た形になるだろう。という物を作る事にした。
大きさは掌に乗せても、はみ出さないくらい小さな物だ。
木製の吸入口を口にくわえて扱え、木製の部品の左右に「専用の容器」を取り付けて使う事で、長時間の潜水が可能。
問題は「専用容器」の接続部の大きさを、一定の形に揃える必要があるので、これは金型を作って対応する。
さらに木製の吸入口に、専用容器と接続する為の捻子加工を作るので。金型に流した溶けた硝子(「硬化」と「劣化防止」を付与してある物)の吸入口に、捻子を作る金型を(軟らかい内に)押し込んで形成する。
これを簡単に作り出す仕掛けを考えるのに、一時間近い試行錯誤を繰り返して、結局、二つに分割した硝子の容器を接合する事で完成した。
しかし、半分に分割した硝子容器をくっつけるのに、また熱を加えては意味が無い(雌捻子の形が歪んでしまう)。
だから冷え固まった硝子容器を、金型を重ねる時にくっつく様に、予め金型にそうした術式を組み込んでおいた。
こうする事で二つに分かれていた硝子容器は、ぴったりと、繋ぎ目が完全に消えて、完成した状態で作り出せるようになったのだ。
さて、こうして作った小さな容器の中に、空気を生み出す為に必要な、二種類の液体を作り出すのであるが──
これは、古くからある錬成叢書の中にある技術だ。
この技術を開発した錬金術師は、用心深い人物だったのであろう。水の浄化や、空気の浄化などの分野に幅広い貢献をした人物で、彼の理念には「四大神に頼る事なく生活する」方法についての展望が強く感じられる。
四大神の力が永続されるとは限らない。もしくは転移門先にまで、神の助力が得られるとは限らないので、人々の力のみで生活の基盤となる物を作り出そう、と考えたのだろう。
彼の名は、華々しい錬成品を作った錬金術師達の中で埋もれてしまっているが。俺は、この錬金術師には親近感に近い尊敬の念を感じていた。
未来がいつまでも現状と同じまま、何も起こらずに続くなどと甘えた考えを抱かず、自力で何とか出来る物は自分で何とかしろと、そう告げているようだ。
俺は彼の製法を踏襲しつつ、さらに効果を長時間の間、持続する様に液体を圧縮した。
彼の生存していた時代には無い、同じ効果を発揮しながらも、質量体としての体積を格段に減らす方法が開発されたのだ。
こうして俺は、二人の錬金術師の成した研究成果を使用して、新たな「空気発生液」を作り出したのである。




