神の眠る神殿
今回のお話のキモとなる部分です。
どうなるかは……後半で!
夜、眠る前に、アディーから頼まれた「水中でも呼吸の出来る錬成品」について考えていた。
酸素ボンベみたいな大きな物は必要ない。口にくわえて使える大きさの物がいいだろう。
それほど難しい錬成にはならない。
時間が空いたら細部を詰めて考えてみよう……
*****
そうして眠りの中に引き込まれていった……のだが、意識が一瞬(時間の感覚など、睡眠時には当てにはならないが)途切れたと感じた時には、フワリと身体が浮いた感覚の後に、暖かい日差しが降り注ぐ、地面に寝そべったのを感じた。
「オーディスワイア」
側に立つ女性が、優しい声で俺を呼ぶ。
「女神……アリエイラ──ですか?」
目を開けようとすると、身体が重く感じる。
しかし精神世界に、だいぶ慣れてきたのだろう。多少まぶたが重く感じたが、すぐに目を開ける事が出来た。
湖の近くにある草地に寝そべる俺の隣に、アリエイラが腰掛けた。
「ごめんなさい。お話ししたい事があり、あなたを呼んでしまいました」
俺は上半身を起こすと、水色の衣服と、丈の長い、白いスカートを身に着けている女神を見る。
「構いませんよ。本当は直接お会いしたいのですが、色々とやらねばならない事があるので──申し訳ありません」
俺がそう言うと、彼女は首を横に振り。すぐ側に腰を落ち着けて、湖を見つめながら足を伸ばす。
地面に置かれた小さな手を、そっと握る。
現実の手の感触とは違う感じがするが、彼女の近くに居るという想いは強まった。
俺の指に、女神の細い指が絡みつく。
少しの間、そんな風に──恋人気分を味わっていると。はっ、と思い出したみたいに手を離す。
「いけない、忘れるところでした。実は、中央都市に開いたばかりの『海の中の島』の事が気になって、多くの冒険者達が入って行くのを見ていたのですが──」
その中の一人が、俺の旧知の冒険者で友人の、アディーディンクであると気づいたらしい。
「彼は、何かを探している様子で、ずっと探知魔法を使って、海の彼方を探っているみたいでしたが、急にある場所で、海の中の方を調べ始めたのです」
例の、海中に見つけたという建物の事だろう。アディーが見つけたものを、アリエイラも、その時、初めて知ったという。
「海中の中にある建物──おそらく神殿の様な物から、神格を、確かに感じたのです」
アリエイラが言うには、あの大地を存続させた神が、その神殿で眠りに就いているのではないか、という話だ。
それが真実なら、その神と対面し、フォロスハートと接合する為に、力を借りる事も出来るかもしれない。
「相手が、どういった神かも分かりませんが……」
確かに、こちらの意図に従ってくれるとは限らない。
だが、海があり。危険な生き物も居ない大地なら、何としてでも、フォロスハートとの接合を果たしたいものだ。管理局も、そう考えるに違いない。
「水中でも呼吸できる錬成品を作れと、アディーに言われたところです。そこに神が居るのなら──どうやら、強力な布陣で向かわせた方が良さそうですね」
万が一という事も考えて、海中の調査に行く時は、色々と対策を考えた方が良さそうだ。
海の中では戦えない。
仮に戦闘になるとして、魔法を使えなければならないか……あるいは、水中に結界を張って、空気のある場所を生み出して戦うとかか?
防御結界の大きな物を展開し、相手を取り込んで、その中で戦うとか。……しかし、その相手が「神」だとしたら、勝ち目など無いのではないか?
仲間達に、無謀な戦いをさせる訳にはいかない。
そう話すと、女神は答えた。
「そうですね。私達も、他の大地の神や精霊との戦いを望みません。──オーディスワイア。私達、四大神の意志を伝える為に、私の力の一部を、その海底にある場所まで連れて行ってはくれませんか?」
アリエイラが言うには、神結晶に力を封入して、神の投影体を発現させ──。神の存在を知らせれば、相手も迂闊に攻撃したりはしないだろう、と考えているらしい。
「確かに……それは良いかもしれませんね」
同じ、神格を持つ者が居ると知ればこちらの言葉にも耳を傾けてくれるかもしれない。
「神結晶に力を……それなら、その結晶の力を増大させ、安定させる装置──置物の様な物を用意しましょう。神貴鉄鋼で作れば、力を留めておく。結界などの力場を安定させる物が作れるはずです」
大地を覆う、混沌を退ける結界を張る力も、五つの都市にある。それぞれの神の力を強化し、外側にも内側にも、神の力を安定して使えるよう工夫された結界が、展開されているのだ。
その技術を応用すれば、神結晶に封入した神の力を安定させたり、強化させる事も可能なはず。
「明日──じゃない。今日にでも管理局に行って、今、話した事を説明して、協力を取り付けてみます」
そう言うと女神は、他の三神にも話を通して、力を封入した神結晶を、中央都市に届けるよう伝えておきます。と応えてくれた。
「さながら四大神の御姿を伝える、通信装置の様な物になりそうですね。姿だけでなく、万が一に備えて、仲間達を守れる投影体を現出させる物になりますが」
アリエイラは頷き、何とか相手の神を説得し、こちらの大地と接合する利点を伝えようと思います、と語った。
「それではこれから、ラホルスやウル=オギト達にも相談してみます」
敢えてミーナヴァルズの名を口にしなかったアリエイラ。その事に気づいたが、こちらも、それを敢えて無視する。
「よろしくお願いします」
俺が彼女に別れを告げると、意識がゆっくりと遠のいて行くのを感じていた……




