レンネルの回復魔法を強化しよう
宿舎に戻る途中の道で、アディーディンクと新人達に出会った。新人達は俺とアディーに別れの挨拶をして、拠点の二階へ帰って行く。
「どうだった? 島は見つけられたのか」
俺が問うと、アディーはあっさりと頷いてみせる。
「ええ。それと、もう一つ。面白い物を見つけました。管理局には『島』を探せと言われていたので、教えていませんが。海中に建物らしい物が沈んでいる場所を見つけました」
「なにそれ、面白そう」
興味を引かれた俺にアディーは笑い掛け、水の中でも呼吸できる錬成具はありませんか、と尋ねてきた。
「水圧は『防御魔法』で対応可能ですが、……かなり深い場所にあるので、息が……」
空気を生み出す錬成具を作る方法を(頭の中で)探ってみる。空気は水の精霊結晶と風の精霊結晶の組み合わせで作り出せる。問題は的確に、口や鼻から適量を取り込めるか、という事にある。
「……そうか、少し考える必要がありそうだな」
宿舎の門を開けながら俺は答えた。
アディーは「よろしくお願いします」と頭を軽く下げる。
他にも新人達の様子などを聞いたが、何しろまったく戦闘をせずに済む場所なので、特に話せる様な事は起こらなかったらしい。平和すぎるのも考え物である……
宿舎に戻った俺とアディーを出迎えたのは三匹の子猫達。──と言っても、彼らは玄関前の廊下でじゃれ合っているだけだったが。
母猫は子供の相手に疲れたのか、巣箱の中で休憩している。
食堂へ移動すると、宿舎に残っていたヴィナーが調理場で、料理を作っているところだった。
「なんですか、いま忙しいです」
突っけんどんに彼女はそう言って、魚のすり潰した物に水玉葱を加えて、さらに潰していく。
「魚のハンバーグか」
俺の言葉に首を傾げるヴィナー。「はんばーぐ?」と言いながら、刻んだ生姜などを混ぜ込んで、こね始める。
「また、謎の言葉を……」
背後から急にそう言われ、ぎくりとして振り返る。──そこにはレーチェが立っていた。
「ただいま帰りましたわ。それで、はんばー……なんですって?」
「うむ。古い時代の料理本に、そんな物が書かれていたような……という、あれだ。うん」
なんとか誤魔化したが、迂闊に口に出すべきでは無かったか。レーチェは何か、企んでいる様な表情をしている。
「それより、明日はダリア達、三人の冒険者と上級難度への冒険に行く事になるだろう。誰が行くか、今日中に決めておいた方が良さそうだ」
何故、彼女らと……と、レーチェはこちらを睨むみたいに見てくるので、ダリアに魔法の剣を造ってやった事を説明し、明日はレンネルと新人達の中の魔法使いを、管理局の「魔法師養成所」に向かわせて、講師の授業を受けさせる事を提案する。
「レンネルを? 何故いまさら……」
「いまさらじゃない。回復魔法を習得したレンネルを無駄遣いしない為だ。魔法の素質があるレンネルには、剣技だけでなく、魔法も扱えるようになって欲しいからな」
そう言うと彼女は「確かにそうですわね」と納得して、食堂へと戻って行った。
何をしに調理場まで来たんだ……
料理を作るのを手伝って、何品かの料理を盛り付けて食堂へ運ぶ。
「貝の牛酪焼き」が香ばしい匂いを放って、皆の興味を引き付ける。
海の幸を手に入れた事で、食生活にも大きな変化が現れ、街の中の商店でも、ウンディードから運ばれて来る淡水魚などが、細々と売られていた状況から一変し、海の魚や貝、蟹や海老なども売られるようになったのだ。
料理を食べながら、レンネルに先程レーチェに言った件を告げて、明日は休みを取り、魔法師養成所に行くように説得する。
「魔法の訓練ですか……、そうですね。いいですよ、もちろん。ただ、僕もウリスが貰ったような、回復魔法の効果を上げる装飾品が欲しいですね」
とちゃっかりとおねだりをしてきた。
「わかった。『回復魔法効果増幅』を付与した水晶玉を付けた、手首に巻き付ける革紐の装身具を作ろう。剣や盾を持つのに邪魔にならないようにな」
それ、いいですね。とレンネルも納得してくれた。
レンは強力な「白銀騎士の盾」も持っていて、防御力も高い。回復魔法との相性は良いはずだ。
混沌灰を使って、魔法に対する抵抗値を盾に付与する事が出来たら(魔法無効化を付けると、
他の錬成効果を打ち消すかもしれないので、実験してみるつもりだ)、かなり強力な魔法戦士──いや、聖騎士になれるのでは?
「いっそ、全身を白銀騎士の強力な効果付きの防具で固めて、白銀騎士に転職するのはどうだろう……」
俺の提案にレンは「重くて動き辛いですよ」と苦笑いで答えたのであった……
食後に明日の予定を話し、ダリア達と共に上級への冒険に出る構成が決められた。
上級に挑んでからと言うものの、どんどん団員達は成長していった。カムイやヴィナーの活躍を見て、ウリスも最近、二人に刺激を受けて、能動的に冒険へ向かっている。
良い傾向だ。
俺はそんなヴィナー達に「精霊感応霊呪印」を各属性の分だけ作っておいたので、有効に使うようにと言って、彼女らのやる気を、さらに高める事に成功した。




