管理局へ行き、大地の接合について動き出す
翌朝に目が覚めると、精神世界での事をはっきりと記憶していた。
手には女神の小さな手の感触は残っていない(この肉体で経験した事では無いのだ)。
いつも通りに小鉢植物園に水をやり、外に出て神々への祈りを済ませて宿舎に入ると、猫達の巣箱の前に屈み込むメイの姿があった。
まだ猫に好かれたいと望んでいるのだ。
いじらしいというか、諦めが悪いというか……青い毛の混じる子猫なら、もしかすると彼女にも懐いてくれるかもしれないが……、今は母猫のお腹に寄り添って眠っているところだった。
彼女はユナに背中を叩かれて、食堂の方へ向かい、その前に俺に挨拶をして行く。
食堂に皆が集まって食事を取り始めると、誰かがこんな事を言い出した。
「それにしても団長は、ミスランに新しい転移門が開いて、しかも『海のある場所』とも言い当てましたが、いったいどういう奇術ですか」
その言葉に、他の所からも「そうだそうだ」と賛同する声が上がる。
「ああ──、それな。……夢の中でお告げがあったんだよ。──それで昨日。アディーが海の底にある建物を見つけたらしいんだが、そこには『海の中の島』の大地を維持している神様が、眠っているかもしれないらしい」
これもお告げな。と言うと、周囲でざわざわと話し合いが行われる。
「……それは、管理局に言わなくていいんですの?」
レーチェがそう尋ねたので、俺が管理局に行って話しをして来ると説明した。
「もしかすると、あの大地を、フォロスハートの大地と連結する事になるかもしれない」
そう俺が呟いてサンドイッチを口にすると、先程よりも大きなざわめきが食堂を包んだ。
新しい大地。それをフォロスハートに繋げられれば、食料事情も改善され、ゆくゆくは、新たな土地に住んだりする事も出来るようになるかもしれない。
そんな風に仲間達の間で話が広まり、新しい取り組みが始まる期待に、それぞれが違った希望を抱き始めたようだ。
俺は食事を終えて、旅団拠点での朝礼を始めた時にも、海底にある建物に、あの大地の神が眠っているかもしれない事を話し、管理局や神々とも協力して、海底の調査をする事になるだろうと説明しておく。
「あの建物にそんな秘密が……って、どこ情報ですか、それは?」
アディーが不思議そうに声を上げる。
「それは秘密だ」
この話が今後、どうなるか見守る事にしようと言って。
次にエウラとカムイに渡した「対混沌攻撃力」を付与した剣について尋ねると、カムイは「混沌の魔物に対して効果的な武器」で、混沌の魔物の張る障壁を切り裂いて、魔法抵抗力を格段に下げた事も報告する。
「私は……初めて知りましたが、どうやら『魔剣』には、混沌の魔物に対する──『対混沌攻撃力』が備わっていたみたいです」とエウラは語る。
どうも魔剣には、初めから混沌に対する攻撃強化能力が付いていたらしく、俺の貸し与えた「対混沌攻撃力」を付与した剣を使っても、魔剣を使っても、違いは感じられなかったらしい。
「なんだ、そうだったのか……。『魔剣』は解析できないからな。まあ、そういう事なら仕方がない」
二人から武器を受け取ると、リゼミラが使ってみたいと言うので、遅れてやって来たダリアやラピス達と共に、上級難度の「混沌の魔物」が出現する場所へ向かわせる事となった。
ダリアらも「対混沌攻撃力」の武器について興味を持った様子だが、まだ研究中だと言っておく。
仲間達が冒険に行くのを見届け、その後で俺は鍛冶場に行くと。徒弟達に仕事の依頼を受けながら、新人達の武器と防具を作製するよう言い置いて、管理局の方に向かう。
管理局の技術開発局に向かい、メリッサを呼ぶと、彼女に管理局の支援を求め、神々と共に「海の中の島」にある、海底神殿を調査する方法などについて話し合う。
「……よく分かりませんが、その海底神殿に神が居ると、魔法使いの方の探知魔法に出たのですね?」
精神世界でアリエイラから聞いた、というのは伏せておいた。神々と個人的な付き合いがあるなど、公言しない方がいいだろう。
「そうだ。おそらく神々も反対しないだろう。神結晶か何かに神の力を封入して運び出す錬成品と、水中で呼吸が可能になる錬成品の作製は俺がやる。メリッサは資金や素材の手配を。後は、神々にも協力の依頼をして、『大地の接合』計画の推進を始めてくれ」
メリッサは少し、腑に落ちない感じの表情を見せていたが、新たな大地に眠る神の協力を得られれば、フォロスハートにとって利益になると考えたのだろう。
「分かりました、すぐに手配します」
と言って、自分の果たすべき仕事に戻って行った。




